前回「新しい家族の枠組み」の項で、「近代家族」に代わる新しい家族の枠組みについて、
1. 家内領域と公共領域の近接
2. 家族構成員相互の理性的関係
3. 価値中心主義
4. 資質と時間による分業
5. 家族の自立性の強化
6. 社交の復活
7. 非親族への寛容
8. 大家族
といった特徴を挙げたけれど、これらの家族が暮らす住宅について考えてみたい。
その形態の一つが「シェアハウス(シェア型住居)」であろう。以前「“シェア”という考え方」の項で紹介した三浦展氏の本からその部分を引用しよう。
(引用開始)
ひつじ不動産が物件情報を掲載しているシェアハウスは「事業体介在型」の「シャア型住居」と定義されている。これは単なるルームシェアとは違う。ルームシェアは、友人、知人など、個人同士の私的な信頼関係によって運営される。しかし、シェア型住居では、運営に責任を持ち、運営によって収益を上げている事業体が存在している。こういうシェアハウスに住む人が、二〇〇九年一二月時点で、主に東京を中心に約一万人いるという。ここには友人同士がひとつの家に住むケースは含まれない。また、六畳一間に二段ベッドを二つ置いて四人で住むという低所得者向けのシェアハウスというのもあるそうだが、それもここには含まれない。
(引用終了)
<“これからの日本のために「シェア」の話をしよう” 77−78ページ>
シェアハウスは、home/officeによる家内領域と公共領域の近接、趣味や価値観による構成員の決定、得意技や時間帯による家内分業など、上に挙げた新しい枠組みの特徴によく対応できるので、今後「新しい住宅」の基本形になるではないだろうか。普及が進めば、そこに暮らす人々によって自主的に運営されるシェアハウスも出てくるかもしれない。
社会には勿論「近代家族」も多く残存するから、これからの住宅街には、近代家族が暮らす「近代住宅」(とその延長線上にある老人ホームや二世帯住宅)と、こういった「新しい住宅」とが、斑模様に存在することになるのだろう。
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