夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


日本語と社会の同質性

2012年12月11日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 先日「日本の農業」の項で紹介した神門善久氏は、その著書“日本農業への正しい絶望法”(新潮新書)の中で、日本社会の「同質性の問題」を指摘しておられる。その部分を引用しよう。

(引用開始)

「自由」なはずの今日の日本においても、不愉快な正論を大衆は抹殺しようとする。マスコミと「識者」が事実を捻じ曲げた論陣を張ることでそういう大衆に迎合する。本書では、農業という話題を使って、七十五年前も今も変わらない日本社会の体質を描いた。
 おそらく、日本社会の同質性の高さが、この歪みの元凶だろう。不快な事実から目を背けようとするのは日本人に限ったことではない。しかし、異質性が高く、価値観の異なる隣人に常に晒されている社会では、相互監視の緊張感があり、非生産的な逃避行に対しては隣人が目ざとく咎める。ところが、日本社会は同質性が高いため、まとまって「見なかったことにしよう」という雰囲気を作れば、それが通用してしまう。

(引用終了)
<同書 230−231ページ>

 このブログでは、カテゴリ「言葉について」や「公と私論」などで、環境に同化しやすい日本語の特色について繰り返し述べてきた。日本語は、母音を主体に言語認識するので、対話者同士の意識や自然との融和を促し、対話の場における<我>と<汝>との繋がりを生む。<我>と<汝>との繋がり、すなわち「和」を生み出す日本語には異質物を調和させる力があり、それ故に自然環境を守る力が強いのだが、同時にそれは、自然環境に対してだけでなく人為的な組織に対しても同じような力として働く。自分の属する組織を盲目的に守ろうとする力になってしまう。それがいわゆる「ヨソ者排除」という社会の悪しき風習を助長するのだと思う。

 母音言語の環境依存性については、「母音言語と自他認識」の項で、以下のような循環運動として説明したことがある。

(引用開始)

1.   人の言語野は左脳にある
2.   子供ははじめ右脳経由で言葉を覚える
3.   習熟すると人は左脳(言語野)で言葉を処理するようになる
4.   人の脳の自他認識機能は右脳にある

5.   日本語には身体性が強く残っていて母音の比重が大きい
6.   英語は子音の比重が大きい

7.   人は発話時に母音を内的に聴く
8.   社会と母国語の学習によって脳神経回路が組織化される
9.   母親と社会から日本語(母音語)を聴かされて育つと、母音に習熟し、発話時に母音を左脳で聴くようになる
10.  母親や社会から英語(子音語)を聴かされれて育つと、母音に習熟せず、発話時に母音を右脳で聴き続ける

11.  日本人は発話時に自他分離の右脳をあまり刺激しない
12.  欧米人は発話時に自他分離の右脳を刺激する

13.  日本語は容器(空間)の比喩が多く、擬人の比喩が少ない
14.  英語は擬人の比喩が多く、容器(空間)の比喩が少ない

15.  日本語は空間(環境や場)の論理が多く、主体の論理が少ない
16.  英語は主体の論理が多く、空間(環境や場)の論理が少ない

17.  日本語的発想は環境中心で、環境と一体化しやすい
18.  英語的発想は主格中心で、環境と一体化しにくい

19.  日本語に身体性が残り続け、母音の比重が大きくあり続ける
20.  英語は子音の比重が大きくあり続ける

(引用終了)

 このブログでは、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳の働き−「公(Public)」−男性性

B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体の働き−「私(Private)」−女性性

といった二項対比を論じているけれど、我々が人為的な環境・組織からの精神的な自立を果たすためには、Aの側の力を意識的に強化していかなければならない筈である。

 以前「五欲について」の項で、脳の働き(大脳新皮質主体の思考)を生産(他人のための行為)に持ちいず、消費(自分のための行為)のみに使っていると、名声欲と財欲とが無限増殖すると述べたけれど、日本語的発想における脳の働きは、どうしても身体の働き(脳幹・大脳旧皮質の思考)に引きずられてしまうので、「公(Public)」の概念をしっかりさせておかないと、生産(他人のための行為)に向かうよりも、消費(自分のための行為)に向かってしまうようだ。戦前までは、よくも悪しくも家制度が「公(Public)」の概念を作っていたのだが、戦後は、父権が喪失し「公(Public)」の概念が希薄になってしまった。「マスコミと「識者」が事実を捻じ曲げた論陣を張って大衆に迎合する」のは、環境依存型の日本語の特質である「ヨソ者排除」意識に加えて、戦後顕著になった「公(Public)」の概念の欠如という面もあると思う。

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posted by 茂木賛 at 10:12 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

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