夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


“わたし”とは何か III 

2011年07月19日 [ 生産と消費論 ]@sanmotegiをフォローする

 ここまで「“わたし”とは何か」「“わたし”とは何か II」において、「わたし」とは社会の「至高的存在」(あなた)を映す鏡であり、生きがいとはその「至高的存在」に近づくことだと述べてきた。ここでは視点を変えて、ときどき近親者や友人の中に見え隠れする「わたし」自身について述べてみたい。

 近親者や友人のなかに、ちらりと自分の姿が見えることがある。母親が子供に語るその子の幼かったころの想い出、部下が上司に語るその上司の会議での態度に感銘を受けた話、仲間との集合写真に写る自分の姿、などなど。そういう、いわば社会の遠景に見える自分の姿をいとおしく感じることがある。それは、「至高的存在」に近づく努力とはまったく別なところにあるのだが、人が時としてこのような気持ちを抱くのはなぜだろう。

 「“わたし”とは何か」の項で、河野哲也氏の「自己とは、あくまで環境に立脚し、自然的・人間的・社会的環境との相互作用のなかで成立する徹底的に身体的な存在である。」という言葉を紹介した。人は環境(社会)から独立した存在ではあり得ない。いわば社会から離れられない生き物だ。だから社会の中に自分の姿を見つけると、自分の居場所を見つけたような安心感があるのだろう。ここでいう「居場所」とは、物理的な場所ではなく、人から見守られているという精神的な安心感のことである。

 以前「エッジ・エフェクト」の項で、“マージナル・マン”という言葉を紹介したけれど、それほど大げさ(特別な人)でなくとも、「生産」に携わる人は誰でも、朝親しい日常から離れて(境界を跨いで)仕事をし、それを終えると夜、また親しい日常へ帰ってくる。近親者や友人が齎(もたら)す安心感。この安心感があればこそ、人は「至高的存在」に近づく作業に専念できるのだ。

 人から見守られているという安心感は、隣近所との朝の挨拶、行きつけの店で店主と交わすやりとりなどでも確認できる。特に災害に遭った場合や病気になったときなどは、見ず知らずの人からでも一声掛けて貰うととても励みになる。

 ここで、親しい人の死が何故それほど悲しいのかを考えてみよう。それは、親しい人にもう会えないからばかりではなく、その人の中にあった自分がその人と一緒に消えてしまうからではないだろうか。人はなんと多くの他人を自分の記憶のうちに住まわせるのだろう。なかでも「わたし」の鏡に映る「至高的存在」(あなた)の姿は常に眩く輝いている。人生の晩年のドラマは、そういう知己を現実世界で次々と失っていくということであり、それはまた、他人の中にあった自分を次々に失っていくということでもあるのだ。自分の中にある親しい人の存在感はその人が亡くなった後も消えることはないから、人は長生きすればするほど、晩年、その(自分のうちに住む他人と他人のうちに住む自分の数の)非対称性に耐えなければならない。

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posted by 茂木賛 at 09:46 | Permalink | Comment(0) | 生産と消費論

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