以前「人生系と生命系」の項で、
(引用開始)
人生の達人と呼ばれる人々は、「交わりにくいふたつの物語」をそよ風にでも準(なぞら)え、振幅が小さい呼吸や脈拍、脳波といった振動から、振幅が中位の昼と夜、気圧と気温、仕事と休息といったリズム、さらには幼年期、青年期、壮年期、老年期といった人生の大きな波動を、「1/f のゆらぎ」の要領で上手く同期(synchronize)させているのかもしれない。
(引用終了)
と書いたけれど、人生の達人の前に、まず「仕事の達人」になろうということで、今回は、“脳内物質仕事術”樺沢紫苑著(マガジンハウス)と、“スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション”カーマイン・ガロ著(日経BP社)の二冊の本を紹介したい。
まずは“脳内物質仕事術”から。脳内物質とは著者の造語で、そもそもドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のことを指すという。新聞の紹介記事を引用しよう。
(引用開始)
脳の仕組みを利用した上手な働き方指南
精神科医である著者が、ビジネスマンに向けて脳内物質を活かした仕事術を伝授。精神論で乗り切るのではなく、脳の仕組みを利用した上手な働き方を提案している。
紹介されているのは、モチベーションを高める幸福物質「ドーパミン」、緊張感やプレッシャーで効率を高める「ノルアドレナリン」、興奮や怒りと関連して分泌される勝負物質「アドレナリン」、うつ病予防にも役立つ癒やし物質「セロトニン」、疲労回復に欠かせない睡眠物質「メラトニン」、認知機能とひらめきを高める「アセチルコリン」、究極の癒やし物質「エンドルフィン」の7つの脳内物質。これらはどれかが突出していてはダメで、バランスがよく分泌されていることが重要なのだという。例えばアドレナリンは、火事場のバカ力を出すには有効なものの、出しすぎれば疲弊状態に陥るのだとか。それぞれの脳内物質をオン・オフにするための食事法や生活術が紹介され、実践的だ。
(引用終了)
<日刊ゲンダイ 1/8/2011>
仕事には呼吸法も大切である。呼吸法については、以前「自律神経と生産と消費活動について」の中で述べたことがある。この脳内物質活用術と、仕事中の呼吸法とによって、昼と夜、仕事と休息などのリズムをより上手くコントロールできるようになる筈だ。
“スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション”は、アップルの創業者をモデルに、商品開発における起業家の理念を分りやすく7つに纏めたものだ。これも新聞の紹介記事を引用しよう。
(引用開始)
本書を見てすぐ気付くのはベストセラーになった『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』(日経BP社)の「二匹目のドジョウ」を狙った作品という点だ。著者も訳者も装丁も同じ。唯一異なるのは、前著がジョブズ氏の情報伝達力に焦点を当てたのに対し、今回は彼や米アップルの卓越した商品開発力をテーマにした点である。
「シンク・ディファレント」。アップルを追われたジョブズ氏が返り咲いた翌年、同社が1997年から始めたキャンペーンのコピーだ。これを機にアップルは「iMac」「iPod」「iPhone(アオフォーン)」「iPad」と、強烈な勢いで世界を変える商品を世に出した。
本書はその開発力の源泉はジョブズ氏の創造性にあるとし、7つの法則にまとめた。すなわち「大好きなことをする」「製品を売るな。夢を売れ。」「メッセージの名人になる」―――。前著でジョブズ氏の逸話を多数紹介したため、今回は他の成功者の話も交え、法則を説明している。
興味深いのは外村仁氏の解説だ。「iPod」のアイデアは外部からの提案だが、先に話を聞いた日本の家電メーカーは皆、前例のない商品に「ノー」といったそうだ。まさに利用者視点に立ったジョブズ氏の感性が成功をもたらした。前著と合わせて読むと、日本企業に足りない何かが見えてくる。井口耕二訳。
(引用終了)
<日経新聞 8/21/2011>
書評に書かれなかった7つの法則の残りは、「宇宙に衝撃を与える」「頭に活を入れる」「1000ものことにノーと言う」「めちゃくちゃすごい体験をつくる」である。先日亡くなったジョブズ氏から我々が学ぶところはとても多いと思う。
起業の理念については、「理念(Mission)と目的(Objective)の重要性」などで論じた。また、組織におけるリーダーシップについては「ホームズとワトソン」や「リーダーの役割」の項で述べた。
7つの脳内物質活用術と呼吸法、起業理念と商品開発の7つの法則、リーダーシップの自覚などをもって、みなさんも「仕事の達人」への道を目指していただきたい。
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