“マンガでわかる神経伝達物質の働き”野口哲典著(ソフトバンク クリエイティブ サイエンス・アイ新書)を読んでいたら、笑いの効用について次のように書いてあった。
(引用開始)
笑いはヒトだけに見られる感情表現である。そして、たんに笑いといってもさまざまなものがある。
通常は楽しいとき、うれしいとき、おもしろいときなど快感情のときに笑うが、ときには愛想笑いのように、そうでない場合にも笑うことがある。
一般的な快感情の笑いは、好き・嫌いや快・不快の判断をしている扁桃体や視床下部の働きによるものと考えられる。
おもしろいといった快情報が入ってくると、扁桃体で快感情が生まれ、その信号が前頭連合野に伝わり、笑うべきかどうかの最終判断をしている。
笑ってもよいと判断すれば、脳の奥にある大脳基底核へ信号が伝わり、顔面神経を刺激して笑いの表情をつくるのである。
愛想笑いなどは、扁桃体から快感情の信号がなくても、前頭連合野が強制的に笑いの表情をつくっているのだ。
笑いの感情は、副交感神経の活動を活発にするため、緊張をやわらげる効果がある。同時に脳内でβエンドルフィンやドーパミンを放出させ、多幸福感を生み出すのだ。
特にβエンドルフィンは脳内麻薬とも呼ばれているように、痛みやストレスをやわらげ、免疫力を強化する作用がある。
こんなことから、笑いは健康のためにもよいといわれるようになったのだ。さらに特別おもしろくなくても、意識的に笑いの表情をつくったり、声をだしてわらうだけでも、こうした効果を得られることが明らかになってきた。
心身の健康のためにも、おおいに笑うことが重要なのだ。
(引用終了)
<同書 168ページ>
「呼吸について」の項で、呼気の効用について書いたけれど、笑いにも副交感神経の活動を活発にする効果があるという。疲れたときなど特に、寅さんの映画でも観ながら大いに笑いたいものだ。
「五欲について」の項で、ヒトだけに特有なものとして名声欲と財欲について述べたが、笑いもヒトだけのものだという。チンパンジーも笑いに似た声をあげるという話をどこかで読んだ記憶があるが、笑いはきっと共同体形成の進化に伴う感情表現の一つなのだろう。そういえば、経済人類学者の栗本眞一郎氏に“パンツをはいたサル”という著書があった。
タイのことを「微笑みの国」というけれど、もしかしたらかの国民は地球上で最も進化した人々なのかもしれない。笑いは快感情・幸福感に通じる。だから、ブータンのGNH(Gross National Happiness)という考え方は、人類の次なる進化の目標を示しているのではないだろうか。尚、神経伝達物質の働きについては、以前「仕事の達人」の項でも触れたことがある。併せてお読みいただければ嬉しい。
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