前々回「水の力」の項で、
(引用開始)
「流域思想」、あるいは水と社会との関わりが、私の水に対する興味の第三である。
(引用終了)
と書いたけれど、この「水と社会とのかかわり」を様々な視点から纏めたのが、“水の知 自然と人と社会をめぐる14の視点”沖大幹監修・東京大学「水の知」(サントリー)編<化学同人>である。まず本の裏帯にある目次の抜書きを引用したい。
(引用開始)
プロローグ「水の知」への招待
I 水とかかわる「人」
第1章 川の本質と河川技術のあり方
第2章 水と森と人
第3章 農地は水のコントロールが命
II 「地域社会」に根づく水
第4章 地下水と人と社会
第5章 水と生態系と地域社会
第6章 水と市民参加型社会
III 「世界」のなかの水問題
第7章 世界の水と衛生問題と日本の役割
第8章 飲み水の水質基準はどのように決めるのか
第9章 トイレから世界を変える
第10章 水を巡る国家間の確執と協調
IV ビジネス」としての水
第11章 マニラにおける水道時事業民営化
第12章 健全な水ビジネス
第13章 今、なぜ世界が水ビジネスに着目するのか
(引用終了)
ということで、「水と社会とのかかわり」について、広範囲な論点が網羅されていることがお分かりいただけると思う。大きく分けて「人」「地域社会」「世界」「ビジネス」という四つの観点から「水と社会とのかかわり」を考えるわけだ。勿論「流域思想」にとってはどれも外せない。
この本は、本の表帯に「東大とサントリーのコラボ、水のスペシャリストがおくる“水の世紀”を生きるヒント」とあるように、サントリーという会社が東京大学と一緒に創設した、“東京大学統括プロジェクト機構「水の知」(サントリー)統括寄付講座”が元になっている。こういう形で企業と大学が連携するのは良いことだと思う。サントリーの水への拘りについては、「多様性を守る自由意志」の項で紹介した“水を守りに、森へ”山田健著(筑摩選書)にさらに詳しい。
このブログでは、安定成長時代の産業システムとして、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術の四つを挙げているが、主にこの本の後半で論じられている水処理に関する新技術(淡水化技術やエネルギー変換技術など)は、地球環境というグローバルな観点から、高度成長時代を迎えている中国やインドなどに於いても必要とされるものだ。以前「マグネシウム循環社会」の項で、矢部孝東京工業大学教授の研究活動(海水に含まれるマグネシウムを使ったエネルギー循環社会の構築)を紹介したことがあるけれど、「新技術のビジネス化」という視点から、日本の水処理に関する技術分野はこれからもっと注目されてよい。
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