夜間飛行

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硬水と軟水

2012年09月11日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 先回「長野から草津へ」の項で、温泉のことを書いたけれど、温泉の多くは鉱物(ミネラル)を含んでいる。ミネラルの中でも、カルシウムとマグネシウムを多く含む水を「硬水」(そうでない水を軟水)という。日本には温泉が多いが、自然水は総じて軟水であるという。“水と身体の健康学”藤田紘一郎著(ソフトバンク クリエイティブ サイエンス・アイ新書)から、硬水と軟水ができるしくみについて引用しよう。

(引用開始)

硬水と軟水ができるしくみ

 地中に染み込んだ雨や雪は地層によってゴミや汚れがろ過され、同時に地層内のミネラルを吸収して湧きでてきます。こうした水を一般にミネラルウォーターと呼んでいます。そのミネラルのなかでもっとも注目されているのが、カルシウムとマグネシウムの量です。水の硬度はカルシウムとマグネシウムの量から数値化されています。WHO(世界保健機構)は、水1リットル中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を数値化した値(硬度)が120ミリグラム以上を硬水、それ以下を軟水と規定しています。
 水の硬度は、採水地によって値が大きく異なります。ミネラルの含有量は、地層や地形その他の諸条件の影響を受けるからです。日本は国土の起伏がはげしく、高地から低地までの水の流れが速いため、地層のミネラルを吸収する期間が短く、ミネラル成分の含有量の少ない軟水の水が多く生まれます。
 一方、ヨーロッパ大陸は石灰岩層の地層が多く、平坦な大地が延々と広がっています。そうした土地から長い年月をかけて水が湧きだすため、地層のミネラルを豊富に吸収した硬水ができあがったのです。軟水はまろやかな水で飲みやすく、身体への負担が少ないという特徴があります。これに対して硬水は、体質改善などの健康作用の高い水です。(後略)

(引用終了)
<同書 62ページ>

 先日「音響空間」の項で、中村明一氏の“倍音”(春秋社)から、

(引用開始)

 まず国土の問題として、日本は非常に湿気を多く含んだ自然環境にあります。柔らかい土、草木、落ち葉に覆われ、日本中が響かない空間になっていたのです。音が響かないと、相対的に、高い音、倍音が聞こえてくるようになります。ですから、私たち日本人は、常にそれらの倍音が存在するところに生息していたことになります。(中略)
 これと対比して、西欧の場合を見てみると、家は石や煉瓦でできており、道路も石畳で造られていました。石に覆われているということは、非常に音が響く空間だということです。その音が響く空間で、西欧人は生活していました。(後略)

(引用終了)

との文章を引用したが、ヨーロッパに硬水が多く、日本に軟水が多いという話も、この響く空間、響かない空間の違いと重なるように思われる。

 水の違いは、料理の違いにも現れる。ヨーロッパの料理は、硬水を使った方が本来の味がでるという。日本料理には軟水が合う。ヨーロッパと日本という土地の特性の違いが、音楽、言語、料理など、幅広い文化の違いとなって顕れてくるのは興味深い。今後、中国、アジア、中東や南北アメリカ大陸などについても、このあたりのことを研究してみよう。

 そいうえば、「イームズのトリック」の項などでその著書を紹介してきた福岡伸一氏の“生物と無生物のあいだ”(講談社現代新書)という本に、マンハッタンの喧騒について次のような文書があった。

(引用開始)

 マンハッタンで絶え間なく発せられるこれらの音は、摩天楼のあいだを抜けて高い空に拡散していくのではない。むしろ逆方向に、まっすぐ垂直に下降していくのだ。マンハッタンの地下深くには、厚い巨大な一枚岩盤が広がっている。高層建築の基礎杭はこの岩盤にまで達している。摩天楼を支えるために地中深く打ち込まれた何本もの頑丈な鋼鉄パイプに沿って、そべての音はいったんこの岩盤へ到達し、ここで受け止められる。岩盤は金属にも勝る硬度を持ち、音はこの巨大な鉄琴を細かく震わせる。表面の起伏のあいだで、波長が重なり合う音は倍音となり、打ち消しあう音は弱められる。ノイズは吸収され、徐々にピッチが整えられていく。こうして整流された音は、今度は岩盤から上に向かって反射され、マンハッタン全体に斉一的に放射される。
 この反射音は、はじめは耳鳴り音のようにも、あるいは低い気流のうなりにも聴こえる。しばしば、幻聴のようにも感じられる。しかし街の喧騒の中に、その通奏低音は確かに存在している。

(引用終了)
<同書 205−206ページ>

マンハッタンでリズムの効いたジャズを聴きながら、硬水で割ったウィスキーなどを飲めば、いやが上にも気分が高揚するに違いない。

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posted by 茂木賛 at 09:26 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

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