ある本の読書から、その内容に関する興味が派生して、次々と関連した本を読み進めたくなることがある。本の最後に書かれている参考文献などから辿る場合もあるし、本屋の書棚を眺めて関連した本を選ぶ場合もある。
「
並行読書法」のように異なるテーマの本を同時並行的に読み進めるわけでもないし、同じテーマの本を読むのは同じでも、「
立体的読書法」のように、
1. Art
2. History
3. Natural Science
4. Social Science
5. Geography
といった5つの分野に拘るわけでもないから、これを新しく「関連読書法」と命名しよう。
たとえば「並行読書法」で取り上げた“白の民俗学へ 白山信仰の謎を追って”前田速夫著(河出書房新社)の場合。同書は、柳田國男や折口信夫などの民俗学を手懸りとして、白山信仰や白い神々の系譜を探求したものだが、私の場合、そのから縄文以来の古い神々への興味が派生した。以下、読み進めた関連書籍を、本の帯やカバー裏の紹介文と共に五つほど挙げてみよう。
1.“牛頭天王と蘇民将来伝説 消された異神たち”川村湊著(作品社)
(引用開始)
湮滅された最古の神々
各地に残る「蘇民将来子孫」の伝説。「備後風土記」にも描かれ、千数百年に亘って民衆に支持されてきたこの神々とはいったいどういう神か。土着的でありながら記紀神話とは異質の蕃神性を伴う神格の由来を辿り、日本人の魂の源泉を探る渾身の書き下ろし。
(引用終了)
<同書帯より>
2.“精霊の王”中沢新一著(講談社)
(引用開始)
<魂の原日本>を求めて縄文へと遡る思考の旅………日本という国家が誕生したとき、闇へと埋葬された「石の神」とは?芸能、技術、哲学の創造を司る霊妙な空間の水源をたどる。柳田國男『石神問答』の新たな発展がここにある!宿神の秘密を明かす奇跡の書金春禅竹『明宿集』現代語訳も収録!!
(引用終了)
<同書帯より>
3.“シリウスの都飛鳥 日本古代王権の経済人類学的研究”栗本慎一郎著(たちばな出版)
(引用開始)
蘇我氏は、どこから渡来してきたのか?!シリウスの影響下「聖方位」をもつ前方後円墳の存在や、そこに隠されているゾロアスター教的、ミトラ教的要素によって解明。「われわれはわれわれ自身を誤解してきた!」という、日本人の価値観や宗教観、日本古代王権の起源に迫る、著者渾身の書!
(引用終了)
<同書帯より>
4.“東西/南北考−いくつもの日本へ−”赤坂憲雄著(岩波新書)
(引用開始)
東西から南北へ視点を転換することで多様な日本の姿が浮かび上がる。「ひとつの日本」という歴史認識のほころびを起点に、縄文以来、北海道・東北から奄美・沖縄へと繋がる南北を軸とした「いくつもの日本」の歴史・文化的な重層性をたどる。新たな列島の民族史を切り拓く、気鋭の民俗学者による意欲的な日本文化論。
(引用終了)
<同書カバー裏より>
5.“呪いと祟りの日本古代史”関裕二著(東京書籍)
(引用開始)
ヤマト建国にさいし、なぜ「祟る王」が擁立されたのか。反逆者が築いた稲城、呪具ヒスイの抹殺、稲荷信仰の謎ほか、古代史のキーワード「呪いと祟り」の正体を明らかにする。
(引用終了)
<同書帯より>
以前「
繰り返し読書法」で書いたように、国の正史といわれる書物は、時の為政者の都合で書かれるので偽りも多いだろうから、正史には残されず、闇に葬られた風習、神々の系譜の中にこそ、歴史の真実が隠されている可能性が高い。白い神々、蘇民将来、石の神、聖方位、いくつもの日本、祟る王、などのキーワードから、闇に消えた日本列島の姿が浮かび上がる。
「
社会の力」の内でも、歴史は、そこに暮らす人々の脳神経回路の組織化に根っこのところで多大な影響を与えているはずだ。日本人の脳や言葉の特徴はどのようにして生まれてきたのか、それを探る上でも、これからも歴史の探求を続けていきたい。
さて、この読書法シリーズ、「並行読書法」、「繰り返し読書法」、「立体的読書法」、「関連読書法」と、なにやらもっともらしく並んだわけが、そもそもこの企画、「読書法」というタイトルに託(かこつけ)て、愛読書を紹介するのが狙いでもあるから、今後さらに違う「読書法」がでてきたら、微笑みながら「ああ、茂木さん今度はこんな本を紹介したいのか」と、こじつけられたタイトルと共に、中身の本の紹介を楽しんでいただければと思う。