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nation と state

2014年01月21日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 『老楽国家論』浜矩子著(新潮社)を読んでいたら、nationとstateに関して、次のような文章があった。

(引用開始)

 国民国家を英語でいえば、nation stateである。nationが国民すなわち人々だ。stateが国家である。国民国家という日本語を使うと、どうも、国民と国家が表裏一体・渾然一体となっている感が強くなる。だが、nation stateと言い替えてみると、いささかイメージが違う。人々の集団としてのnationがある。その集団を構成員とし、その集団のために存在する居場所と機構としてのstateがある。こんな感じである。

(引用終了)
<同書 81ページ>

nationとは、文化や言語、宗教や歴史を共有する人の集団、すなわち民族や国民を意味し、stateとは、その集団の居場所と機構を意味するという。日本は、歴史的な経緯から「民族・国民」と「国家」の一体性が強いが、二つは必ずしもイコールではないわけだ。

 以前「里山システムと国づくり」の項で、「民族国家」という概念は20世紀の遺物なのではないだろうか、と述べたけれど、ここで、改めてnation(民族・国民)とstate(国家)について考えてみたい。

 まずnationについて考えてみよう。このブログでは、21世紀はモノコト・シフトの時代、すなわち、モノよりもコトを大切にする生き方・考え方の時代だと指摘してきた。それは、20世紀の大量生産・輸送・消費システムと、人のgreed(過剰な財欲と名声欲)が生んだ“行き過ぎた資本主義”に対する反省として、また、科学の「還元主義的思考」による“モノ信仰”の行き詰まりに対して生まれた、新しい時代のパラダイムだ。

 人々が共有する価値観を紡ぐ“コト”は、常に「場所」において生じる。従って、モノよりもコトを大切にする集団の規模は、“モノ信仰”の時代よりも、小さなものになると思われる。勿論、集団の文化や言語、宗教や歴史、あるいは経済状況によってその規模はまちまちだろうが、総じて、今のnationという括りは、これからより分裂圧力を高めると思われる。スペインのバスクとカタルーニア地方、イタリアの北部同盟、イギリスのスコットランド、日本の沖縄などなど。そもそも1991年のソ連崩壊はその前兆だったのかもしれない。

 次にstateについて考えてみよう。nationと違い、stateは人々の「居場所・機構」である。従ってそれは、人々の間で合意された「理念と目的」に基づいて、合理的に統治・運営されなければならない。『老楽国家論』で浜氏は、

(引用開始)

 国家とは、基本的に国民を顧客とするサービス業だ。顧客満足度の極大化こそ、国家の仕事だ。

(引用終了)
<同書 88ページ>

と述べておられる。今は、ヒト・モノ・カネが国境を越える時代だ。nation(民族・国民)という括りへの分裂圧力と、ヒト・モノ・カネの流動性の強まり。そういう時代、state(集団の居場所・機構)の統治は、昔に較べて、遥かに複雑なものにならざるを得ないと思われる。その一例が欧州連合(EU)の統一通貨政策だろう。ヒト・モノとマネー管理を分離することで複雑な時代に対応しようとしているわけだ。

 これからのstateの統治のあり方は、他の地域でも、EU方式の延長線上にあるのではないだろうか。すなわち、ヒト・モノ・カネ、各層において、その「居場所と機構」を複合的に管理・運営すること。それが、これからのstateの統治に求められるのではないだろうか。ヒト・モノ・カネを一元的に管理・運営しようとする(民族国家のような)統治は、これからの時代にそぐわないものになってきていることは確かだと思われる。

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posted by 茂木賛 at 10:35 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

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