夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


小さな町

2013年05月21日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 “スローシティ”島村菜津著(光文社新書)という本を興味深く読んだ。サブタイトルに“世界の均質化と闘うイタリアの小さな町”とある。まず本カバー裏の紹介文を引用しよう。

(引用開始)

日本を覆っていく閉塞感の一つに、私は、生活空間の均質化というものがあるように思う。郊外型の巨大なショッピングモール、世界中同じような映画ばかり上映するシネコン、画一的な住宅街、駅前や国道沿いに並ぶチェーン店……。だが、私たちにこの世界の均一化から逃れるすべがあるのだろうか。世界のどこにもない個性的な町など、おとぎ話に過ぎないのか。
そんなことを自問しながら、私はイタリアの小さな町を訪ねた。スローシティやイタリアの美しい村連合に共鳴した小さな町、ショッピングモールの締め出しに成功した町、フェラガモが創り上げた大農場やオーガニックの父と呼ばれた人物の住む村―――。
グローバル化社会の中で、人が幸福に暮らす場とは何かということを問い続け、町のアイデンティティをかけて闘う彼らの挑戦に、その答えを探る。

(引用終了)

 先日「世界の問題と地域の課題」の項で書いた、「世界の問題」の一つの表質形態が「世界の均質化」だと思う。「過剰な財欲と名声欲、そしてそれが作り出すシステムの自己増幅」は、産業システムとして効率の良い大量生産・輸送・消費へ向かうから、結果として生活空間の均質化を招く。この本のサブタイトルにある“世界の均質化と闘うイタリアの小さな町”という言葉は、この世界問題に対処するイタリア人たちの方法の一つが、「小さな町」を作ることだと語っている。

 一方、世界は21世紀に入り“モノからコトへ”のパラダイム・シフト(モノコト・シフト)の時代を迎えている。「場所のリノベーション」の項などで述べたように、「世界の均質化」は「コトの起こる場所」の喪失でもあるわけだから、「小さな町」づくりは、モノコト・シフトの最前線でもあることになる。

 私はイタリア社会の事情(歴史や経済、地理や人口構成など)に明るい訳ではないけれど、「カーブアウト III」の項などで紹介した“ボローニャ紀行”井上ひさし著(文藝春秋)を読むと、イタリア地方都市の自治に関する伝統の一端が伺える。日本も明治の開国から150年近く経ったわけだから、そろそろ真剣に過去を見直して、新しい国づくりを考える時期に来ているのではないだろうか。日本でも、このイタリアの試みは大いに参考になるのではない筈だ。島村氏も、本の最後に「場所のセンスを取り戻すための処方箋」と題して、日本でも応用できる没場所化を克服するためのポイントを箇条書きにまとめておられる。詳細は本書をお読みいただくとして、以下そのポイントを列挙しておこう。

1.交流の場をどんどん増やそう
2.魅力的な個人店は、意地でも買い支えよう
3.散歩をしながら、地元のあるもの探しをしよう!
4.ゆっくり歩いて楽しめる町を育てよう!
5.どうせやるなら、あっと驚く奇抜な祭りを!
6.水がただで出てくるありがたさを今、噛みしめよう!
7.エネルギー問題は、長い長いスパンで考えてみよう
8.そろそろ、人を惹きつけるような美しい町を創ろう

ということで、話はこのブログのカテゴリ「街づくり」や「起業論」の各項へと繋がっていく。イタリアの小さな町の試みに想いを馳せつつ、地元で何ができるか考えよう。スモールビジネスのチャンスもあるに違いない。尚、島村氏については、以前「元気なリーダー」や「牡蠣の見あげる森」の項でもその著書を紹介したことがある。併せてお読みいただければ嬉しい。

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posted by 茂木賛 at 10:30 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

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