夜間飛行

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酵素の働きと寿命との関係

2013年06月18日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 “「酵素」の謎”鶴見隆史著(祥伝社新書)という本を興味深く読んだ。副題には“なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか”とある。まず新聞の紹介文を引用しよう。

(引用開始)

人間の寿命や病気の原因は体内酵素の量やバランスによって決まる。研究の歴史はまだ浅いが、酵素の働きや身体との因果関係は近年になって次第に解明されてきた。第一人者が最先端の知識と情報を駆使して酵素の謎を解き明かし、加熱食の危険性や誤った常識、腸の大きな役割など、病気を防ぐための具体的な対処法を説き、酵素断食の実践も紹介。

(引用終了)
<東京新聞 3/31/2013>

 よく3大栄養素とか5大栄養素などというけれど、この本によると、栄養素は全部で9つあるという。糖質・タンパク質・脂質がまず3大栄養素。それにビタミン・ミネラルを加えて5大栄養素。さらに食物繊維・水・フィトケミカル(植物中にあるポリフェノールなどの天然化学物質)で8つ。そして9つ目がこの「酵素」というわけだ。先日「活性酸素」の項で、健康に関する項目を纏めたけれど、この本を読むと「酵素の働き」も欠かせないことがよく分かる。

 酵素には、人体にもともとある潜在酵素(体内酵素)と外部から取り入れる体外酵素とがあり、体内酵素には、生命活動を支える代謝酵素と食物の消化を助ける消化酵素、体外酵素には、これも食物の消化を助ける食物酵素と発酵活動を支える腸内細菌の酵素があると著者はいう。短鎖脂肪酸の役割、人体の生理リズム、酵素を摂る方法など有用な指摘が多々あるが、内容については本書をお読みいただくとして、ここでは、酵素の働きと寿命との関係について考えてみたい。

 老化の原因には「酸化ストレス説」「テロメア説」「老化遺伝子説」などいろいろとあるが、著者はその根本原因として、「酵素寿命説」を唱えておられる。著者はまず前の三つを簡単に紹介したあと、

(引用開始)

 しかし私は、紹介したこれらの三つは根本原因ではなく、現象の一部と考えています。酸化も、テロメアも、遺伝子も、すべて酵素が関係していますが、もっとも大きな原因は「酵素寿命説」です。
 一生に一定量しかない酵素が徐々に失われていくのが老化で、尽きる時が死を迎える時です。そのため、酵素の浪費は絶対に避けなければならないのです。

(引用終了)
<同書 193−194ページ>

 ここでいう酵素は、先程の分類でいうと人体にもともとある潜在酵素(体内酵素)を指し、これは一生に一定量しかないから、老化予防のためには、できるだけそのうちの代謝酵素を温存しておいた方が良いという話になのだが、ここで私は、以前「集団の時間」の項で紹介した“ゾウの時間 ネズミの時間”本川達雄著(中公新書)を思い起こした。どいうことか説明しよう。

 鶴見氏は、本書の中で「ラブナーの法則」というものを紹介する。この法則は、潜在酵素の消耗が動物の短命に結びつくことを証明したもので、動物の心臓の鼓動は代謝酵素を使うから、その寿命は、代謝酵素の消耗度に反比例することになるという。心臓の鼓動には代謝酵素がいるが、代謝酵素は一生に一定量しかないから、代謝酵素を多く使うほど、寿命が短くなるというわけだ。

 一方、本川達雄氏は、“バク論 人の死なない世は極楽か地獄か”池田清彦監修(技術評論社)の中の記事で、「動物の時間」は、体重のおよそ1/4乗(0.25乗)に比例し、「動物のエネルギー消費量」は、体重のおよそ1/4乗に反比例する。だから、動物において時間の速度(1/時間)はエネルギー消費量に比例する。すなわち、エネルギーを使うほど時間が早く進む、と書いておられる(同書17ページ“「人口長寿」の人生をいかに生きるか”より)。

 心臓の鼓動にはエネルギーが必要だ。エネルギー消費は代謝酵素を使うことに繋がる。本川氏のいう「動物の時間」とは動物の寿命のことだから、それがエネルギーを使うほど早く終わるということと、鶴見氏のいう、寿命が代謝酵素の消耗度に反比例することとは、同じことを別の視点から言っていることになる。動物のサイズとその代謝酵素量は、寿命を介して互いに比例しているわけだ。

 このブログでは、“モノからコトへ”のパラダイム・シフト(モノコト・シフト)について書いているが、動物の寿命とそのサイズ、代謝酵素量の比例相関は、“コト”のおこる時空(時間と空間)におけるエネルギー量とそのサイズ、構成要素との相関に、興味深い示唆を与えているように思う。

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posted by 茂木賛 at 10:18 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

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