前回「近代家族」の項で、近代家族を超えた新しい枠組みの必要性は、商店街ばかりではなく、安定成長時代を迎えた今の日本社会全体についていえる筈だ、と書いたけれど、“東京は郊外から消えていく!”三浦展著(光文社新書)は、このことを住宅街について研究した本だ。副題に、“首都圏高齢化・未婚化・空き家地図”とある。本カバー裏の紹介文を引用しよう。
(引用開始)
かつて団塊世代が東京圏にあふれ、郊外に大量の住宅が建てられた。それが今や、人口減少社会へと転じ、ゆくゆくは40%が空き家になるという予測も出ている。そうなれば、東京の随所にゴーストタウンが現れるだろう。長年ローンを払い続けて手に入れたマイホームも、資産価値のない「クズ物件」となってしまう。
日本の都市は、他にもさまざまな問題をはらんでいる。居場所のない中高年、結婚しない若者、単身世帯の増加……。とくに首都圏では、それらが大量に発生する。これから郊外はどうなる?住むべき街とは?不動産を最大限活用するには?独自の意識調査などをもとに、これからの東京の都市、郊外のあり方を提言する。
(引用終了)
<同書 カバー裏の紹介文>
ちなみに前回引用した「近代家族」の特徴は、
1. 家内領域と公共領域の分離
2. 家族成員相互の強い情緒的関係
3. 子供中心主義
4. 男は公共領域・女は家内領域という性別分業
5. 家族の団体性の強化
6. 社交の衰退
7. 非親族の排除
8. 核家族
といったことである。
三浦氏は、これからの住宅街について、次のような変化を提案する(本書199ページ)。
(1) 職住分離から職住近接、職住一致へ
(2) 住宅だけのベットタウンとしての住宅地から、商業、オフィス、文化、農業などが混在した新しい都市的住宅地へ
(3) 30〜40代の子育て期の核家族だけの住宅地から、若者、高齢者、単身者など、多様な世代の多様な形の家族が混在した街へ
(4) 私生活主義中心のライフスタイルから、パブリックでシェア的なライフスタイルへ
(5) 行政まかせから、住民の街づくりへの主体的な関与へ
そして、住宅街作りの仕組みとして、住民主体の管理組合と、専門的な住宅地管理会社とのコラボレーションを提案しておられる。
先回紹介した“商店街はなぜ滅びるのか”新雅史著でも、こういった草の根的な組合組織の必要性が述べられている。
(引用開始)
今の日本は、若者たちにマネーが向かわずに、行き所を失ったマネーが投機の方向に流れている。若者にマネーが回らない理由は、彼らが土地の所有者ではなく、事業をおこなっていないからである。こうした状況のなかで、若者への資金提供は、消費者金融やクレジット会社による消費者向けの高金利融資であるか、住宅向けの融資に限られている。
こうしたドロ沼の状態から抜け出すためにも、地域単位で協同組合が商店街の土地を所有し、意欲ある若者に土地を貸し出すとともに、金融面でもバックアップするという仕組みがつくられるべきであろう。(後略)
(引用終了)
<同書 209ページ>
「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」(略してモノコト・シフト)の時代、街づくりにおいても、地域単位の新しい枠組みと、官僚まかせ主義からの脱却が求められている。
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