夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


書評文化

2014年08月12日 [ 書店の力 ]@sanmotegiをフォローする

 前回「虚の透明性とモダニズム文学」の項で紹介した作家丸谷才一(本名根村才一)は、自身多くの書評を執筆するとともに、毎日新聞社の書評欄「今週の本棚」の充実を図ったことで知られる。書評は本の紹介として役立つばかりではなく、社会の文化水準を示すというのが氏の考え方だった。今回は、その考え方のエッセンスを「書評文化」と題して紹介してみたい。

 『ロンドンで本を読む』丸谷才一篇著(マガジンハウス)にある、氏の「イギリス書評の藝と風格について」という文章(前書き)から引用しよう。冒頭の「そんな事情」とは、イギリスの雑誌ジャーナリズム事情のこと。

(引用開始)

 そんな事情で読まれる記事だから、書評はまず本の紹介であった。どういふことがどんな具合に書いてあるかを上手に伝達し、それを読めば問題の新著を読まなくてもいちおう何とか社会に伍してゆけるのでなくちやならない。(中略)
 紹介に次に大事なのは、評価といふ機能である。つまり、この本は読むに値するかどうか。それについての諸評価の判断を、読者のほうでは、掲載紙の格式や傾向、諸評価の信用度などを参照しながら、受入れたり受入れなかったりするわけだ。(中略)
 そして書評家を花やかな存在にするのは、まず文章の魅力のゆゑである。イーヴリン・ウォーの新聞雑誌への寄稿は、流暢で優雅で個性のある文章のせいで圧倒的な人気を博したと言はれるが、この三つの美質(流暢、優雅、個性)は、たとへウォーほどではなくても、一応の書評家ならばかならず備えているものだらう。(中略)
 しかし紹介とか評価とかよりももつと次元の高い機能もある。それは対象である新刊本をきつかけにして見識と趣味を披露し、知性を刺激し、あはよくば生きる力を更新することである。つまり批評性。読者は、究極的にはその批評の有無によってこの書評者が信用できるかどうかを判断するのだ。この場合一冊の新刊書をひもといて文明の動向を占ひ、一人の著者の資質と力量を判定しながら世界を眺望するといふ、話の構への大きさが要求されるのは当然だらう。

<同書 6−9ページ>

ここで丸谷は、本の紹介、本の評価、文章力、批評性の四つを書評の基準として挙げているわけだが、特に最後の「批評性」は、前回の項で挙げた氏の作品の特徴、

1.古典に新たな光を当てようとする(源氏物語や忠臣蔵など)
2.言葉への拘り(旧仮名や多彩なレトリックの使用)
3.社会のあり方への提言(社交や挨拶の重視、書評やエッセイの執筆)

の中の3.と直結する指摘・要請だ。

 評論家の湯川豊氏は、丸谷才一のこの前書きについて、『書物の達人 丸谷才一』菅野昭正・編(集英社新書)の中で次のように書いている。

(引用開始)

「イギリス書評の藝と風格について」は、日本の書評家たちのかっこうな指南書であるとともに、丸谷さんが、イギリスの書評のどこに心ひかれていたのかを、おのずから明らかにしてもいます。
 ジョン・レイモンドというジャーナリスト批評家の書評を格別に愛好し、それを読むことで、「社会に背を向けずに本を読むイギリス人の生き方を知つた」と書いています。丸谷さんの持論、たびたび引用した「書評といふジャーナリズムこそ社会と文学とを具体的に結びつけるもの」という思想が、レイモンドの評価のすぐ後ろにつづいているのは、いうまでもありません。
 丸谷さんはまた、シリル・コナリーという批評家が書いた書評にふれて、次のようにいいます。
「これならば、クロスワード・パズルに飽きて何の気なしに書評欄を覗いた旅行者に、列車それとも飛行機から降りたらすぐ本屋へゆかうと決意させることができる。書評といふのは、このやうな、藝と内容、見識と趣味による誘惑者の作品でなければならない」(「書評と『週刊朝日』」)
 丸谷さんの書評論はすべて、読者の存在が強く意識されているのですが、ここでも私たちはその一例に出会うのです。おそらくそれは、文学が社会から遠く離れて存在しているのではない、社会のなかでふつうの人びとに読まれてはじめて存在しうるのだ、という丸谷才一の文学観に深いところで結びついていることなのです。
 また別のところでの、次のような発言もあります(「本好きの共同体のために」)。
 書評はもともと孤独な作品ではない。著者、訳者、編者、編集者、批評家、読者などが形づくる読書共同体があってはじめて成立する読物なのである。上質な共同体がしっかりと存在しているとき、書評というものが同時に文明批評となることができる。

(引用終了)
<同書 92−94ページ>

丸谷は「社会のあり方への提言としての書評文化」といったものを理想と考えていたわけだ。書評というものを、これほどはっきり社会と関連付けて定義した人は(日本では)今までいなかったのではないか。

 このブログでもこれまで多くの本を紹介してきた。これからも四つの基準を念頭に筆を磨いてゆこうと思う。丸谷才一の書評の纏まったものとしては、

『快楽としての読書[海外篇]』(ちくま文庫)
『快楽としての読書[日本篇]』(ちくま文庫)
『快楽としてのミステリー』(ちくま文庫)

の3冊がさしあたり手近だ。丸谷の書評を読みながら、日本社会や文明の行く末などについていろいろと考えを巡らせたい([海外篇]の最後、「書評のカノン」と題した解説文のなかで、仏文学者鹿島茂氏も「イギリス書評の藝と風格について」を引用している)。

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本の系譜

2011年11月22日 [ 書店の力 ]@sanmotegiをフォローする

 “「本屋」は死なない”石橋毅史著(新潮社)を面白く読んだ。本の帯から紹介文を引用しよう。

(引用開始)

だれが「本」を生かすのか

出版流通システムの現状や、取り巻く環境の厳しさに抗するように、「意思のある本屋」でありつづけようとする書店員・書店主たち。その姿を追いながら、“本を手渡す職業”の存在意義とは何かを根源的に問い直す。「本」と「本屋」の今と未来を探る異色のルポ。

(引用終了)

ということで、「本屋」というスモールビジネスや、書籍ビジネス全般に興味を持つ人にとって、この本は必読書といえるだろう。とくに書き手側の心の揺れが正直に描かれていて、それが本の内容に奥行きを与えている。業界に対するバランスの取れた見方にも好感が持てる。

 この本には、以前「山の本屋」の項で紹介した、“イハラ・ハートショップ”の店主・井原万見子さんも登場する。私がブログ記事を書いたのは2009年のことだから、これによって井原さんのその後の活動についても知ることができた。

 この本の中に、いまの新刊書店の問題点と関連して、「本の系譜」という言葉がある。その部分を引用したい。

(引用開始)

 人文書など特定の分野に限らず、いま多くの新刊書店は、今回のこの新しい本はこのような歴史的経緯のなかで出てきたのだという流れを見せてくれず、膨大な本が生まれては消えていくのに対応するだけになってしまっている。推したい本を一本釣りで重点的に仕掛ける書店員はたしかに現状に一矢報いてはいるが、この方法も系譜を見せることからはますます遠ざかる。全ての本は過去にでた本に示唆されて書かれたのだという「本」の基本条件が、売場から立ち上がってこない。僕の中で古書店への関心が高まっているのは、たぶんそこにも理由がある。

(引用終了)
<同書 238ページ>

 石橋氏は、“全ての本は過去にでた本に示唆されて書かれたのだという「本」の基本条件”のことを、「本の系譜」という言葉で表現しておられる。全ての本は、過去に書かれた本に示唆されて書かれる。このことはとても重要なことだと思う。この言葉は、書籍というものの本質を言い表している。全ての本は、人々が社会のなかで互いに繋がっているように、他の本と繋がっている。

 そう考えると、本は著作権などによって守られるのではなく、多くの人に読まれることによって守られることがわかる。本の価値は、それが何冊売れたかということにではなく、その社会にその本を書く人が居た、ということ自体にある。勿論、つまらない本を書く人もいるわけだが、それも含めて、全ての本はその社会を映す鏡である。だから、本を大切にする社会は、人を大切にする社会なのである。

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書籍ビジネス

2009年12月21日 [ 書店の力 ]@sanmotegiをフォローする

 以前「山の本屋」の項で、

(引用開始)

 書店というものは、社会に欠かすことの出来ない存在だ。ここでいう「書店」とは、「イハラ・ハートショップ」のような小さな本屋さんばかりではなく、都会の大きな書店、さらには出版業を含むところの、“書物という、人の思考道具である「言葉」を扱う生産活動”全般を指している。人は言葉で思考するから、そういう意味で、書店は社会の力の源泉である。書店は、「アートビジネス」とも隣接しながら、人の生産と消費活動を精神的に支える。書店はまた、社会における多様性と意外性を保証する「言論の自由」の守り手でもある。

(引用終了)

と書いたけれど、ここで一度、書籍ビジネスについて私の考えを整理しておきたい。

1. 「場」の創造

 書店・出版社は、書籍ビジネスを通して、社会の内に「知の交流場所」を創造することが出来る。和歌山の「イハラ・ハートショップ」もそうだし、最近できた丸の内の「松丸本舗」(写真下)もそういう試みだ。先日私は「松丸本舗」で、「松岡正剛の千冊千夜遊蕩編(1327夜)」で取り上げられた“オキシトシン”シャスティン・モベリ著(晶文社)を入手することが出来た。

松丸本舗

2. 効率と効用

 言葉を扱う書籍には、大きく分けて、効率よく知識を身につけるための実用書や研究書と、アート作品としての詩や小説がある。前者(効率書)は人の「生産活動」を支え、後者(効用書)は、人の「消費活動」を支える。書籍ビジネスは、人の「生産と消費活動」両方をサポート出来るのである。

3. 作家の育成

 以前「アートビジネス」の項で、

(引用開始)

 値段の付いた作品はギャラリストやコレクター、出版社などによって市場で売り買いされ、売値と買値の差が利益となる。利益は、宝石の場合などと同様、時間とお金を掛けてそれを発見し保管してきた人々への報酬である。

(引用終了)

と書いたけれど、アート作品同様、「書籍」も市場で売り買いされ、売値と買値との差が書店・出版社の利益となるのが正しい姿であろう。利益は、時間とお金を掛けて書籍を編集・出版・販売してきた人々への報酬である。書籍の市場価値は、作家本人とは何の関係も無い。

 ただし、アーティストが無から生まれ得ないように、作家も何も無いところからは生まれない。昔は、金持ちが作品を買い上げることでアーティストを育てた。今の書店・出版社は、作家が書いたものを加工(編集・出版)販売して社会(読者)から報酬を得ているのだから、社会的な責任として、報酬の一部を割いて作家(とその卵)を育成していかなければならない。様々な作家・ジャーナリストに発表の場を与えることは、「言論の自由」を実践することでもある。

4. ネットの活用

 21世紀はインターネットの時代である。書店・出版社は、電子書籍や電子書籍端末(写真下は私がコンサルを務める会社の電子ペーパーを使った9インチのサンプル)を活用し、「新しい知の交流場所」を創造しなければならない。電子書籍は、紙の本よりも早く、安価に、いつでも(ネット上で)流通させることができる。しかし今後求められるのは、紙の本を単にデジタル化するのではなく、電子書籍ならではの新しい付加価値を作り出していくことだろう。電子書籍端末は、一台に数多くの書籍を格納することができ、文字の拡大や読み上げ機能などにより、視覚障害の人たちにも読書の機会を提供することが出来る。

電子書籍端末

5. 他の「生産と消費活動」を啓蒙する

 以前紹介した「里山ビジネス」の著者玉村豊男氏は、「ヴィラデスト・ガーデンファーム・アンド・ワイナリー」のオーナーでもある。“奇跡のリンゴ”石川拓治著(幻冬舎)は、無農薬りんご農家・木村秋則氏の苦闘の軌跡を描いたものだ。友人の成松一郎氏が書いた“五感の力でバリアをこえる”(大日本図書)は、障害を乗り越える人々の活動を紹介した本だ。書籍はこのように、関連のある他の「生産と消費活動」を啓蒙・サポートすることが出来る。

6. 多品種少量生産

 このブログでは、安定成長時代を支える産業システムの一つに「多品種少量生産」を挙げているが、多様な作家・ジャーナリストに発表の場を与え、リアルとバーチャルにおいて知の交流場所を創造する「書店」は、この「多品種少量生産」システムの中核を担う、重要なビジネスである。

 以上、書籍ビジネスについて整理してきたが、いずれにしても、このビジネスを担うのは、アートビジネスでギャラリストやコレクターに相当するところの、「目利き編集者」であることは間違いない。

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posted by 茂木賛 at 10:32 | Permalink | Comment(0) | 書店の力

山の本屋

2009年07月07日 [ 書店の力 ]@sanmotegiをフォローする

 以前「社会の力」のなかで、

(引用開始)

 特に「社会」の及ぼす力は重要だ。「心と脳と社会の関係」でみたように、社会とは自分と他人とを心的相互作用で結ぶ集合である。それは言葉だけでなく、振る舞いや姿勢、顔の表情などの身体運動、拍手や発声、身体を育む食、身体を守る衣服や家、自然の風景、場としての学校や職場、街並みなど、「身体」に係る全てのものが含まれる。勿論身体を規制するところの慣習、制度としての政治や法律なども含まれる。これら社会の有り様全てが、日々われわれ日本人の脳神経回路の組織化に寄与しているのである。

(引用終了)

と書いたけれど、最近、最良な形でこの「社会の力」を発揮している山の小さな本屋さんのことを読んだ。「すごい本屋!」井原万見子著(朝日新聞出版社)である。朝日新聞の書評欄から全文引用してみよう。

(引用開始)

「小さな村のコミュニティーセンター」

 この本を読むと、とても元気が出る。一言でいって、和歌山県の山の中で、小さな本屋さんが生き生きと頑張っている話なのである。村全体でも人口が2200人、近隣の集落はわずか100人ほどにすぎない。そんな小さな村で書店の経営が成り立つのかと不思議に思える。閉めかかった店を継いだ著者も、最初はとても不安に思っていた。
 そこから素人店長の奮戦が始まる。それを支えたのは、何よりも、店を必要とする地域の人びとのニーズである。ニーズは本だけに限らない。周囲の小売店がどこも廃業してしまうと、この本屋さんではみそや日常雑貨までも扱う。近所のおばあさんの生命線であり、コミュニティーセンターでもある。
 書店が成り立つ基盤は、本が好きな地元の人たちであり、子どもも大事な読書人である。そこで著者がイベントを次々と企画するのがすごい。学校での選書会、児童書の読み聞かせの会、絵本の下絵・原画の展覧会、絵本の編集者の講演会、ついには作者のサイン会まで。
 そんな企画は都会にしかないと思うのは大間違いで、編集者や製作者たちも、著者の熱意にほだされてしまうらしい。著者がドキドキしながら手紙を出したり電話をしたりして、次第に人脈を広げていく様子も心温まる。小杉泰(京都大学教授)

(引用終了)

いかがだろう。以前「ハブ(Hub)の役割」で、

(引用開始)

 多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といった、安定成長時代の産業システムは、スモールワールド性がつくり出す「多様性」と「意外性」が発展の糧になる。だからハブの役割は、広く門戸を開き、公平性(次数相関「±0」)を心がけることで、数多くのリアルな「場」を作り出し、社会のスモールワールド性をより加速させることなのだ。

(引用終了)

と書いたけれど、インターネットを活用し、地域コミュニティーと都会との間を縦横に行き来しながら、自らの書店にリアルな「場」を次々と作り出しているこの「イハラ・ハートショップ」は、まさに「社会のハブ」としての役割を果たしている。

 書店というものは、社会に欠かすことの出来ない存在だ。ここでいう「書店」とは、「イハラ・ハートショップ」のような小さな本屋さんばかりではなく、都会の大きな書店、さらには出版業を含むところの、“書物という、人の思考道具である「言葉」を扱う生産活動”全般を指している。人は言葉で思考するから、そういう意味で、書店は社会の力の源泉である。書店は、「アートビジネス」とも隣接しながら、人の生産と消費活動を精神的に支える。書店はまた、社会における多様性と意外性を保証する「言論の自由」の守り手でもある。

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アートビジネス

2008年08月19日 [ 書店の力 ]@sanmotegiをフォローする

 「里山ビジネス」の玉村豊男氏は画家としても有名で、ヴィラデストのワインボトルのラベルには氏が描いた素敵な絵が使われている。今回はビジネスとしてのアートについて考えてみたい。

 アートとは、自然 (t = ∞)の中から幾つか個別な時間を切り出してきてコラージュ(組み合わせ)し、他人の脳(t = 0)の前へ提示することだ。分子生物学者の福岡伸一氏は、新聞のコラムで、フェルメールの絵について次のように述べている。

「(前略)たとえば、私はフェルメールの絵が好きだ。美しいと思う。それは何に由来するのだろう。いろんな場所へ行き、たくさんの作品を見た。でもなかなかわからなかった。あるときふと思った。絵の中にあるのは、移ろいゆくものをその一瞬だけ、とめてみたいという願いなのだ。そしてそこにとどめられたものは凍結された時間ではなく、再び動き出そうとする予感である。(後略)」(7/17/08日経新聞「あすへの話題」より)

 コラージュ作業の原理の内に、「Before the Flight」で述べた反重力美学や郷愁的美学などがある。

 またアートには様々なジャンルがあり、そのジャンルによって異なる感覚が用いられる。音楽であればリズムと旋律、絵画であれば色彩、俳句や詩、小説などであれば言葉、彫刻や建築であれば形、質感などなど。人の脳(t = 0)は、五感を通してそれらを感受する。

 さて、アーティストにとってはそれで良い。自然 (t = ∞)の中から幾つかの時間を切り出してきて独特な手法でそれらをコラージュし、他人の脳(t = 0)の前へ提示すれば作業はそこで終わる。しかしアートビジネスにとっては、人々の脳(t = 0)へ提示された作品が、多くの人々に何らかの効用を齎さなければ始まらない。

 アートの効用は、道具のような便利さではなく、人の生産と消費活動を精神的に(理性と感性面から)支えることだ。多くの人々が効用を感ずれば、作品の希少性に対して値段が付く。市場で公的に認められることがアートビジネスにとっては大切なことなのだ。アートの市場価値はアーティスト本人とは何の関係もない。

 値段の付いた作品はギャラリストやコレクター、出版社などによって市場で売り買いされ、売値と買値の差が利益となる。利益は、宝石の場合などと同様、時間とお金を掛けてそれを発見し保管してきた人々への報酬である。アートビジネスは「多品種少量生産」だから、これからの安定成長時代、重要度が増すに違いない。絵画を中心としたアートビジネスの最新については、「現代アートビジネス」小山登美夫美夫著(アスキー新書)に詳しい。

 アートビジネスは、アーティストと一般の人々との間に立つ、ギャラリストやコレクター、出版社の人々抜きでは成り立たない。彼らは市場における「ハブ」としての役割を負うから、『広く門戸を開き、公平性(次数相関「±0」)を心がけることで、数多くのリアルな「場」を作り出し、社会のスモールワールド性をより加速させること』(「ハブ(Hub)の役割」より)が期待される。

 アートの普及には、実際、効用が確認できるリアルな「場」の存在が欠かせない。街の美術館や映画館、特色のある書店や古書店、ギャラリーやジャズ喫茶などが、皆で連携して宣伝に努めるのも良いと思う。家に素敵な案内が舞い込めば、あまり興味の無かったジャンルのアートにも興味を持つ人が増すと思われるが如何だろう。*

* 8月17日のNHK新日曜美術館で、友人の芹沢高志氏がアートディレクションを務める「十勝千年の森・現代アート」が紹介された。広大な森を散策しながら、独自の時を生成するアートに出会うのも楽しい体験に違いない。

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本づくりとスモールビジネス

2008年02月27日 [ 書店の力 ]@sanmotegiをフォローする

 先日新聞に、作家や詩人たちが(音楽家のように)自主レーベルで独自の本作りを始めていると紹介されていた(2/4/08日経新聞夕刊「作家や詩人、独自の本作り」)。

 その中で紹介された「ウィンドチャイム・ブックス」の永井宏さんは、以前読んだ「本づくりのかたち」芳賀八恵著(8plus)という素敵な本にも載っていたので覚えていた。

 芳賀さんの本には、「ウィンドチャイム・ブックス」の他にも、
「牛若丸」
「空中線書局」
「トリトンカフェ」
「SKKY / iTohen」
「young tree press」
「mini book Hana」
「四月と十月」
「小さなほん」
「トムズボックス」
「未来本」
「Web Press 葉っぱの坑夫」
といった、独自の本づくりを志している人たちが紹介されている。皆それぞれにHPがあるから、興味のある人は検索してみて欲しい。この本を書いた芳賀さんご自身も、絵本作家、デザイナーであるとともに「8plus」という小さな個人出版社を主宰されている。

 以前「スモールビジネスの時代」の中で、安定成長時代を支える産業システムの一つは「多品種少量生産」であると書いたが、出版においても、作家個人が営む自主レーベルの動きが出てきたことはそれを証明している。本はこれからますます多様化していくだろう。私もいつか、出版した電子書籍やその他の原稿を、綺麗な装丁でCDサイズ横書きの本として出版したいと思う。




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