夜間飛行

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“タテとヨコ”のつながり

2012年02月07日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 先回「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」の項の最後に、

(引用開始)

「コト」に関して重要なのは、そこには必ず固有の「時間と空間」が関わっているということだ。(中略)逆に云うと、自分が気に入った「時間と空間」に注目してゆけば、必ずそこで起こっている素敵な「コト」に出会うことができるということである。

(引用終了)

と書いたけれど、例えば自分が暮らす街において、人はどのようにして「そこで起こっている素敵なコト」に出会うことができるだろうか。

 そのヒントになることが、“郊外はこれからどうなる?”三浦展著(中公新書ラクレ)という本に書かれている。

(引用開始)

 私はこれからの日本人が求めるのは、タテのつながりとヨコのつながりだと思っています。
 ヨコのつながりとは言うまでもなく、隣近所、友人知人などとの交流です。今まで述べてきたように、オールドタウン化したり、田園都市化したりすることは、人々の交流を増やすでしょう。
 タテのつながりとは歴史への関心です。歴史小説を読むようになるという意味ではなく、日本あるいは自分が住んでいる地域の歴史への関心が高まるのではないかと思うのです(拙著『愛国消費』参照)。
 自分が住んでいるまちを、もっといい方向に変えていこうとする機運が盛り上がると、必ず、そのまちに住む人は地域の歴史を掘り起こしたくなります。
 これまで、郊外には歴史がないと思われてきました。私自身も、歴史がないことを批判してきました。たしかに住宅地になってからの歴史は浅い。しかし、住宅地として開発される前の歴史は、探せばあるのです。

(引用終了)
<同書 212ページ>

自分が暮らす街の「素敵なコト」に出会うには、“タテ”すなわち「街の歴史」と、“ヨコ”すなわち「人々の交流」に注目すれば良いというわけだ。逆に云うと、街に起こる「素敵なコト」の全容を把握するには、どちらかだけでは不充分ということでもある。

 この「“タテとヨコ”のつながり」を、当ブログで提唱している「流域思想」の沿って考えてみると、その素敵なテキストとして、最近出版された“オオカミの護符”小倉美恵子著(新潮社)を挙げることができる。本のカバーから紹介文を引用しよう。

(引用開始)

 五〇世帯の村から七〇〇〇世帯が住む街へと変貌を遂げた、川崎市宮前区土橋。長年農業を営んできた著者の実家の古い土蔵で、護符がなにやら語りかけてくる。護符への素朴な興味は、謎を解く旅となり、いつしかそれは関東甲信の山々へ――。
 都会の中に今もひっそりと息づく、山岳信仰の神秘の世界に触れる一冊。

(引用終了)

ということで、著者は自宅の古い土蔵に貼ってあった「オイヌさま」の護符に導かれて、川崎市から多摩川の流域をさかのぼり、御岳山、秩父山系、さらには三峰山へと「歴史への関心」を広げていく。

 この“タテ”のつながりの発見は、著者の取材活動を通して、さらに“ヨコ”のつながり、すなわち「人々の交流」へと繋がっていく。著者はこの本を書く前、友人と映画プロダクションを設立し、すでにこのテーマで映画“オオカミの護符”、さらに“うつし世の静寂(しじま)に”という川崎市宮前区を舞台にしたドキュメンタリー映画を作製されたと云う。

 まだお読みでない方は、この本(や映画)によって、流域における「“タテ”と“ヨコ”のつながり」の豊かさに触れていただきたい。流域におけるつながりについては、これまでも「両端の奥の物語」「流域社会圏」「鉄と海と山の話」の項などで触れてきた。併せてお読みいただければ嬉しい。

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posted by 茂木賛 at 10:39 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

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