前回の「若者の力」の項で紹介した“地方にこもる若者たち”阿部真大著(朝日新書)に、「ギャル的マネジメント」という言葉が出てくる。多様性への対応の四段階、
第一段階 「抵抗」 違いを拒否する <抵抗的>
第二段階 「同化」 違いを同化させる・違いを無視する <防衛的>
第三段階 「分離」 違いを認める <適応的>
第四段階 「統合」 違いをいかす・競争的優位性につなげる <戦略的>
を踏まえて、著者は「ギャル的マネジメント」について次のように語る。
(引用開始)
流動性・多様性の増す現代社会において、若者たちは、「分離」(違う者同士互いに干渉し合わない)の段階のハイポコミュニカティブ(過小にコミュニケーション志向の)な傾向と、「統合」(違う者同士がぶつかり合い落としどころを探っていく)の段階のハイパーコミュニカティブ(過剰にコミュニケーション志向の)な傾向とに二極化していると考えられる。前者は男性に、後者は女性に強く見られる傾向であるが、これらはともに他者の違いを認めるものである。
「ギャル的マネジメント」とは、身近な人間関係の多様性に意識的で、同質的な仲間集団に対する愛着心は強いながらも異質な他者とのコミュニケーションを厭わず、謙虚に集団をまとめあげていくような仕切り方のことを指す。これは、「分離」から「統合」の段階へとステップアップするのに必須な資質であり、つまりは内にこもる若者を外に引き出すコツを導く鍵であり、「新しい公共」の構築への鍵である。
(引用終了)
<同書 198ページより>
「ギャル的マネジメント」とは、「男性性と女性性 II」の項で述べた「女性性に基づく関係原理」と「男性性に基づく所有原理」とを、上手にバランスさせる能力だと思われる。「森ガール」の更なる進化系といえるかもしれない。人は性差に拘らず、ある比率で、男性脳=「所有原理」、と女性脳=「関係原理」の両方の機能を持っている。だから「ギャル的マネジメント」は女性だけでなく、男性にも可能なマネジメント・スタイルである。
日本はこれまで、社会や人々は「世間」という関係原理、政治やビジネスは「律令」という所有原理によって形作られてきた。「“シェア”という考え方 II」の項で述べたように、モノコト・シフト後の日本は、社会や人々は「世間」に縛られすぎることなく「所有原理」を自覚して精神的に自立すること、政治やビジネスにおいては「律令」主義を排して「関係原理」を取り入れること、が必要になってくる。
モノコト・シフトのパラダイム項目は、
私有 → 共同利用
独占、格差 → 分配
ただ乗り → 分担
孤独 → 共感
世間 → 社会
もたれあい → 自立
所有 → 関係
モノ → コト
といったことだ。多様な価値観の渦の中で、「ギャル的マネジメント」は、新しい日本の構築に欠かせない力なのであろう。ただし多様性を認めるには、人々が自立していなければならない。そのためには「新しい日本語」が必要になる筈だ。
この記事へのコメント
コメントを書く