夜間飛行

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流行について

2012年02月28日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 「パラダイム・シフト」とは、その時代や分野において当然のことと考えられていた認識(パラダイム)が、革命的かつ非連続的に変化(シフト)すること、と定義される。今回は、このパラダイム・シフトという時代の大きな「変革」と、大衆が一過性で注目し人気を集める「流行」との相関について考えてみたい。

 パラダイム・シフトについては、先日「“シェア”という考え方」や「“シェア”という考え方 II」の項で挙げた、

私有    → 共同利用
独占、格差 → 分配
ただ乗り  → 分担
孤独    → 共感

世間    → 社会
もたれあい → 自立
所有    → 関係
モノ    → コト

といった内容をベースにしよう。この新パラダイム社会で、「森ガール」の項で取り上げたようなファッションや感性は、今後どのように変化していくのだろうか。

 先日「現場のビジネス英語“sleep on it”」の項で、ヒトは眠っている間に賢くなるという話を、“運がいいといわれる人の脳科学” 黒川伊保子著(新潮文庫)から引用したが、黒川さんの別の著書“夫婦脳”(新潮文庫)には、“感性の7年周期説”という面白い仮説が載っている。まずその部分を引用したい。

(引用開始)

 ヒトの脳には、感性の7年周期がある。
 前にも触れたけど、これは免疫の中枢である骨髄液が丸七年で入れ替わることに起因した、生理的なサイクルだ。
 生体は、外界刺激には反応しないと危ないが、その刺激が長く続くのであれば、適応しないとまた危ない。したがって、脳は、或る一定の刺激に対し、最初は反応するが、徐々に緩慢になって、やがてすっかり慣れる(飽きる)ように出来ているのである。(中略)
 この「何年もすれば、すっかり逆転」が、実は、個々に不確定な年限ではなく、骨髄液が入れ替わるサイクル=7年に沿っている。

(引用終了)
<同書 107-108ページ、フリガナ省略>

ということで、骨髄液の入れ替わりをベースに、夫婦の危機は7年ごとに訪れるというわけなのだが、黒川さんによると、この7年周期説、夫婦間だけではなく、大衆の流行現象などにも適応できるという。

 流行は、大衆全体が同時期に同じものを見聞きするので、社会全体で同時期に同じ傾向のものに飽きてくる現象が起こる。だから流行も7年周期で変わっていく。そしてこの7年周期は、さらに7年×4=28年の大きな周期をもって正反対の感性へと向かう、と黒川さんはいう。

 詳しくは同書を読んで判断していただきたいが、ここではこの「流行28年周期説」をベースに話を先へ進めてみよう。尚、この本は2010年12月に発行されている。

 2010年から28年前、社会はまだ古いパラダイムの時代である。当時大衆の間では「シャープ」や「辛口」が流行した。それに比べて今はどうか、そしてこれからの新パラダイム時代の流行はどうなっていくのか。さらに同書から引用する。

(引用開始)

 辛いものを好んで口にした当時の女の子たちは、口の利き方も辛口だった。結婚相手の条件に三高(高学歴、高身長、高収入)を挙げて、男たちを威嚇して翻弄したのも、「シャープが嬉しい時代」のワンレン、ボディコンの女子だったのである。
 それから二十八年後の今、車は丸く、女の子たちも、髪をカールして、フリルやリボンを配し、下着みたいにひらひらキラキラしたかっこうを楽しんでいる。おやつは甘さの時代に入り、コンビニスイーツやデパ地下スイーツの新作が季節ごとに話題になるのも、いまや定番。女の子たちの口の利き方も甘くなり、三低(低リスク、低依存、低姿勢)でいいそうである。
 そんなベタ甘の時代も、既にピークを過ぎている。そろそろ、凛々しさが戻ってくるはず。その予兆が、四角い車や、テレビドラマ「曲げられない女」あたりに匂ってきている。私たちは、超シャープな時代へ向かって、二十八年間の長い旅を始めたのである。

(引用開始)
<同書 112ページ、フリガナ省略>

いかがだろう。黒川さんによると、これからはまた「シャープ」な時代が来るという。

 新パラダイム社会における「シャープ」さがどのようなことを指すのかは、実のところ今の時点ではまだよく見えない。その流行は数年かかっておいおい学校や街角に姿を見せるのだろう。ただ、上に挙げたパラダイム・シフトの中に、

もたれあい → 自立

という項目が在る。従ってこれからのシャープさには、少なくとも「ベタベタしたもたれあい関係」から「凛とした精神的自立」へ、という感性が含まれると思われるが、皆さんはどう予測されるだろうか。

 ファッションについては「森ガール」の項で、

(引用開始)

「森ガール」が成長しそのファッションがさらに洗練されてくれば、日本古来の「和服」とも融合(fusion)し、近代以降の日本の服装として社会生活に定着していくのではあるまいか。

(引用終了)

などと書いたけれど、それがシャープさとどう結びつくかはまだ謎である。先日「なでしこジャパン」の澤穂希選手が国際サッカー連盟の授賞式で素敵な和服姿を見せてくれたが、もしかするとあれはその片鱗なのであろうか。

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posted by 茂木賛 at 10:10 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

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