“呼吸の極意”永田晟著(講談社ブルーバックス)という本を読んだ。呼吸という身体にとって重要なしくみについては、これまでも「体壁系と内臓系」や「自律神経と生産と消費活動について」の項で書いてきたが、やはり呼吸の面白いところは、それが内臓系を調整する自律神経(交感神経と副交感神経)の支配下にありながら、体壁系の筋肉(肋間筋と横隔膜)によって行なわれていることであろう。
呼吸のうち、吸気は交感神経によって調整され、呼気は副交感神経によって調整される。脳幹にある呼吸中枢は、自律神経の調整を受けながら、肋間筋と横隔膜を収縮・弛緩させて呼吸運動を制御している。
呼吸法には、胸式呼吸や腹式呼吸などあるが、とくに腹式呼吸によって呼気を意識的に行なうと、副交感神経がより刺激され、それによって内臓系器官の活動を促進できるという。“呼吸の極意”から引用しよう。
(引用開始)
自律神経系のうち副交感神経につながる迷走神経は、延髄・橋からでていますが、同じ部位に呼吸中枢があるため、両神経間は強く関連しあっています。具体的には、呼吸運動の中で呼気が強くなると、迷走神経が興奮して呼吸が深まっていきます。逆に、迷走神経に障害がある場合は呼吸は浅くなってしまいます。このように呼吸運動は迷走神経によって影響され、逆に、呼吸運動次第で迷走神経活動をコントロールできるのです。
さて、自律神経系は内臓を動かす筋肉をコントロールすることで、内臓などの器官の働きに影響を与えています。(中略)
吸息が盛んになる、つまりたくさんの空気が激しく取り込まれると、副交感神経が抑制され、交感神経が興奮します。交感神経が活発になると、内臓の働きは抑制されます。反対に呼息運動が盛んになると、副交感神経が興奮し、交感神経が抑制されて、内臓の働きも活発になるのです。
つまり、内臓の働きを促進させるのは副交感神経であり、とくに呼息中心の呼吸法が大切なのです。一呼吸置いたり、ため息をついたり、深く息を出したりなどのやり方によって、副交感神経が活発になり、内臓の働きが促進されます。
(引用終了)
<同書 56−58ページ>
「交感神経と副交感神経」の項でも述べたように、副交感神経は内臓系器官の働きを促進するから、呼吸(とくに呼気)を意識的にゆっくりと深く行なうことで、内臓系の働きをより強くすることが出来るわけだ。
呼吸運動が体壁系の骨格筋によって制御されるのは、肺に心臓の心筋にあたる不随筋が存在しないからだが、このことによってヒトは、逆に呼吸を意識的にコントロールすることができ、それによって内臓系器官の働きをある程度制御することができる。健康法として人気のあるヨガや気功が呼吸(とくに呼気)の重要性を強調するのは、そういう理由なのである。
この本(“呼吸の極意”)には、血液をアルカリ性に保つ呼吸法や、血圧を下げる呼吸法、腹式呼吸を会得するための呼吸体操など、実際的なことも多く書かれているので、普段忙しい皆さんも是非一読されると良いと思う。
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