“奇跡のモノづくり”江上剛著(幻冬舎)という本を読んだ。まず新聞書評の紹介文を引用しよう。
(引用開始)
至高のゴルフクラブを製造する本間ゴルフ、個性を極めた焼酎を造るメルシャン八代工場、ビールの泡が消えない不思議なタンブラーを生んだ山崎研磨工場など8ヶ所の現場を著者が訪ね、モノづくりの真髄を報告する。本間ゴルフでは、塗装一筋25年の職人が言う。「自分の仕事はこれだというか、魂で仕事をやっていますよ」。日本はモノづくりでいくしかない、という著者の強い思いがあふれている。
(引用終了)
<朝日新聞 9/18/2011>
著者の江上剛氏は経済小説で知られた作家だが、東日本大震災の被害に直面して自信を失いかけている人々に、もういちど日本のモノづくりの力強さを伝えたいとの想いから、この本の取材執筆を思い立ったと云う。紹介された8つの現場は以下の通り。
1. 本間ゴルフ・酒田工場(ゴルフクラブ製造)
2. メルシャン・八代工場(焼酎づくり)
3. 山崎研磨工場・燕市(タンブラーなどの研磨)
4. コニカミノルタ・豊川工場(プラネタリウム製造)
5. クレラ・新潟事業所(新素材開発)
6. キッコーマン・野田工場(醤油の国際化)
7. 宮の華・宮古島(琉球泡盛づくり)
8. 波照間製糖・波照間島/シートーヤー・宮古島(黒糖づくり)
どの現場にも「元気なリーダー」がいて「宝石のような言葉」がある。本の前書きから、江上氏の想いの篭った文章を紹介しよう。
(引用開始)
日本は、モノづくりで生きて行くしかない。金融立国論を唱える人もいるだろう。しかし日本が世界から認めれ、世界に貢献できるのは、モノづくりの力だ。日本のモノづくりは、決して死なない。これからも生きて、輝き続ける。私は、彼らを取材してますます強くそう考えるようになった。私は、彼らから勇気をもらった。日本の将来に不安を抱いている皆さんにもその勇気をぜひお分けしたい。
(引用終了)
<同書 7ページ>
モノづくりの本質は、絶え間のないProcess Technologyの改善である。以前「日本の生産技術の質が高い理由」の項で、日本語が母音語であることと、それに伴って起こる「自他認識」の希薄性が、「話し手の意識を環境と一体化させる傾向」を生み、それが自然や組織ばかりではなく機械などの無機的環境に対しても働くことを論じたけれど、日本のモノづくりの質の高さは、この「日本語の特質」に由るところが大きいと思う。
このブログでは、安定成長時代の産業システムとして、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術の四つを挙げているが、これらの中心に「日本のモノづくり」があるのは間違いないだろう。
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