『「流域地図」の作り方』岸由二著(ちくまプリマー新書)が出た。副題に「川から地球を考える」とある。このブログでは、「山岳と海洋とを繋ぐ河川を中心にその流域を一つの纏まりとして考える発想」=流域思想(もしくは流域思考)を、「流域思想」や「流域価値」の項などで紹介してきたが、これはその提唱者である岸氏の新著で、地図作りという遊びを通してその思想を伝えようという、いわば流域思想の入門書だ。まずは新聞の紹介記事によって本の内容を紹介しよう。
(引用開始)
温暖化や生物多様性危機で変貌する地球環境について、川を軸にして広がる「流域」から考察した環境革命の入門書。
まずは身近な川で流域地図を作ってみる。道路地図などを用意して、自宅周辺の川を探し、源流と河口をたどる。すると川が最源流につながる本流に支流が合流して大きな流れになっていることが分る。その本流と支流を合わせ水域といい、水域を中心にして広がる雨の集まる大地の範囲を「流域」と定義するそうだ。その流域を一つの単位として、エネルギーや流通の要としての川の役割、生物たちの食物連鎖、そして水循環から地球規模の課題までを考察する「流域思考」の勧め。
(引用終了)
<日刊ゲンダイ 12/12/2013>
地図といえば、私は相当なマップラバーで、パノラマ地図や立体地図に目がない(「立体地図」)。流域地図は、山岳と海洋とを繋ぐ河川を中心にその流域を一つの纏まりとして描くわけだから、それこそパノラマや立体地図に相応しい。日本の109の一級河川(やその他の川)を、源流から、支流、河口まで辿る立体地図があったらどんなに有意義で、且つ楽しいことだろう。しかし、岸氏も本書で述べているが、市販の一般的な流域地図はまだ存在していないようだ。
(引用開始)
市販の一般的な流域地図はまだ存在していないので、いまはまだ、必要とする個人や団体などが自力で描くほかはない。もっとも有望なインターネットの地図サービスの領域でも、本文でもふれた「Yahoo!」の水域マップまでが現状で、どこでもボタンひとつで地域の流域配置がわかるようなサービスは、まだない。
(引用終了)
<本書 153ページ>
インターネットを使った流域地図サービス、視点を360度自由に操作したり、拡大や縮小が可能な流域立体地図を作成・提供するのは、技術的にはそれほど難しくないはずだ。「流域価値」の項で述べたように、流域によって生み出される分散型エネルギー、街づくり、文化価値などは、モノコト・シフト時代における重要な基盤となる。そういうビジネス(流域地図作成・提供)を立ち上げたいとお考えの出版社、もしくは起業家がいれば、私も是非お手伝いしたいと思う。
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