「スモールワールド・ネットワーク 世界を知るための進科学的思考法(原書題Six Degrees The Science of a Connected Age)」という本を書いたのは、ダンカン・ワッツというオーストラリア生まれの科学者で、複雑系ネットワーク理論はその後もさらに広がりを見せている。原書は2003年、翻訳書は2004年に出版された。
「スモールワールド・ネットワーク」は、任意に選んだ相手への到達ステップが少ないこと(小さい平均的距離)と、少人数間の密な人間関係(高いクラスター性)を前提としたネットワーク理論である。
先日「スモールビジネスの時代」の中で、「ネットワークの発達によって、今の起業家は自分の組織をむやみに大きくしないでも、(他社との連携によって)自らの理念と目的を達成できるようになった」と書いたが、念頭にこの「スモールワールド・ネットワーク」のことがあった。
大量生産・流通・消費時代は、正規分布に基づいた考え方が主流だったが、これからの多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術時代は、スモールワールド・ネットワークの考え方が重要になるだろう。
このネットワークが成り立つミソは、「小さい平均距離」、「高いクラスター性」と共に、(高いクラスター性を損なわない範囲で)遠く離れた人同士の繋がりが一部存在することなのだが、インターネットの発達が遠く離れた人同士を結びつける訳だ。
直感的には、幾らインターネットの時代だといっても、「全世界の人々とたった6つのステップで繋がっている」とはなかなか思えない。しかしそれは、遠慮や諦め、面倒くさいと思ってしまう消極性故であって、この理論は、当たって砕けろという情熱と行動力があれば、世界中のどの人へもすぐに(6つのステップ以下で)コンタクト出来ることを示している。

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