以前「不変項」の項で、
(引用開始)
「わたし」にとって身近なもの、身の回りに常にある物、環境の中にあって変わらない場所、自分を確認できる優れた場所や物は、「アフォーダンス」で云うところの「不変項」という概念に近い。
(引用終了)
と書いたけれど、「場所や物」以外、祭りや花火大会などの「行事」も、長く続くものは場所や物同様、充分優れた「不変項」足り得ると思う。
「街並みの記憶」の項で、
(引用開始)
昨今、日本の多くの地域で、優れた街並みが廃れてきている。20世紀型の大量生産・輸送・消費システムが、行き過ぎた資本主義を生み出し、それが人々に大切な「至高的存在」を忘れさせ、街並みが醜くなった。
(引用終了)
と書いたが、失われた街並みと同時に、行われなくなった行事も多くあるに違いない。行事やイベントは人の繋がりを生む。同じく「街並みの記憶」の項で、
(引用開始)
これからは、21世紀型の「多品種少量生産」「食の地産地消」「資源循環」「新技術」といった産業システムに相応しい、新しい街づくりが必要だ。
(引用終了)
と書いたように、新しい時代にはそれに相応しい行事づくりが必要だと思う。
たとえば長野県松本市の「クラフト・フェア」は毎年5月に開催されるが、今年で27回目を迎えた。山に囲まれた松本は、良質の木材が取れ、乾燥した空気と豊かな水に恵まれた土地柄で、古くから木工などの手仕事が身近にあったという。その流域の伝統を活かした行事が「クラフト・フェア」である。各地でこのような「流域思想」に基づいた素晴らしい行事(やイベント)が創造されることを願いたい。そういう努力が、街並み同様、やがて記憶として人々にとっての優れた「不変項」になっていくに違いない。
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