夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


集合名詞(collective noun)の罠

2008年01月29日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 我々はよく、集合名詞(複数の構成員から成る集団・機関・組織などを一つの単位として現す名詞)を使って、これからのことを話すことがある。たとえば、「次の選挙はきっとA党が勝つだろう」とか、「うちの会社はまた人員削減をするだろう」などである。

 しかしこれは正確な言い方ではない。なぜなら、何かを成すのは個々人であって、人の集合体が何かをする訳ではないからだ。

 もちろんそういう言い方の意図は、将来に起こるであろうことを集合名詞に代表させて予測するということなのだが、問題なのは、そういう言い方が多くの場合、集団に対する自らの行為の影響力を過小評価し、「大勢は決まっているのだから、自分ひとりではどうせ結果を変えられない」という諦めを含むことだ。「次の選挙はA党が勝つだろう」とか、「うちの会社はまた人員削減をするだろう」という予測にもとに、「どうせ」選挙にいかなかったり、「どうせ」経営者に文句を言わなかったりする人は多い。

 我々は歴史を習う中で、過去の記述に集合名詞を使うことに慣れてしまった。はじめの例に関連させれば「A党は三年前の選挙に大勝した」、「B社は三年前に人員削減を行った」などなど。しかしこれは、それを行った個人を特定し、その名前を全て書くことが事実上不可能だから、簡便的に集合名詞で代替しているのであって、実際に「A党」や「B社」が何かを行ったのではない。集合名詞は行為の主体にはなり得ない。これまで人間社会で起ったことのすべては一人一人の判断と行動(あるいは非行動)の結果であり、これからもそれ以外はあり得ないということを我々は肝に銘じるべきだろう。これからのことを簡便的に集合名詞で決め付けてはいけないのだ。

 ビジネスの現場でも、本当のところ個人の力が全てである。何かを成し遂げるためには、社員一人ひとりが持てる力をフルに発揮する意外に道はない。スモールビジネスにおいては特に、社長以下社員一人ひとりの行為がそのまますぐに会社の業績・評価に繋がる。将来、それらの行為の軌跡を第三者が振り返ってみたときに初めて、「あの小さな会社は三年前に画期的な開発を行った」と(歴史的に)語られるのである。

 ところでこの、行為の主体があくまでも「個人」であるという立場は、常に思考の枠組みから自分というものを外さないという点で、複雑系の科学でいう「内部観測」の考え方に近いかもしれない。先回「生産と消費について」で書いた「生産」と「消費」の相補性と併せて、これからの社会科学には、環境に運動の意味を探る「アフォーダンス」の理論を援用していく必要がありそうだ。内部観測とアフォーダンスについては、「複雑系の科学と現代思想 アフォーダンス」佐々木正人/松野孝一郎/三嶋博之共著(青土社)を参照されたい。

アフォーダンス (複雑系の科学と現代思想)

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理念(Mission)と目的(Objective)の重要性

2007年12月26日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 会社を始める際には、なぜその会社を興そうとしたのかという理念(Mission)と、具体的に何を達成したいのかという目的(Objective)を、自分できちんと書いてみることが重要である。

 いくら小さくとも会社は一つの共同体だから、その理念と目的を、社員やお客様、さらには社会に対してわかりやすく伝えることが大切なのである。この二つをはっきりさせず、ただお金が儲かるからとか、人に頼まれたからという理由で始めても、会社という共同体は長続きしない。

 私も、自分の会社サンモテギ・リサーチ・インク(SMR)を始めるに際して、まずこの二つを書いてみた。書いてみると、あいまいな点やつじつまの合わないところが見えてくる。いろいろと書き直して、最終的に下記のようなものになった。

企業理念(Mission):
電子出版などの新しいエレクトロニクス・ネットワークビジネスを通じて、人間の知の拡大に貢献する

活動目的(Objective):
1.エレクトロニクス・ネットワーク業界におけるビジネスコンサルティング
2.電子出版などにおけるコンテンツ企画および作成
3.電子出版などにおけるコンテンツ配信、販売
4.その他上記関連業務

 30年近くエレクトロニクス関連の会社にいたと同時に、読書や物を書くのが好きだから、「電子出版」という分野に興味があった。しかし、せっかくスモールビジネスを立ち上げるのだから、ビジネスを成功させるというだけではなく、ビジネスを通して何か社会に貢献したかった。それが「人間の知の拡大に貢献する」という言葉になった。

 これまでのところ、電子ペーパーと呼ばれる、紙のようにフレキシブルなディスプレイを開発する会社のコンサルティングを行う一方、小説など電子書籍のコンテンツを作成してきた。また、仲間と一緒に「出版UD研究会」という、視覚障害など、さまざまな立場にある読者のニーズを生かした出版のユニバーサル・デザインを考える研究会の世話人を続けている。

 最近始めた「スモールビジネス・サポートセンター」では、起業しようとする人たちを様々な面からサポートするという新たな方法で、人間の知の拡大に貢献するつもりだ。

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posted by 茂木賛 at 11:09 | Permalink | Comment(0) | 起業論

スモールビジネスの時代

2007年12月05日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 最近、品質や安全の問題が頻発し、高度成長時代を支えた大量生産・輸送・消費システムが軋みをみせている。大量生産を可能にしたのは、遠くから運ばれる安い原材料と大きな組織だが、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といった、安定成長時代の産業システムを牽引するのは、フレキシブルで、判断が早く、地域に密着したスモールビジネスなのではないだろうか。

 産業システムを牽引するのは、いつの時代でも、明確な理念と目的を持った新しい起業家たちだが、ネットワークの発達によって、今の起業家は自分の組織をむやみに大きくしなくとも、(他社との連携によって)自らの理念と目的を達成できるようになったことが大きい。

 NHK「プロフェッショナル・仕事の流儀」第61回(2007年9月4日放送)に出演された、顧客の足に合わせた靴を作りこむ靴職人の山口千尋さんと、山口さんが経営する工房はそのいい例だと思う。
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/070904/index.html

 印象的だったのは、初めて山口さんの靴を履いたお客さんの、なんともいえない満足そうな表情と、山口さんから宿題を与えられて悩む若い靴職人の姿だ。これまでの大量生産・流通・消費時代には、自分の足に合った靴を比較的容易に作ってもらえるなどということは想像すらできなかった。

 大きい組織でも、内部を分割し、小組織の精神を取り入れてうまく経営している会社もある。しかし、大きい組織はそもそも同じものを大量に生産するのに適している。

アイデアと気力のある人は、日本全国津々浦々で、陸続とスモールビジネスを立ち上げようではないか。

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posted by 茂木賛 at 14:08 | Permalink | Comment(0) | 起業論

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