先日「境界としての皮膚」の項で、身体の境界としての「皮膚」について述べたけれど、人が身に纏う「布」は、身体境界の社会的な表現であり、まさに「第二の皮膚」と云えるだろう。
“魂の布”松本路子著(淡交社)という本は、日本を含むアジア地域でこの「第二の皮膚」であるところの布づくりに励む、12人の女性作家たちを(美しい作品写真と文章とで)紹介している。表紙カバー裏の紹介文を引用しよう。
(引用開始)
モンスーンアジアの12人の女性作家をめぐる旅は、
スピリチュアルな気配に満ちていた。
かつて布は神への捧げ物として、
また愛する人の無病息災を祈り、
その魂を守るためにと、染め、織られた。
現代の布作家たちもまた、
糸や染料など自然からの生命(いのち)を得て、
その素材を慈しみ、祈るように造形していく。
「魂の布」のいまれる瞬間のきらめき。
そしてその布は、手にした者を立ち去りがたくする
魔力をたっぷりと内に秘めていた。
――「あとがき」より――
(引用終了)
<表紙カバー裏の紹介文>
12人の女性作家とは、
竹染めの白 秦泉寺由子(バリ)
黒檀染めの黒茶 瀧澤久仁子(タイ)
精霊の布 ヴォアヴァン・ポウミン(ラオス)
こころも 真砂美千代(葉山)
錦の織花 サワニー・バンシット(タイ)
あけずば織り 上原美智子(沖縄)
芭蕉交布の彩 石垣昭子(西表島)
柿渋染めの衣 原口良子(西荻窪)
墨・染・織 真喜志民子(沖縄)
蚕衣無縫 安藤明子(多治見)
風の手織り布 真木千秋(あきる野)
ジャワの華布 ジョセフィーヌ・コマラ(ジャワ)
<目次と本の帯より>
の各氏である。本の帯には、“大地のエネルギーを秘めた布をめぐる旅”とあり、12人の居住地(上記リストの括弧内)と作品の写真がある。作家たちのストーリーはどれも素晴らしい。私は、自己の「女性性」を最大限にしてこの本を堪能した。本には、収録作家のギャラリー・ショップ情報も載っているから、興味のある方はコンタクトしてみていただきたい。
このブログでは、「多品種少量生産・食品の地産地消・資源循環・新技術」の四つを「安定成長時代の産業システム」として捉え、そのシステムを牽引するのは「フレキシブルで、判断が早く、地域に密着したスモールビジネス」であると指摘している。
自然素材を用いた多彩な機織・布づくりは、「多品種少量生産・資源循環」の二つに関わっており、12人の女性作家たちが起こしたビジネスは、まさに「フレキシブルで、判断が早く、地域に密着したスモールビジネス」である。12人の皆さんの更なる活躍に期待したい。
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