夜間飛行

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時空の分離

2013年08月09日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 “「単位」の本質”潮秀樹著(技術評論社)という本を読んでいたら、次のような文章があった。

(引用開始)

 アインシュタインは時間と長さがある意味で同等であるというきわめて奇抜な考えに基づいて、相対性理論(特殊相対性理論)を作り上げました。時間と長さが同等であれば、空間の3つの座標軸x軸、y軸、z軸に加えて、時間軸を考える必要があります。空間の3次元に対して、時間を加えた4次元を考えることになります。

(引用終了)
<同書 87ページより>

ここにある「きわめて奇抜な考え」という言葉が興味深い。

 アインシュタインの特殊相対性理論は、「どの慣性系でも物理法則は同じ形で表される」という相対性原理と、「ある慣性系から見たとき、光源が静止しているか動いているかにかかわらず、光速cは一定である」という光速一定の原理の二つから導かれた。

 光速cは一定であるから、光速の到達時間と長さは同等であり、時間と長さが同等であれば、空間の3つの座標軸x軸、y軸、z軸に加えて、時間軸cを考えることができ、世界は、それまでの空間の3次元に、時間を加えた4次元で表現されることとなった。

 ここで何が起こったのか。それはこれまで言われてきたような「相対性原理の定立」だけではない。そこで起こったのは「時空の分離」ではないだろうか。

 前回「再び存在のbeについて」の項で述べたように、存在のbeは、自分をその環境から切り離して物事を俯瞰することを可能にするから、デカルトを始めとする西洋の近代科学者たちは、環境から自分を切り離し、空間を3つの座標軸x軸、y軸、z軸によって表現した。そして、その座標軸の中の“モノ”を数理的に計算し、分解・合成することでエネルギーを取り出し、文明を発展させてきた。“モノ”信仰時代の始まりと言っても良いだろう。

 しかし、当時の空間3次元は、そこに流れる時間の存在を前提としていた。空間と時間とはつねに一体のものと認識されていたから、誰も空間3次元に時間要素を書き加える必要など感じなかった。縦・横・奥行きの3次元空間は、3次元「時空」でもあったわけだ。

 アインシュタインは、どの慣性系でも物理法則は同じ形で表されるが、光速という時間はどこへいっても一定だから、空間3次元と時間とは分けて表現しなければならないとした。ここで、時間はそれまでの空間からはじき出されたのだ。

 すなわちアインシュタインは、世界を、それまでの時間を暗黙裡に含む空間3次元ではなく、時間を含まない空間3次元と時間を加えた4次元で表現した。当時は、誰も宇宙の寿命など考えなかったから、ほぼ全ての科学者がこの新しい宇宙表現のレトリックに同調した。

 夏目漱石がロンドンを離れた1902年からわずか3年後、1905年に発表されたこの「きわめて奇抜な考え」が20世紀を席巻した。

 時空一体から時空分離へ、それがアインシュタインの特殊相対性理論の新しさだったのだと思う。そこから、「時間を抜いた“モノ”」が科学の主役に踊りだした。いや、科学のみならず「時を抜いた“モノ”」は、近代文明の時代のパラダイムとなっていった。

 21世紀を迎え、世界は「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」(略してモノコト・シフト)の時代を迎えている。「時を含んだ“コト”」を研究するには、まずこの「時空の分離」を見直す必要があると思うがいかがだろう。

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posted by 茂木賛 at 10:04 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

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