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勝負の弁証法 II 

2013年12月17日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 前回の「勝負の弁証法」の項では、勝負の弁証法の適用範囲を、「勝負事=明示されたルールの元で戦うゲームや競技」に限定して話を進め、勝負事には合意された「理念と目的」が大切だということと、敗者とその戦いのプロセスは、つねに勝者の内に包摂されなければならない、ということを論じた。今回は、それ以外の戦い、すなわち、ルールがあって無き様な国同士の戦争や、そもそもルールのない裏切りに満ちた抗争、正当防衛、自然界の生存競争、生物進化などに話を広げ、弁証法ロジックとの関係について考えてみたい。

 まず、戦争や抗争について。明示的なルールのある無しは、「ルールが無い」ことがルールだと考えれば、ゲームや競技と同じ土俵に乗せて考えることができる。しかし、勝負の弁証法が通用するのは、その勝負に合意された「理念と目的」が存在する場合である。戦争や抗争に(一方的な「理念と目的」はあり得ても)当事者双方に合意されたそれがあるとは考えにくい。従って、戦争や抗争は、弁証法ロジックの対象にならないと思われる。単なる「喧嘩」だ。

 次に、正当防衛について。降りかかった火の粉を払う行為には、法律的に認められた正当防衛と、そうでない場合とがあろう。前者には法律という「ルール」があり、後者にはそれが無い。しかし、いづれの場合でも、当事者同士は加害者と被害者の関係だから、そもそも合意された「理念と目的」などある由もなく、従って、これも弁証法ロジックの対象にはならないと思われる。

 自然界の生存競争について。生存競争には、弱肉強食など(明示されてはいなくとも)一定のルールがあることが知られている。しかし、自然界そのものに合意された「理念と目的」があるかどうかは「神のみぞ知る」だ。

 ここまで検証してくると、勝負における弁証法ロジックは、ゲームや競技に限定された話であったように思える。では生物の進化はどうか。

 生物の進化に、明示的ルールや「理念と目的」など無いように見える。しかし進化には、「何かと何かが作用しあって新しい何かが生まれる」という発展構造がある。生物進化のみならず、自然界の諸々の出来事は、「何かと何かが作用しあって新しい何かが生まれる」という“コト”そのものである。実は、人智が考え出した「弁証法ロジック」自体、自然界の出来事や生物進化の様子を模倣したものなのだ。だから、大きく考えれば、生存競争もそういう“コト”の一局面だし、人の喧嘩や正当防衛行為ですら、社会において起こる“コト”の一部であると云うことが出来る。

 さて、自然界に、勝ち組と負け組みはない。人類が勝ち組だとする考え方は浅はかな驕りであって、いつか人が住めない地球環境が齎されれば、人類は簡単に滅ぶだろう、嘗て恐竜が(巨大隕石によって?)滅んだように。勝ち組と負け組みがないのは、自然には(神を持ち出さない限り)明示的な「理念と目的」が無いからだ。「集団の時間」や「自然の時間」の項で述べたように、自然の時間は無限大(t = ∞)だから、限定的な「理念」や「目的」を決めようがないわけだ。

 ここまで考えて来ると、勝負における「理念と目的」の設定は、「都市」(人の脳が作り出した様々な機能・構造)においてのみ意味を持つことが分る。勝負の弁証法は、様々な戦い、争いの中で、「都市」において、その構成員によって合意された「理念と目的」があるものにのみ適応されるロジックなのである。

 「理念と目的」(の設定)は、極めて都市的なものである。それは、生存競争や生物進化にはない特色だ。勝負事において(勝つ為の努力は勿論大切だが)負けることは問題ではない。再チャレンジへの闘志さえ持ち続ければ、人は幾度でも勝負に参加できる。そういえば、選挙も勝負事の一つだ。健全な社会であれば、選挙に勝った候補者は、負けた候補者と、その他全有権者を代表する立場になる筈だ。勝者は、敗者およびそのプロセス全てを包摂し、「理念と目的」をより高いレベルへ押し上げる役割を付与されたと考えるべきである。だから、そこでは、勝ち逃げが一番悪いということになる。

 プレイヤーの中には、勝つと責任がかかってくるから、それを回避しようとわざと負ける者もいる。「理念と目的」をより高いレベルへ押し上げる役割を付与されることに耐えられないからだ。それを人は「敗北主義者」という。勝ち逃げと敗北主義者。どちらも戦いの場を選び損ねた卑怯者たちの謂いである。

 勝負が“コト”であってみれば、“モノコト・シフト”の時代、世界中でスポーツ・イベントやゲームなどがますます興隆するであろうことは容易に想像できる。ワールドカップ、オリンピック、各種コンテスト、チェスや囲碁、将棋、ネットゲームなどなど。それがスポーツやゲームに留まっている分には良いが、greed(過剰な財欲と名声欲)が関わってくると、抗争や戦争にエスカレートする危険性もある。試合の開催が利権の巣窟と化すわけだ。こういう時代だからこそ、今一度、戦いの「理念と目的」をよく見定めようではないか。

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posted by 茂木賛 at 10:58 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

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