夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


森ガール

2012年01月17日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 前回「場所のリノベーション」で紹介した“三低主義”のあとがきの中で、三浦展氏は、

(引用開始)

 実際、今、若い世代を中心に、時代の感覚がすごく変化している。たとえば、バブル時代の若い女性は、銀座で遊び、青山の高級マンションに住み、高級外車や高級ブランド品を買う暮らしに憧れた。しかし現代の若い女性は、青山のマンションよりも谷中の長屋に住みたがる。高級外車には興味がなくなり、鉄道が好きな「鉄子」や中古カメラを持って浅草や向島を散歩する「カメラ女子」が増えている。ブランド品への関心もなくなり、ユニクロや無印や古着や浴衣を好んでいる。お墓めぐりを趣味とする女性すら増えているという。そこでは完全に「近代」が笑いとばされている。と言うか、すでに「近代」が眼中にない。

(引用終了)
<同書 250ページ>

と書いておられる。先日「“シェア”という考え方 II」のなかで、

(引用開始)

 地球規模でエネルギー循環が求められるようになり、日本が安定成長時代に入った今、われわれの社会は必然的に変わらざるを得ない。どう変わらなければならないかというと、人々は「世間」に縛られすぎることなく「所有原理」を自覚して精神的に自立すること、政治やビジネスは、女性性に基づく「関係原理」を大胆に取り入れること、この二つである。

(引用終了)

と書いたけれど、“三低主義”のルーツには、この「女性性に基づく関係原理」があるようだ。

 さて「鉄子」や「カメラ女子」の元祖と言えば、やはり「森ガール」ということになるのではないだろうか。過去の新聞から「森ガール」に関する記事を拾ってみよう。

(引用開始)

 「森ガール」は三年前、インターネットの会員制サイト「mixi」で森ガールコミュニティーができてから、表舞台に登場した。「森にいそうな女の子」のファッションは少女っぽいメルヘンな世界。ゆったりしたワンピースにファーなどのふわふわしたアイテム。レギンスやタイツをはき、露出が少ないのも特徴だ。

(引用終了)
<東京新聞 11/23/2009>

(引用開始)

 森ガールと呼ばれる人はファッションや雑貨など、趣味の領域では好き嫌いがはっきりしている。マニアの気質を備えてはいるのだが、執着心が強いわけではない。「ないもの」ねだりを繰り返すのではなく、手の届く届くもので満足する。そこには、「今あるもの」を大切に繰り返し使おうとするエコロジーの考え方からの感化もみてとれる。(中略)健康と環境に配慮したライフスタイルを表す「ロハス」ブームの系譜に連なるかのような、環境意識の高まりにつながる要素を抱えている。

(引用終了)
<日経新聞 1/23/2010>

ということで、その服装には、上の記事にある「ゆったりしたワンピースにファーなどのふわふわしたアイテム。レギンスやタイツをはき、露出が少ない」という特徴のほかに、自然素材、アースカラー、重ね着、ローヒールの靴などといった特色もある。

 それらの特徴は、勿論西洋化を生活に取り入れたあとのファッションだから着方やスタイルは違うけれど、自然素材、重ね着、ローヒール、ゆったりとしたワンピース、露出が少ないなどといった点で、日本古来の「和服」とコンセプトが似ている。

 以前「牡蠣の見上げる森」や「森の本」の項で、日本では古来より「森」が産業や文化のルーツとなっていることをみてきた。言語に強い身体性を持つ日本人は、本来的に自然志向である。そういう意味で「森ガール」の生まれた土壌は肥沃であり、その現象は決して一過性の流行とは思われない。以前「本の系譜」の項で紹介した“「本屋」は死なない”のなかに登場する「ひぐらし文庫」の原田真弓さんは、昨今のいわゆる“ブーム本”を批判するなかで、

(引用開始)

「最近だと“森ガール”のブームがそれにあたると思います。森の中にいるイメージの女の子やそのファッション。見方を変えれば昔からあるものだし、多くの人にはなんだかよくわからないですよね(笑)。最初にそういう視点で本をつくった出版社があって、これは面白い、と私も思った。魅力が定着するには、時間をかけてゆっくり広がっていったほうがいいんです。それが、あっという間に行き渡っちゃう。(中略)じっくりやれば、渋谷の洋服屋さんなんかとも組んで、いろんなことができたと思うんだけれど」

(引用終了)
<同書 35‐36ページ>

と述べて、関連本のブームが過去のものになってしまったことを嘆いておられる。関連本ブームは去ってしまったはかもしれないが、「森ガール」が成長しそのファッションがさらに洗練されてくれば、日本古来の「和服」とも融合(fusion)し、近代以降の日本の服装として社会生活に定着していくのではあるまいか。

 自然志向の「森ガール」は、多品種少量生産、食の地産地消、資源循環といったこれからの安定成長時代を象徴し、政治やビジネスに必要な「女性性に基づく関係原理」を体現する存在なのである。

 「鉄子」や「カメラ女子」のみならず、「山ガール」、「新書読書法(2010)」で紹介した三浦展氏の“シンプル族”といった人たちは、みな「森ガール」の血筋を受け継いでいるといってよいと思う。

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posted by 茂木賛 at 10:07 | Permalink | Comment(0) | 起業論

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