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日本語の勁(つよ)さと弱さ

2013年10月08日 [ アート&レジャー ]@sanmotegiをフォローする

 今年も夏休みを蓼科にある兄の山荘で過ごすことができた。今回山へ持っていった本は、

“(株)貧困大国アメリカ”堤未果著(岩波新書)
“ピスタチオ”梨木香歩著(筑摩書房)
“アマン伝説”山口由美著(文藝春秋)
“占領史追跡”青木富貴子著(新潮文庫)
“文人荷風抄”高橋英夫著(岩波書店)
“福島原発の真実”佐藤栄佐久著(平凡社新書)

など。去年(「長野から草津へ」)同様、平行読書法の要領でこれらの本を読み進めた。

 “(株)貧困大国アメリカ”については、前回「地方の時代 II」の項で紹介、引用した。“ピスタチオ”は、「両端の奥の物語」の項で紹介した梨木香歩さんのエッセイ“水辺にて”(文庫本)と同時に出版された小説。日本とアフリカを精霊が繋ぐ不思議な物語だ。「ヨーロッパ人が最初にアフリカと出会ったとき、もっと互いの深いレベルで働いている何かを補完し合うような形の接触の仕方があったはずなのに、結局それはなされなかった。」(17ページ)という一文がある。彼女は、日本とアフリカの出会いを、「精霊」という互いの深いレベルで繋ごうと試みたのだろう。最後の“ピスタチオ―死者の眠りのために”という短編が味わい深い。

 “アマン伝説”は、ホテルや旅をテーマにしたノンフィクション作家による新作。取材が行き届いていて、アマンリゾーツなど、東南アジアのリゾート地図に私もだいぶ詳しくなった。“占領史追跡”は、ニューズウィーク東京支局長パケナムの日記を通して日本の戦後政治の貴重な一面を描く。

 “文人荷風抄”は、永井荷風とフランス語の弟子阿部雪子との交流を描いた評論。章立ては「文人の曝書」「フランス語の弟子」「晩年の交友」となっているけれど、眼目は真ん中のフランス語の弟子だろう。雪子(と荷風)の写真が本の絶妙な場所に載せてあるのが秀逸。

 “福島原発の真実”は、「アッパーグラウンド II」で検証した原発事故の発端となる、福島原発そのもの(特に3号機のプルサーマル導入)に対する前福島県知事による告発だ。「原発全体主義政策」という、日本の「過剰な財欲と名声欲、そしてそれが作り出すシステムの自己増幅」に対する告発書である。こういう優れた政治家の抹殺を許す土壌が今の日本(語)にはある。本書から一節を引用しておきたい。

(引用開始)

 日本では、使用済み核廃棄物――つまり、使用済み核燃料の処分方法について、歴史の批判に耐える具体案を持っている人は誰もいないのである。責任者の顔が見えず、誰も責任を取らない日本型の社会の中で、お互いの顔を見合わせながら、レミングのように破局に向かって全力で走っていく、という決意でも固めているように私には見える。大義も勝ち目もない戦争で、最後の破局、そして敗戦を私たち日本人が迎えてからまだ七〇年たっていない。
 これこそが「日本病」なのだと私は思う。

(引用終了)
<同書 205−206ページ>

 「両端の奥の物語」と「原発全体主義政策」。この両方を生み出す日本語の勁(つよ)さと弱さについて、改めて考えさせられる夏休みの読書だった。また、日本とアフリカ、フランス、アメリカ、東南アジアなど、地域間に起こるさまざまな“コト”の連携を思う読書ともなった。

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posted by 茂木賛 at 10:32 | Permalink | Comment(0) | アート&レジャー

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