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前書き: 複眼主義とは何か
私は2004年まで、日本のエレクトロニクス企業に勤めておりました。思うところがあってその年に早期退職し、ビジネスコンサルタントとして「サンモテギ・リサーチ・インク」という会社を立ち上げました。会社では、企業のコンサルティング、起業のサポート、さらには書籍やブログの執筆などを行なっています。
起業サポートの一環としてブログ「夜間飛行」を書き始めたのは、2007年の暮れのことです。今年で5年目を迎え、いまも書き続けています。そのなかで、この本のタイトルとなった「複眼主義」という考え方について、いろいろな角度から論じてきました。そして最近、この考え方について、本としてまとめておきたいと思うようになりました。
ブログ記事は、テーマもさまざまですし、週一回仕事の合間に書いていることもあって説明が不十分なところもあります。とくに「複眼主義」のような系統だった話を理解してもらうには、過去のエントリーをいろいろと探して読んでいただかなくてはならず、月日が重なってエントリーが多くなってくると、とても手間が掛かります。それが、この考え方を本にまとめておきたいと思うようになった理由です。
さて、複眼主義とは簡単に言うとどのような考え方でしょうか。世の中には、男と女、理性と感性、効率と効用などなど、様々な二項対比や双極性があります。複眼主義とは、
(一) 世の中の二項対比・双極性の性質を、的確に抽出すること
(二) どちらかに偏らないバランスの取れた考え方を実践すること
(三) 特質を様々な角度から関連付け、発展させていくこと
と纏めることができます。
ものごとを多面的に見ると、表面だけでなくいろいろなことが分かってきます。そこで、二項対比や双極性を踏まえた上でどちらか片方に偏らないバランスの取れた考え方を実践することを、「複眼主義」と名付けました。三つのポイントを一つずつ説明しましょう。
(一) 世の中の二項対比や双極性の性質を、的確に抽出すること
複眼主義においては、世の中の二項対比や双極性の中から、対象を程よく絞り込み、その性質を的確に抽出することが大切です。たとえば、日本語に「心(こころ)」という言葉があります。二項対比をうまく引き出すためには、これを、「大脳新皮質主体の思考」と、「脳幹・大脳旧皮質主体の思考」とに分けて考えます。大脳新皮質は、進化の過程で大きくなった脳の部分で、理性や合理的な判断を司っており、脳幹・大脳旧皮質は、感情や情動、身体の本能的な機能(自律神経系)を担っています。男と女についても、男性・女性という性別ではなく、二項対比をうまく引き出すために、「男性性」と「女性性」という、人がそれぞれ一定の比率で持っている認識の形式として考えます。
(二) どちらかに偏らないバランスの取れた考え方を実践すること
次に、絞り込んだ二項対比や双極性を大局から眺め、どちらかだけに肩入れするのではなく、バランスの取れた考え方を実践します。どういう場面でどちらの要素が主導的になるかを分析し、実際の場面でどちらの要素を強く打ち出していくべきかを考えるわけです。ただし、「どちらかだけ」というのではなく、「どちらかというと」という曖昧さを残しておくのが複眼主義の実践面での要諦です。
(三) 特質を様々な角度から関連付け、発展させていくこと
複眼主義では次に、ある特定の二項対比・双極性に対して、他の二項対比・双極性の特質を関連付け、項目同士の繋がりをさらに発展させていきます。ここが「複眼主義」のユニークなところかもしれません。「大脳新皮質主体の思考と脳幹・大脳旧皮質主体の思考」という二項対比・双極性(この本では「脳と身体」と呼んでいます)は、時間軸や言語システムなどと繋がりながら、「都市と自然」というもう一つの主要な二項対比・双極性と関連付いていきます。
このような考え方は前から持っていましたが、「複眼主義」という名前を付けて系統立てて考えるようになったのは去年あたりからのことです。ブログというツールは、考えを整理していくのにとても良いメディアだと改めて感じています。それではどうぞ本文をお楽しみ下さい。
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この本で論じられる二項対比・双極性は、主要な「脳と身体」及び「都市と自然」と、その周辺11項目。本の値段は105円。このブログの常連の方々は、すでに「複眼主義」の考え方に親しんでおられることと思うけれど、ご興味をお持ちの方は、是非販売サイトを訪れてみていただきたい。本の内容はさておき、表紙のイラストが可愛いとの評判だ。また、今年からFacebookも始めたので、そちらへもコメントをお寄せいただければ嬉しい。いろいろとお話をいたしましょう。

http://p.booklog.jp/book/58461
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