先日「スモールワールド・ネットワーク」の中で、「これからの多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術時代は、スモールワールド・ネットワークの考え方が重要になるだろう」と書いた。しかし、世界中のどの人へもすぐに(6つのステップ以下で)コンタクト出来るのは良いとして、そもそも何を目的としてコンタクトするのか、が重要なのはいうまでもない。
インターネットを活用した、昨今流行のターゲット・マーケティングやOne-to-Oneマーケティングの手法はまだ、相手の過去の消費動向を分析して、関連ある商品の宣伝を自動的に送りつけるというお手軽な発想のものが多い。しかし相手にとっては、関連商品の宣伝は迷惑なだけかもしれない。せっかく世界中のどの人へもすぐにコンタクト出来る社会になったのに、実情はお金目当ての迷惑メールが蔓延しただけ、というのでは情けない。そこで、私は声を大にして、「スモールビジネスはお客さまの生産活動に注目せよ」と提唱したい。
ここでいう「生産活動」とは、単にお金を稼ぐことだけではなく、仕事やボランティア活動などの、他人のために役立つ行為全般を指し、「消費活動」とは、単なる金銭的な消費活動だけではなく、食事、睡眠、休暇などの自分のための行為全般を指す。すなわち、他人のために役立つ行為を、生産的な行為すなわち「生産」、自分のための行為を「消費」呼ぶ訳だ。
そう定義してみると、人は社会の中で、この二つの行為、「生産」と「消費」とを繰り返していることが分かる。そして、人の「消費活動」は、その人にとって、次の「生産活動」のための準備であることが分かる。ある商品(あるいはサービス)の購入は、それを買ったお客様にとって、次の自分の生産活動に役立てるためなのだ。
簡単な例を挙げて考えてみよう。たとえばある人がネットで手作りのランプを売っていたとしよう。このランプ屋さんを仮にAさんとする。あるお客さんがランプを一つ買った。そのお客さんをBさんとしよう。Aさんは新作が出来るたびにBさんに宣伝メールを送るのだが返事がない。
しばらくしてAさんはふとあることを思い出した。それはBさんがランプを買うときに「新しい部屋で使うので」と書いてくれていたことだ。そこでAさんは「スモールビジネスはお客さまの生産活動に注目せよ」という提言を思い出して、自分の商売とは直接関係ないけれど、友人でインテリア・コーディネーターのCさんをAさんに紹介した。
しばらくしてBさんから返事が来る。インテリア・コーディネーターは間に合っているけれど、自分はアクセサリーのデザイン・製作をしているので、手元が良く見える拡大鏡を探している、とのことだ。たまたまCさんの友人に鏡屋(Dさん)がいたのでCさんから紹介してもらう。
さて、それからしばらくたったある日、BさんからAさんに、拡大鏡の御礼とともに、アクセサリーを買ってくれたEさんがおしゃれなランプを探している、との話が舞い込んだのである。
もしAさんが、ランプを買うというお客の消費行動だけに注目していたら、けっしてEさんの話には繋がらなかっただろう。AさんがBさんの生産活動に目を向け、友人のCさんを紹介したことで、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんがそれこそ「スモールワールド・ネットワーク」で繋がったのである。
これからは、省資源の時代でもある。そのためには人々が助け合いながら暮らしていくことが大切だ。共に助け合いながら生きていくことは、相手の「生産活動」を理解することから始まる。結果としての「消費」だけを見ているのでは、相手が次に何を「生産」しようとしているのか分からない。そのお客様は何のためにその商品を買ったのかということ、すなわち、そのお客様の仕事(生産活動)を知り、引き続きそのお客様の生産活動をサポートする姿勢が求められるのだ。
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