『しなやかな日本列島のつくり方』藻谷浩介著(新潮社)は、『里山資本主義』(角川oneテーマ21)の共著者藻谷氏による、日本再生へ向けた対談集だ。対談の相手は、現場に腰を据えた各分野の専門家7人。
第一章「商店街」は起業家精神を取り戻せるか――新雅史(社会学者)
第二章「限界集落」と効率化の罠――山下裕介(社会学者)
第三章「観光地」は脱・B級志向で強くなる――山田桂一郎(地域経営プランナー)
第四章「農業」再生の鍵は技能にあり――神門善久(農業経済学者)
第五章「医療」は激増する高齢者に対応できるか――村上智彦(医師)
第六章「赤字鉄道」はなぜ廃止してはいけないか――宇都宮浄人(経済学者)
第七章「ユーカリが丘」の奇跡――嶋田哲夫(不動産会社社長)
ということで、商店街、限界集落、観光地、農業、医療、鉄道、街づくりについて、現状を踏まえた上で、21世紀の展望を語る内容となっている。
『里山資本主義』については、以前「里山システムと国づくり」の項でも紹介したことがあるが、藻谷氏は、最近の新聞インタビュー記事の中で次のように語っている。
(引用開始)
「日本には偶然にも自然環境に恵まれた住みやすい場所にある。その結果、金銭換算できない資源が多く、経済成長していない田舎でも生きていける。そのことを計算に入れないで日本はダメだダメだと言っているのを見直しましょうという話です」
「マネー資本主義の最大の問題は、お金をもうけるのに未来から奪い取るやりかたをすること。簿外資産を消費して蓄財している。簿外資産は地下資源や水、大気、そして子どもです」
「未来から子どもを奪い取り、未来に汚染物質の借金を残している。里山資本主義では資源の循環、再生が可能な範囲でほどほどに稼ぐ」。
(引用終了)
<東京新聞 3/30/2014>
この対談集において、藻谷氏はこういったご自分の考えを、分野別に専門家と共に検討し、具体的な解決策を見出そうとする。その意味でこの本は、『里山資本主義』の続編、実践編といっても良いだろう。地域密着型スモールビジネスの起業を目指す人にとっても、大切なヒントが詰まっていると思うので、是非手にしてみていただきたい。
尚、新雅史氏の著書『商店街はなぜ滅びるのか』(光文社新書)については「近代家族」の項で、神門善久氏の著書『日本農業への正しい絶望法』(新潮新書)については「日本の農業」の項で、それぞれ紹介したことがある。併せてお読みいただければ嬉しい。
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