夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


金属吸着剤

2009年02月17日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 以前「レアメタル」で取り上げた希少金属のリサイクルについて、最新技術に関する新聞記事があったので紹介しよう。

(引用開始)

レアメタル回収ザクザク
―果物の皮や古紙利用で吸着剤―

 パソコンや携帯電話等には金のほか、プラチナやパラジウムなどレアメタル(希少金属)が含まれ、その廃棄物は「都市鉱山」とも呼ばれる。果物の皮と古紙から摘出した成分を用い希少金属を回収する吸着剤を、佐賀大理工学部の井上勝利教授(機能物質化学)らのグループが開発した。低コストで有害物質も出さないといいう、注目を集めそうだ。

 井上教授らは、大量廃棄される小型家電や電子部品に含まれる金属資源を効率的に回収する方法を検討。その結果、身近にあるレモンや柿の皮に含まれるポリフェノールや、古紙が含有するリグニンとセルロースに金属を吸着する性質があることに着目した。
 吸着剤は、これらの成分をアミノ基などと化学反応させて開発。管に吸着剤を充てんさせ、塩基で溶かした電気・電子部品の廃液をろ過すると、果実の吸着剤は金を100%回収でき、古紙の吸着剤はプラチナとパラジウムをいずれも80%以上回収できた。
 従来の活性炭や高分子樹脂吸着剤は吸着量が少ない上、特定の金属を抽出できなかった。今回開発された吸着剤は、反応させるアミノ基の種類によって一種類の金属を選択的に吸着できる。
 また活性炭は大掛かりな排水処理が必要で、高分子樹脂吸着剤はダイオキシンを発生させる弊害があったが、開発された吸着剤は環境に負荷をかけない。
 従来の方法に比べ、コストは半分から十分の一で済み、吸着容量も従来の三倍以上という。
 井上教授は『安価な材料で価値のあるものを回収できる。循環型社会の一翼を担う技術になれば』と語る。今後は連続的な回収実験を行い、実用化に向けた共同開発の企業を募集する計画だ。

(引用終わり)
<東京新聞「話題の発掘」1/8/2009>

 これまで安定成長時代の産業システムとして挙げた、

1. 多品種少量生産
2. 食の地産地消
3. 資源循環
4. 新技術

について、「建築士という仕事」で書いたように、これら四つの産業システムが複数関連したビジネスは、一つだけの場合に比べて、当然時代を牽引する力がより強くなる。今回紹介した「果実吸着剤を使った希少金属リサイクル」は、

1. 多品種少量生産(多種類の金属回収)
2. 資源循環(金属リサイクル)
3. 新技術(果実や古紙を使った吸着剤)

が関連するビジネスであり、これからの時代、重要性が増すだろう。ちなみに、今日の東京新聞(2/17/2009)には、「工業廃水からレアメタルの回収」という記事もあった。

 安定成長時代の四つの産業システムのなかでも、「新技術」に関連するビジネスは、他社がなかなか真似できないという意味で特に有望だと思う。これからもいろいろな「新技術」に注目していこう。

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組織の適正規模

2009年02月03日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といったこれからの新しい産業システムに対応する為には、大きな規模の企業よりもスモールビジネスの方が有利であることを、これまで、インターネットの普及(「スモールワールド・ネットワーク」)、効率とリスク分散(「カーブアウト」)、素早い経営判断の必要性(「カーブアウトII」)、地域密着型経営(「カーブアウトIII」)などから考察してきた。ここでは、組織の適正規模という側面からスモールビジネスの利点を考えてみよう。

 企業における組織の役割は、その構成メンバー全員が企業の「理念(Mission)と目的(Objective)」を理解し、”plan, do, see”のサイクルを通して、その目的を達成していくことにある。(詳しくは「理念(Mission)と目的(Objective)の重要性」、「爆弾と安全装置」、「ホームズとワトソンII」などを参照のこと)

 リーダーとしての社長は、自社組織がうまく回っているかを常に見ていなければならない。その為には、組織メンバーとの意思疎通を図ることが大切であることは云うまでもない。さて、社長が一日にじっくりと話し合うことのできる相手社員は何人ぐらいだろうか。皆さんも各々考えてみて欲しい。一日に一体何人の部下とじっくり話すことができるだろうか?

 じっくり話し合う時間を20分程度としても、三人で1時間である。業務時間を一日10時間として、忙しい業務時間中様々な仕事をこなしながらだから、一日せいぜい5、6人というところではないだろうか。一週間にすると、25から30人程度である。出張などが入れば勿論時間はもっと少なくなる。

 次に情報伝達における組織の階層性の問題について考えてみよう。高度成長時代を支えた大量生産・輸送・消費システムにおいては、市場や技術の変化も比較的穏やかで、社員の職能も単純化が可能だったので、階層の多い組織でも、時間をかければリーダーの意志は組織の末端まで届いただろう。

 しかし、安定成長時代の産業システムにおいては、市場や技術の変化が激しく、それに伴ってリーダーの方針や戦略も刻々変化する。また社員の職能も高付加価値化してくる。だから最新の情報を伝達するには、社員との意思疎通を一週間単位程度で繰り返さないと充分ではない筈だ。階層性の多い組織では、リーダーの意志が末端まで到達する間に、早くもリーダーの方針や戦略が変化してしまうのである。

 こういう会社は、外から見ると組織全体の動きがギクシャクしたものとして映る。それだけならばまだ良いが、極端な場合、社長が「甲」といっているのに、右の組織が「乙」、左の組織が「丙」と云っている、などということが頻繁に起こりうる。みなさんの会社は如何だろうか?

 次に、社員同士の意思疎通という面から組織の適正規模を見てみよう。これも同じく業務時間を一日10時間として、忙しい業務時間中様々な仕事をこなしながらだから、一日せいぜい5、6人というところだ。一週間でやはり25から30人程度。逆に云うと、30人規模の組織であれば、社員同士のコミュニケーションも充分に取れる訳だ。チームワークがうまく機能すれば、「相転移と同期現象」で述べた、非線形的な現象(信じられないような力が発揮されたり、素晴らしい企画が生まれたりすること)も起こりやすい。

 以上見てきたように、従業員30人規模のスモールビジネスは、組織の規模という面から見て、とても効率が良い筈だ。スモールビジネス・サポートセンターのトップページに小さな文字で、「ここでいうスモールビジネスとは、社長一人から全員で30人くらいまでの比較的小規模なビジネスを指します。」と書いてあるのはそういう意味が籠められている。勿論、業務内容によって、情報伝達以外の面から見た様々な適正規模があるから、あくまでも原則論として理解して欲しい。

 さて、小さな組織は、「理念(Mission)と目的(Objective)」さえしっかり出来れば、短期間のうちにスタートしやすい。「チームプレイ」では、雇用機会の減少は、スモールビジネスにとって優れた人材を雇うチャンスであると書いたけれど、ここへ来て大きな組織から離れた人の中で、自分の得意分野で社会へ貢献したいと考えている人は、この際、積極的に起業することを志してみてはいかがだろう。

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チームプレイ

2009年01月21日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 約一年前、ブログの初回「スモールビジネスの時代」の冒頭で、

「最近、品質や安全の問題が頻発し、高度成長時代を支えた大量生産・輸送・消費システムが軋みをみせている。大量生産を可能にしたのは、遠くから運ばれる安い原材料と大きな組織だが、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といった、安定成長時代の産業システムを牽引するのは、フレキシブルで、判断が早く、地域に密着したスモールビジネスなのではないだろうか。」

と書いたが、最近大きな会社組織が平気で(派遣を含む)社員を削減するのは、

『以前「理念(Mission)と目的(Objective)の重要性」で、「いくら小さくとも会社は一つの共同体だから、その理念と目的を、社員やお客様、さらには社会に対してわかりやすく伝えることが大切なのである。」と書いたけれど、会社が大きくなってくると、当初定めた理念や目的がはっきりしなくなってくるのである。役員たちがそこで一旦立ち止まって、目的を書き換えるなり(あるいは初心に還るなり)すればよいのだが、特に儲かっていたりするとそれを怠るケースが多い。そしてお金儲けだけが企業の目的のような錯覚に囚われてしまう。』(「カーブアウト II」より)

からでもあろうが、それと同時に、多くの産業で、高度成長時代を支えた「安い原材料と大きな組織による大量生産システム」がいよいよ立ち行かなくなってきたことを示している。

 これからの安定成長時代を牽引する産業システムは、「多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術」などであり、今後ますます「フレキシブルで、判断が早く、地域に密着したスモールビジネス」が注目される筈だ。

 雇用について考えてみると、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術などに関わる職能は、大量生産時代に必要とされた職能よりも高付加価値化(単純作業から多機能作業へ転換)するから、今のような移行期には雇用機会の一時的減少が起こる。

 大きな組織の雇用調整が加速すれば、社会全体の雇用機会はますます縮小する。ここで雇用を「資源」として捉えれば、資源(雇用機会)が明らかに減少しているということだ。

 「競争か協調か」および「競争か協調か II」のなかで考察した、「競争を選ぶか協調を選ぶかは、資源全体の多寡・増減に依る」という原則、即ち「競争」は全体の資源(この場合は「雇用機会」)が豊富にあることを前提としたルールであり、「協調」は資源が少ない場合のルールであるという原則に照らして考えれば、いまの社会が取るべき雇用政策は、「協調戦略」に基づいたものでなければならない筈だ。「チームプレイ」は、資源が限られている場合のルールなのである。

 スモールビジネス・サポートセンターのトップページに、「これからの社会は、これまでの競争原理優先主義とは異なり、力を持つ人も持たない人も、共に助け合いながら生きていくことが大切になります。」と掲げてあるのはそういう意味を含んでいる。

 一方、上の原則は「系」総体で見ると、(適当な調整機能が働くことが前提だが)構成要素間の循環と、構成要素そのものの多様性を保証する要因ともなりうる。ある立場からして不必要なものも、別の立場から見れば貴重な資源となる場合があるからだ。自然界の食物連鎖はその良い例である。

 このことを「雇用機会」に当て嵌めて考えると、社会全体の雇用機会の縮小は、雇用する側からみれば逆に人的資源の増加であり、起業を目指すスモールビジネスは、この状況を(競争戦略に則って)より適した人材を選ぶ好機と捉えるべきだろう。

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失敗学

2008年10月27日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 「ホームズとワトソンII」のなかで、「資産と市場とのマッチングが取れて戦略が決まったらあとは実行あるのみ。”Plan, Do, See”の”Do”の部分である。いろいろと足りないものや不安なところがあるだろうが、まずはやるしかない。やってみて初めて分かることも多いものである。失敗は次に活かせば良い。」と書いたが、この「失敗は次に活かせば良い」という発想を、体系的に研究するのが「失敗学」だ。

 「失敗学」の創始者は、工学院大学の畑村洋太郎教授である。その著書「失敗学の法則」(文藝春秋)にある失敗の定義は、「人間が関わったひとつの行為の結果が、望ましくない、あるいは期待しないものになること」というものだ。

 普通我々は、失敗の構造を<原因>と<結果>という二つに分けるが、「失敗学」ではこれを、<要因><からくり><結果>という三要素から考える。<要因>とは、失敗を引き起こした行為の「動機」であり、<からくり>というのは、失敗を引き起こした系の「特性」である。「失敗学」では、<原因>の部分をさらに「動機」と「特性」の二つに分解するわけだ。

 「失敗学」とは、<結果>から、<要因>と<からくり>という見えない二つのものを、逆に辿って探っていくということなのである。この<要因><からくり><結果>の関係は「失敗の脈絡」と呼ばれ、事例を通して一般化することによって、予測・類推につなげることができる。

 同書には、「失敗は確率現象である」、「失敗は拡大再生産される」、「“千三つ”の法則」、「課題設定がすべての始まり」、「仮想演習がすべてを決める」、「暗黙知を形式知に変えろ」、「質的変化を見落とすな」、「チャンピオンデータは闇夜の灯台」、「すべてのエラーはヒューマンエラーである」、「新規事業は隣接分野でしか成功しない」、「告発は善である」、「責任追及と原因究明を分けろ」、「遠慮のかたまりが失敗の温床になる」などなど、経営の参考になる叡智が満載されているので、皆さんも是非読んでみて欲しい。

 畑村氏はまた、「起きてしまった事故は社会の共有財産である」(「中央公論」2006年6月号)という文章のなかで、六本木ヒルズ回転ドアや福知山線脱線事故など当時起きた大きな事故について、事故は社会の公共財産である、と指摘されている。一部引用してみよう。

「 大切なのは、おきてしまった事件、事故を社会全体の財産だとする考え方である。次の事件、事故を起こさないための種が与えられたと思って、徹底的に利用すればいい。失敗はマイナスだけをもたらすのではないし、マイナスとみなすことしかできない人は、その経験から何も学ばず、結局同じ失敗を繰り返してしまう。」(同誌151ページ)

事件や事故が社会の公共財産である、というこの考え方は、私が「贅沢の意味」で述べた、「贅沢や特別な体験は、その人とその人を取り巻く社会にとって貴重な財産になる」という指摘と重なると思う。畑村氏のこの文章は、私の電子書籍「僕のH2O」でも一部引用させていただいた。

 「失敗学の法則」の最後に、

『組織変革において重要なのは、組織の構造や制度を変えることではありません。組織内の個人が自立し、その組織の文化そのものを変えていくことなのです。(中略)「自分しか自分を救うことはできない」と気付いた個人が、組織や社会から精神的に自立していき、その自立した個人たちが、最終的には日本を再生することになるはずです。』(同書221ページ)

という指摘がある。「個人の自立」は、自分(の失敗)を冷静に客観視し、それを公(おおやけ)の言葉に残すところから始まる。私は「公(public)と私(private)」のなかで、『そもそも日本語的発想は、「公的表現」を構築する力が弱い』と述べ、「日本語がもうすこし公的表現を構築する力を蓄えれば、日本の社会はもっとバランスの取れたものに成るのではないかと思う。」と書いたが、この「失敗学」の観点からも、日本語による「公的表現を構築する力」が求められているのだ。

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競争か協調か

2008年10月07日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 ビジネスでは経営戦略上、競合他社と競争して勝ち残りを狙うのか、競合他社と提携して協調を図るのか、難しい判断を迫られるときがある。スモールビジネスといえども例外ではない。そういう場合には、例のResource Planning(R.P.)的発想で全体を俯瞰し、結論を出さなければならない。

 判断するのに重要なのは、対象事業における経営資源の多寡・増減であることは云うまでもない。しかし、それは自社と他社との相対的な比較ではなく、競合他社を含めた全体の多寡・増減でなければならない。全体の資源に限りがあることが見えているのに闇雲に競争すれば、互いに疲弊し他社もろとも倒れてしまう。一方、資源が潤沢にあるのに競争せずにいると、新規参入者にしてやられることになる。

 勿論、資源は事業の分野や段階によって異なるから、ある分野では競争しながら別の分野で協調する、といったこともあり得る。たとえば、空から降ってくる太陽光はいわば無尽蔵である。だから、太陽電池、なかでも色素増感型電池を手がけている会社は、今年スイスの研究者が持つ基本特許が切れたことでもあり、大いに自社技術の深化を目指せばよい。しかし、発電に供給が充分でない材料(たとえばシリコン)を必要とする場合、その資源調達に関しては他社との協調を図るべきだ。

 この「競争か協調か」という判断は、企業経営に限られたことではない。自治体やスポーツ団体など、人・物・金に関わる様々な現場でこの判断が必要だ。

 わかりやすい例えを使って考えてみよう。サッカーやバスケット・ボールなどのチーム・スポーツを考えて欲しい。この場合の資源は人、すなわち選手たちである。「自由競争」と「チームワーク(協調)」はどのような場面で使い分けられるのか。

 コーチが大勢の選手の中からベンチに入る選手を選び、さらにその中からスターティング・メンバーを選ぶのは「自由競争」の原理に基づいている。すなわち、人的資源はチーム内の全ての選手たちであり、豊富にあるものの中から「自由競争」の原理でベストなものを選び出すわけだ。場合によってはよそのチームの選手も選ぶ対象になる。一方、実際の試合になると、スターティング・メンバーおよびベンチの選手たちはチームとして団結しなければならない。これが「チームワーク」だ。この場合の目的は試合に勝つことで、人的資源は(スターティング・メンバーとベンチの選手たちだけに)限られるからである。

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ホームズとワトソンII

2008年09月09日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 前回ホームズとワトソンの比喩を使って、Resource Planning(R.P.)とProcess Technology(P.T.)との違いを分かってもらったところで、今回は経営のイロハである”Plan, Do, See”に沿って、企業におけるR.P.とP.T.の役割の違いを見ていこう。皆さんはホームズとワトソン、あるいは杉下右京と亀山薫になった気分で読んで欲しい。

 まずは自分たちの会社の「理念と目的」を確認しよう。企業とは、仲間と力を合わせて社会の為に何かを実現するところだ。ここは二人でじっくり相談して決めて欲しい。

「会社を始める際には、なぜその会社を興そうとしたのかという理念(Mission)と、具体的に何を達成したいのかという目的(Objective)を、自分できちんと書いてみることが重要である。いくら小さくとも会社は一つの共同体だから、その理念と目的を、社員やお客様、さらには社会に対してわかりやすく伝えることが大切なのである。この二つをはっきりさせず、ただお金が儲かるからとか、人に頼まれたからという理由で始めても、会社という共同体は長続きしない。」(「理念(Mission)と目的(Objective)の重要性」より)

 「理念と目的」が決まったら、次はそれに沿って、自分たちの会社が持つ資産と市場とのマッチングを計る。”Plan, Do, See”の”Plan”の部分である。よほど特殊な資産、たとえば貴重な特許などを持っていれば別だが、通常の場合、他の誰でも出来そうなやり方ではなかなかお客様に受け入れられない。独創的な戦略が必要とされる部分だ。独創性は、組織・商品・店舗・流通など合わせて少なくとも三つ以上欲しいところだ。独創性を編み出すためには、大局を観て、常識にとらわれずに大胆な発想をする必要がある。だからここはホームズ・杉下の出番である。ただし計画が頭でっかち(ひとりよがり)にならないように、きちんとワトソン・亀山がサポートしなければならない。このphaseに参考になりそうな過去の記事を載せておこう(以下同様)。

現場のビジネス英語「MarketingとSales」
統合と分散

 資産と市場とのマッチングが取れて戦略が決まったらあとは実行あるのみ。”Plan, Do, See”の”Do”の部分である。いろいろと足りないものや不安なところがあるだろうが、まずはやるしかない。やってみて初めて分かることも多いものである。失敗は次に活かせば良い。だからここは、その場その場で全力を尽くすワトソン・亀山の出番だ。リーダーシップを発揮してスタッフの力を最大限引き出す。現場で皆と一緒になってチームワークで難局を乗り越える。ただし当初の目標を見失わないように、ホームズ・杉下のサポートも必要である。

本づくりとスモールビジネス
里山ビジネス
建築士という仕事

 一定の期間が終わったら、結果を冷静に分析しなければならない。”Plan, Do, See”の”See”の部分である。ここは二人で(場合によってはスタッフも入れて)一緒にやる。R.P.的な発想から見えてくる反省点もあろうし、P.T.的発想から見えてくる反省点もあるはずだ。あそこにもう少しお金を投入していれば、あそこでもうちょっとみんなで頑張れれば、などなど。そして二人で次の目標を立てる。場合によっては「理念と目的」の修正も必要かもしれない。

爆弾と安全装置
カーブアウト

 ホームズとワトソンならベーカー街の下宿、杉下と亀山なら小料理屋花の里で、味のある会話のうちにここで一話が終わるところだが、会社運営の場合は終わりがない。結果分析が終わり、次のターゲットが決まったら、少し休んでから再び「理念と目的」に沿って資産と市場とのマッチングを計り、戦略を立て直さなければならない。再び”Plan, Do, See”の”Plan”である。前話の結果を継承しながらまた新しいエピソードが続いていくのである。

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ホームズとワトソン

2008年09月02日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 以前『現場のビジネス英語「Resource PlanningとProcess Technology」』のなかで、「本来相互補完的であるべきResource Planning とProcess Technologyという二つの方法論が、英語的発想と日本語的発想という対峙をそれぞれのルーツとしているとすると、真の企業経営には、この両者をその両翼の下に宿す強い「包容力」が必要とされる筈だ。」と書いたが、実際問題、経営者が一人でこの両方(Resource Planning、全体を大局的に俯瞰して投資の判断などをすることと、Process Technology、与えられた環境の中へ入り込み技術や工程を改善すること)を熟すのは至難の業といえる。

 そこでこの難しい仕事を二人で役割分担するという発想が生まれる。ソニーの井深大と盛田昭夫、ホンダの本田宗一郎と藤沢武夫、スタジオジブリの宮崎駿と鈴木敏夫などなど。どちらかが会社のResource Planning(R.P.)を主に担い、もう一人がProcess Technology(P.T.)を主に担うという訳である。この役割分担を、もう少し分かりやすい例を取って考えてみよう。

 たとえばコナン・ドイル描くところの探偵シャーロック・ホームズと医者ジョン・ワトソンのコンビはどうだろう。勿論二人はフィクション上の人物だし経営者ではないけれども、探偵業もR.P.とP.T.の両方を必要とするという意味で企業経営と相通ずるものがあるから、例としては妥当と思われる。

 この場合、ホームズがR.P.、すなわち全体を大局的に俯瞰して事件の謎を解いていく役割であることははっきりしている。ワトソンはP.T.、すなわち与えられた事件環境に入り込んでホームズを助けるのが専らの役割だ。彼は物語の語り手だから、プロット上事件解決に深く関わらないことも多いが、事件の経緯を後から整理して語ること自体がそもそもP.T.的な役割だ。

 ホームズを見ているとR.P.的人間というものがわかる。常識にとらわれることなく、発想が大胆で奇行も多い。孤高を愛し、情熱は心に秘め、態度はいつもクールである。一方、P.T.的人間のワトソンはといえば、常識人であり、正義感が強く、友人のために汗をかくことを厭わない。大局を観るよりもその場その場で全力を尽くす。勿論ワトソンは英国人という設定だから英語的発想から自由ではないが、それでも作品の中では充分P.T.的役割を果たしている。

 さて、ホームズとワトソンの遠い親戚がテレビ朝日「相棒」でコンビを組む杉下右京警部と亀山薫巡査部長である。この場合杉下右京がホームズで亀山薫がワトソンという役割であることはいうまでもない。右京は、常識にとらわれることなく、発想が大胆で奇行も多い。孤高を愛し、情熱は心に秘め、態度はいつもクールである。一方、P.T.的人間の薫はといえば、常識人であり、正義感が強く、友達のために汗をかくことを厭わない。大局を観るよりもその場その場で全力を尽くす。勿論右京は日本人という設定だから日本語的発想から自由ではないが、それでも作品の中では充分R.P.的役割を果たしている。右京にロンドン留学の経験があるという設定も大切な伏線だ。

 以上、ホームズとワトソン、いやもっと身近な「特命係り」の二人を例に取ってR.P.とP.T.の違いを考えてみたが、分かって貰えただろうか。

 ところであなたは、ホームズ派、あるいはワトソン派のどちらだろう。常識にとらわれることなく大胆な発想ができ、よく友達からお前は奇行が多いといわるような人はおそらくホームズ派だ。常識があり友達思い、その場その場で全力を尽くすのがモットー、という人はワトソン派といえる。あなたが何か大きなプロジェクトを始めようと考えていて、自分がホームズ派だとすれば、ワトソン派の相棒を選ぶのがお勧めだ。その逆、自分がワトソン派であれば、相棒にはホームズ派を選ぶ。お互いの長所短所を尊重しながらことに当たれば百戦危うからず。成功の鍵は専ら、いかに信頼できる相棒とめぐり合えるか、ということである。

 因みに、2006年1月から始まった「新訳シャーロック・ホームズ全集」アーサー・コナン・ドイル著・日暮雅通訳(光文社文庫)は、2008年1月をもって全9巻の完結をみた。編集は丁寧で、訳も素晴らしく、全巻ではないがシドニー・パジェットのオリジナル挿絵が見られるのも嬉しい。これからの秋の夜長、スコッチを片手にホームズ全集を紐解くのも悪くない。

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カーブアウト III

2008年05月27日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 これまで見てきたように(「カーブアウト」「カーブアウトII」)、新しい技術を社会に役立てようとする企業人にとって、カーブアウトという手法はアドバンテージが多いのだが、もう一つ踏み切れない理由として、失敗したらどうしよう?という心配があると思う。

 日本は人材市場の流動化(Social Mobility)がまだ進んでいないから、カーブアウトしたものの失敗したら社員が路頭に迷う可能性がある、かといって元に戻すのも…。ということで二の足を踏む。しかし、いつまでも終身雇用の時代ではないし、新しい技術を社内で埋もれさせてしまうのはもったいない話だ。

 カーブアウト企業を考える場合、その先の戦略として二種類の方法があると思う。ひとつは、ベンチャービジネスとして、将来の株式公開もしくは事業売却を前提とする方法、もう一つは、スモールビジネスとして、将来的にも(地域密着型で)事業を継続していく方法である。前者は、成功すると大きな利益を得ることができるが、失敗のリスクも高い。後者は、大きな利益は生まないかもしれないが、地域社会に、特色のある産業と、継続した雇用を残すことができる。

 以前「ウェブ新時代」で紹介した「ウェブ時代をゆく」(ちくま新書)の中で、著者の梅田望夫氏は、スモールビジネスとベンチャービジネスに関して『たとえば「スモールビジネスを作る」のと「ベンチャーを起こす」のはぜんぜん違うことだ。前者はこれまでの仕事や生活の延長で考え得るカジュアルなことだが、後者は大きな決心と責任を伴う「期限付きで挑戦するビジネスゲーム」である。スモールビジネスは、事業の成長も創業者や経営者のライフスタイル次第だし、先行投資は利益の範囲で好きなだけやればいい。極端な話、別に成長を目指さなくたっていい。』(219−220ページ)と書いておられる。

 人材市場の流動化がまだ進んでいない日本にとって、親会社と地域社会が共に助け合いながら、カーブアウト企業を(地域密着型のスモールビジネスとして)育んでいくことは、とても意義のある方法なのではないだろうか。

 『現場のビジネス英語「MarketingとSales」』で紹介した「ボローニャ紀行」(文藝春秋)の中で、著者の井上ひさし氏は、ボローニャのスモールビジネスについて、「職人企業とは、製造業では従業員が二十二名以下、伝統産業では四十人以下の、小さな企業のことです。ここで働いてやがて熟練工になると(そのつもりがあればですが)いつでも独立できます。(中略)シルク都市時代からの技術の集積、熟練工たちの巨大な情報網、職人を大切にしようという意志、そして生まれた土地で育ち、学び、結婚し、子どもを育て、孫の顔を見ながら安らかに死ぬのが一番の幸せという生き方、そういったこの土地の精霊がボローニャに、フェラーリといった高性能自動車や、ドゥカーティといったすごいオートバイを生み出したのでした。」(63−64ページ)と書いておられる。日本もこの「ボローニャ方式」を見習って、各地に特色のあるスモールビジネスを育てていくべきだと思う。

 さて、カーブアウトまで行かなくとも、大手企業が自らの資産を使って、地域のスモールビジネスを支援していくことはもっと行われて良いと思う。スモールビジネスの経営者は、大手企業の様々なインフラが使えれば随分と助かる筈だ。身近な話として、社員食堂やスポーツ施設を(時間を区分して)スモールビジネスの社員(や一般の住民)に開放するのもいいと思う。

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カーブアウト II

2008年04月23日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 カーブアウトの話を続けよう。先々回の「カーブアウト」を読んで賛同してくれた人もいるだろうが、社内でいくら運動してもなかなかカーブアウトの承認が貰えず、悩んでいる人もいることと思う。

 承認が貰えない理由の一つとして、親会社の目的(Objective)がクリアーでない場合が考えられる。どういうことかというと、以前「理念(Mission)と目的(Objective)の重要性」で、「いくら小さくとも会社は一つの共同体だから、その理念と目的を、社員やお客様、さらには社会に対してわかりやすく伝えることが大切なのである。」と書いたけれど、会社が大きくなってくると、当初定めた理念や目的がはっきりしなくなってくるのである。

 役員たちがそこで一旦立ち止まって、目的を書き換えるなり(あるいは初心に還るなり)すればよいのだが、特に儲かっていたりするとそれを怠るケースが多い。そしてお金儲けだけが企業の目的のような錯覚に囚われてしまう。そうなると、社員から新しい技術を見せられたときに、それを社内で活用すべきなのか、カーブアウトして新規事業として始めるべきかの判断が付かない。だから承認も(逆に開発中止の判断も)できないのだ。

 もう一つの理由は、その新技術が親会社の目的に沿わないことがわかっていても、なんとか親会社の目的に合致するように(技術を)改善できないかと役員が考える場合である。以前『現場のビジネス英語「Resource PlanningとProcess Technology」』のなかで「一般的にいって、欧米の企業はResource Planning(投資など)に優れており、日本の企業はProcess Technology(工程改善)が得意である。」と述べたけれども、カーブアウトの判断は、多分にResource Planning的行為だから、日本の会社はそもそも不得意なのである。本来カーブアウトすべき新技術を持ちながら、経営判断に時間ばかり掛けて、せっかくのビジネス・チャンスを逸してしまう。

 それ以外にも、提案する側の問題として、新技術の可能性を十全に説明し切れていない、ビジネスモデルがクリアーでない、などの理由もあるだろう。社内でカーブアウトの承認が貰えず悩んでいる人は、会社側の問題点を認識すると同時に、ご自分のプレゼンテーションに磨きをかけていただきたい。そして、もう一つ大切な視点として忘れてならないのが、「そのカーブアウト企業はどう社会の役に立つのか」という理念(Mission)だ。

 カーブアウト企業は、普通のスモールビジネスと同じ「起業」であり、具体的に何を達成したいのかという目的ばかりではなく、なぜその会社を興そうとしたのかという理念がなければならない。これはプレゼンテーションだけではどうにもならない。それ以前の社会的情熱の問題だからだ。

 最近、『「社会を変える」を仕事にする」』駒崎弘樹著(英治出版株式会社)という若き社会起業家の本を読んだが、あなたの技術がどう社会の(生産活動に!)役に立つのか、それを熱く語ることが出来れば、頭の固い親会社の役員さんたちも、最後にはあなたの情熱に動かされるかもしれない。

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カーブアウト

2008年04月09日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 経営戦略としてのカーブアウトについて考えてみたい。カーブアウトとは、「社内に眠っている技術や事業の一部を企業が切り出し、事業化に向けて一定額を出資するとともに、第3者からの出資も仰ぐなどして、事業の成長を目指す手法」(毎日新聞社「エコノミスト」2008.3.4中村芳平『ベンチャーの新しい波「カーブアウト」』より)のことである。

 経営資源と市場とのマッチング方法についてこれまで述べてきた、経営資源の充実(『現場のビジネス英語「Resource PlanningとProcess Technology」』)やビジネスモデルの変更(「爆弾と安全装置」)は、あくまでも企業の理念と目的に沿った戦略だが、大企業が生み出す技術には目的を超えて応用可能なものも多く、そういう技術資源は、新しい理念と目的を掲げたスモールビジネスとしてスタートさせた方が良い。「カーブアウト」はその為の手法だ。

 生物学者の池田清彦氏は、最新の著書「細胞の文化、ヒトの社会」(北大路書房)のなかで、太陽光発電技術に関連して、「発電は集中型より分散型の方がエネルギー効率が良く、リスクも少ない。」と述べておられるが、そもそも、社会エネルギーの転換システムである企業も、自然エネルギーの転換であるところの発電と同じで、分散型の方が効率が良くリスクも少ないのだ。私がスモールビジネスを説く所以である。

 日本政策投資銀行の木嶋豊氏は、その著書「カーブアウト経営革命」(東洋経済新報社)の中で、カーブアウトのメリットとして「@新規事業のスピードアップが見込める、A既存ビジネスのしがらみを取り除くことができる、B事業のポートフォリオに合わない事業部門やIP(知的財産権)を活用できる、C新規事業者のインセンティブ・やる気を確保できる、D親元企業のさまざまなインフラを活用できる、等」を挙げておられる。

 中でも、@新規事業のスピードアップ、D親元企業のインフラ活用、の二つはカーブアウトの目玉だ。大企業ではどうしても経営判断に時間がかかり、せっかくのビジネス・チャンスを逸してしまうことが多い。一方通常のスモールビジネスでは、研究施設などのインフラにそれ程お金を掛けられない。

 以前「スモールビジネスの時代」のなかで、安定成長時代を支える産業システムの一つは「新技術」だと指摘したが、バイオ、化学、ナノテクなどの技術領域は、日本人の得意なProcess Technologyを生かせる分野でもある。これらの新技術をさらに躍進させるためにも、日本ではもっとカーブアウトの手法が活用されて良いと思う。

 不可逆システムではないバイオ、化学、ナノテクなどの新技術は、これからの時代に不可欠である。土壌汚染浄化事業を手がけるランドソリューション株式会社は、栗田工業からカーブアウトされた会社である。「メタルカラー列伝“トヨタ世界一時代”の日本力」山根一眞著(小学館)で紹介されたナノテク新素材、フラーレンを製造販売しているフロンティアカーボン株式会社は、三菱化学からのカーブアウト企業だ。


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爆弾と安全装置

2008年02月20日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 以前「理念(Mission)と目的(Objective)の重要性」の中で、企業は理念と目的の明確化が大切であると書いたが、企業は同時に、持てる資産(人的・技術的な力)の正確な自己評価(棚卸し)が必要だ。いくら立派な理念と目的を掲げても、それを達成する力がなければ何もならない。

 その上で企業は、市場におけるビジネスモデルを作成する。ビジネスモデルは、持てる資産と市場との相関で決まってくる。どういうことかと云うと、市場は時代の変遷のなかで変化するから、いつまでも同じモデルを掲げていたのでは、いずれ持てる資産を十分に活用できなくなってしまう場合がある。逆に何かの理由で資産が変化することもある。だからビジネスモデルは変数でよい。この、資産と市場のマッチングを図り、モデルを適時修正していくことを、企業戦略(Strategy)と呼ぶ。尚、ここでいう市場が、人の「消費活動」ではなく「生産活動」の総和であるべきことはこれまで再三強調した。

 企業戦略においては、(持てる資産が限られるスモールビジネスでは特に)柔軟な発想と、場合によっては大胆な決断が求められる。以下、面白いケースがあるのでご紹介しよう。ずっと以前アメリカの経営セミナーで聞いた話だ。

 ベトナム戦争当時、非常に優れた爆弾を開発していた会社があった。しかしその後戦争が終わると平和な時代が訪れて、すっかり爆弾の需要がなくなってしまった。そこでかれらは別のお客に目を向けることにした。しかし建築現場や鉱山の発掘以外、だれも爆弾など使ってくれない。

 困った彼らは、社会の動きについて今一度よく考えてみた。そうすると、戦争が終わったアメリカでは、車社会の安全性が注目されるようになってきていることが分かった。一方、爆弾のメカニズムをよく解析すると、「ある衝撃に対して爆発する」という原理に行き着く。爆弾はそのアプリケーションの一つに過ぎなかった。

 そこで彼らは、安全、自動車というキーワードに、「ある衝撃に対して爆発する」という技術メカニズムを当てはめると、運転する人を事故から守るエアバッグが、爆弾と全く同じ原理であることに気が付いたのである。

 その後その会社はエアバッグを自動車会社に売り込んで、人を事故から守る会社として発展していく。それまでの人を殺す爆弾作りから、人を生かすエアバッグ作りへの事業転進が面白いコントラストだったので、この話は私の記憶に長く残っている。

 「ある衝撃に対して爆発する」という技術メカニズム資産→戦争から平和への市場の変化→資産と市場のマッチング・プロセス→爆弾製造からエアバッグ製造へのビジネスモデルの180度変換、といった図式がお解かりいただけるだろうか。

 この話を生産と消費のテーマに当てはめてみると、「消費活動」だけを見ているということは、この会社が、戦争という場で如何に効率よく爆発する爆弾を作るかということだけを見ているということだ。それに対して、「生産活動」を見るということは、戦争が終った後の人々の「生産」の中心である、安全、車社会に目を向けるということである。そして、企業戦略を考えるということは、爆発のメカニズムを分析し、エアバッグと同じ原理だということに気づく過程のことなのである。

 ところで、スモールビジネスとエアバッグといえば、オートバイ用のエアバッグを開発した、無限電光株式会社竹内健詞代表取締役の話が興味深い。先日フジテレビ・アンビリーバボーの中で「不屈の発明家」として放映された(2008年1月24日)。竹内健詞さんのスモールビジネスは、このブログで力説している、スモールワールド性(スペイン警察からの引き合い)やハブの役割(梅田務さんとの出会い)、新技術(火薬に替わる膨発の仕組み、耐久性があり温度の変化に強い新素材の採用)や理念の重要性(2億円の契約を断った事)などの具体的な素晴らしい事例である。




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ウェブ新時代

2008年02月06日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 「ハブ(Hub)の役割」のなかで、インターネット社会の持つ、スモールワールド性の可能性と、リッチ・クラブ形成の危険性が、ハブ(知人・友人が非常に多い人)の振舞い方ひとつで大きく左右されることを指摘した。

 知人・友人の非常に多い人が、他の同様な人とのみ結びつきを強めると、閉鎖的なリッチ・クラブが形成されてしまう。一方、知人・友人の非常に多い人が、(知人・友人の)あまり多くない人達との結びつきを強め、リアルな「場」を数多く作り出してゆけば、社会のスモールワールド性が加速され、その中から様々なビジネスやサービス、芸術や理想が生まれてくる。

 この可能性と危険性とをそれぞれ強調した本が、「ウェブ時代をゆく」梅田望夫著(ちくま新書)と「ウェブ社会をどう生きるか」西垣通著(岩波新書)である。梅田望夫氏はどちらかというと楽観的に可能性を語り、西垣通氏は気を引き締めて危険性に警鐘を鳴らすという違いはあるが、どちらもウェブ時代をどう生きるかということについて書かれた優れた考察だ。

 ハブにはいろいろな立場の人がいる。大きな会社で働いている人達、経営者、高名な教授や医者、政治家やプロのスポーツ選手、人気レストランのシェフや音楽家、教師や先生などなど。そういう人が、ハブではない無名の人達と直接結びつくことが出来るのがスモールワールドの特色なのだが、これからの時代は、彼らのそういう努力がますます必要とされるだろう。*

 また一方、ハブではない人達のスモールワールドへの積極的な関わりも欠かせない。今は知名度の高い人たちも昔は無名だったのだから、彼らに自分の思いをぶつけることに遠慮することはない。尊敬する有名人と知り合うことによって学び、堅実に自らの理想の実現に向かうならば、やがて将来あなた自身がハブの役割を果たすことになるに違いない。

 多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といった新しい産業システムを牽引するのは、リアルな「場」に集うそれら多くの人たち、そして彼らが作り出す数々のスモールビジネスの筈だ。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)   ウェブ社会をどう生きるか (岩波新書 新赤版 1074)


* 先回「複雑系の科学と現代思想 アフォーダンス」という本を紹介したので、共著者の一人である三嶋博之教授にご連絡したところ、まったく面識がないにも関わらず、即日丁寧なご返事を戴いた。一つの例として記すと共にご厚意に感謝したい。尚、アフォーダンスについては、運動と環境の相補性と並び、もうひとつのキー・コンセプトが、「異所同時性」という時間論だと考えている。そして時間論については、昨年あるイベント・セミナーの折、山口大学時間学研究所の井上愼一教授、千葉大学の一川誠准教授などに持論を聞いていただいた。これからもネットとリアルのスモールワールド性を糧に、こういった「知のネットワーク」を広げていければと思う。

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集合名詞(collective noun)の罠

2008年01月29日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 我々はよく、集合名詞(複数の構成員から成る集団・機関・組織などを一つの単位として現す名詞)を使って、これからのことを話すことがある。たとえば、「次の選挙はきっとA党が勝つだろう」とか、「うちの会社はまた人員削減をするだろう」などである。

 しかしこれは正確な言い方ではない。なぜなら、何かを成すのは個々人であって、人の集合体が何かをする訳ではないからだ。

 もちろんそういう言い方の意図は、将来に起こるであろうことを集合名詞に代表させて予測するということなのだが、問題なのは、そういう言い方が多くの場合、集団に対する自らの行為の影響力を過小評価し、「大勢は決まっているのだから、自分ひとりではどうせ結果を変えられない」という諦めを含むことだ。「次の選挙はA党が勝つだろう」とか、「うちの会社はまた人員削減をするだろう」という予測にもとに、「どうせ」選挙にいかなかったり、「どうせ」経営者に文句を言わなかったりする人は多い。

 我々は歴史を習う中で、過去の記述に集合名詞を使うことに慣れてしまった。はじめの例に関連させれば「A党は三年前の選挙に大勝した」、「B社は三年前に人員削減を行った」などなど。しかしこれは、それを行った個人を特定し、その名前を全て書くことが事実上不可能だから、簡便的に集合名詞で代替しているのであって、実際に「A党」や「B社」が何かを行ったのではない。集合名詞は行為の主体にはなり得ない。これまで人間社会で起ったことのすべては一人一人の判断と行動(あるいは非行動)の結果であり、これからもそれ以外はあり得ないということを我々は肝に銘じるべきだろう。これからのことを簡便的に集合名詞で決め付けてはいけないのだ。

 ビジネスの現場でも、本当のところ個人の力が全てである。何かを成し遂げるためには、社員一人ひとりが持てる力をフルに発揮する意外に道はない。スモールビジネスにおいては特に、社長以下社員一人ひとりの行為がそのまますぐに会社の業績・評価に繋がる。将来、それらの行為の軌跡を第三者が振り返ってみたときに初めて、「あの小さな会社は三年前に画期的な開発を行った」と(歴史的に)語られるのである。

 ところでこの、行為の主体があくまでも「個人」であるという立場は、常に思考の枠組みから自分というものを外さないという点で、複雑系の科学でいう「内部観測」の考え方に近いかもしれない。先回「生産と消費について」で書いた「生産」と「消費」の相補性と併せて、これからの社会科学には、環境に運動の意味を探る「アフォーダンス」の理論を援用していく必要がありそうだ。内部観測とアフォーダンスについては、「複雑系の科学と現代思想 アフォーダンス」佐々木正人/松野孝一郎/三嶋博之共著(青土社)を参照されたい。

アフォーダンス (複雑系の科学と現代思想)

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理念(Mission)と目的(Objective)の重要性

2007年12月26日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 会社を始める際には、なぜその会社を興そうとしたのかという理念(Mission)と、具体的に何を達成したいのかという目的(Objective)を、自分できちんと書いてみることが重要である。

 いくら小さくとも会社は一つの共同体だから、その理念と目的を、社員やお客様、さらには社会に対してわかりやすく伝えることが大切なのである。この二つをはっきりさせず、ただお金が儲かるからとか、人に頼まれたからという理由で始めても、会社という共同体は長続きしない。

 私も、自分の会社サンモテギ・リサーチ・インク(SMR)を始めるに際して、まずこの二つを書いてみた。書いてみると、あいまいな点やつじつまの合わないところが見えてくる。いろいろと書き直して、最終的に下記のようなものになった。

企業理念(Mission):
電子出版などの新しいエレクトロニクス・ネットワークビジネスを通じて、人間の知の拡大に貢献する

活動目的(Objective):
1.エレクトロニクス・ネットワーク業界におけるビジネスコンサルティング
2.電子出版などにおけるコンテンツ企画および作成
3.電子出版などにおけるコンテンツ配信、販売
4.その他上記関連業務

 30年近くエレクトロニクス関連の会社にいたと同時に、読書や物を書くのが好きだから、「電子出版」という分野に興味があった。しかし、せっかくスモールビジネスを立ち上げるのだから、ビジネスを成功させるというだけではなく、ビジネスを通して何か社会に貢献したかった。それが「人間の知の拡大に貢献する」という言葉になった。

 これまでのところ、電子ペーパーと呼ばれる、紙のようにフレキシブルなディスプレイを開発する会社のコンサルティングを行う一方、小説など電子書籍のコンテンツを作成してきた。また、仲間と一緒に「出版UD研究会」という、視覚障害など、さまざまな立場にある読者のニーズを生かした出版のユニバーサル・デザインを考える研究会の世話人を続けている。

 最近始めた「スモールビジネス・サポートセンター」では、起業しようとする人たちを様々な面からサポートするという新たな方法で、人間の知の拡大に貢献するつもりだ。

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スモールビジネスの時代

2007年12月05日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 最近、品質や安全の問題が頻発し、高度成長時代を支えた大量生産・輸送・消費システムが軋みをみせている。大量生産を可能にしたのは、遠くから運ばれる安い原材料と大きな組織だが、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といった、安定成長時代の産業システムを牽引するのは、フレキシブルで、判断が早く、地域に密着したスモールビジネスなのではないだろうか。

 産業システムを牽引するのは、いつの時代でも、明確な理念と目的を持った新しい起業家たちだが、ネットワークの発達によって、今の起業家は自分の組織をむやみに大きくしなくとも、(他社との連携によって)自らの理念と目的を達成できるようになったことが大きい。

 NHK「プロフェッショナル・仕事の流儀」第61回(2007年9月4日放送)に出演された、顧客の足に合わせた靴を作りこむ靴職人の山口千尋さんと、山口さんが経営する工房はそのいい例だと思う。
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/070904/index.html

 印象的だったのは、初めて山口さんの靴を履いたお客さんの、なんともいえない満足そうな表情と、山口さんから宿題を与えられて悩む若い靴職人の姿だ。これまでの大量生産・流通・消費時代には、自分の足に合った靴を比較的容易に作ってもらえるなどということは想像すらできなかった。

 大きい組織でも、内部を分割し、小組織の精神を取り入れてうまく経営している会社もある。しかし、大きい組織はそもそも同じものを大量に生産するのに適している。

アイデアと気力のある人は、日本全国津々浦々で、陸続とスモールビジネスを立ち上げようではないか。

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