ここまで「男性性と女性性」「男性性と女性性 II」の項における指摘を纏めると、以下のような対比になる。
Α 男性性=「空間重視」「所有原理」
α 共通時間軸の設定→都市の時間(t = interest)
Β 女性性=「時間重視」「関係原理」
β 身体時間(t = life)の尊重→自然の時間(t = ∞)
ここで「マップラバーとは」の項における議論を思い起こして欲しい。その部分を以下再録する。
(引用開始)
これまで「公と私論」などで展開してきたホームズとワトソンの対比に、このマップラバーとマップヘイターを追加すると、
A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳の働き−「公(public)」−マップラバー
B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体の働き−「私(private)」−マップヘイター
となる。そもそも身体は(六十兆個の)細胞からできているのだから、細胞が究極のマップヘイターだとする福岡氏の説は、この対比とうまく整合するわけだ。ちなみに、ここでいう「脳の働き」とは、大脳新皮質主体の思考であり、「身体の働き」とは、身体機能を司る脳幹・大脳旧皮質主体の思考のことであるから念のため(詳しくは「脳と身体」の項を参照のこと)。
(引用終了)
マップラバーとは、地図大好き人間のことで、男性性と女性性の議論で言えば空間重視の「男性性」と重なる。マップヘイターとは、地図嫌い人間のことで、時間重視の「女性性」と重なる。すなわち上のΑ/αとΒ/βの対比と、このA/aとB/bの対比とが重なってくるわけだ。
A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳の働き−「公(public)」−マップラバー
Α 男性性=「空間重視」「所有原理」
α 共通時間軸の設定→都市の時間(t = interest)
B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体の働き−「私(private)」−マップヘイター
Β 女性性=「時間重視」「関係原理」
β 身体時間(t = life)の尊重→自然の時間(t = ∞)
以上を踏まえ、これまでこのブログで見てきた様々な対比のうち、「公(public)と私(private)」という対比の軸上に乗る、主な項目を並べてみるとしよう。
「公(public)」 「私(private)」
脳(t = 0) 身体(t = life)
都市(t = interest) 自然(t = ∞)
自立 共生
主格中心 環境中心
広場 縁側
マップラバー マップヘイター
Resource Planning Process Technology
効率 効用
子音語 母音語
解糖系 ミトコンドリア系
男性性 女性性
他にもあるだろうが、主なものはこのようなところだろうか。いかがだろう。社会や街づくり、ビジネスや言語システム、人体のエネルギー生成といった複数の系が、「公(public)」と「私(private)」という対比軸の上に、ある広がりを持って集約される様が見て取れるだろう。各対比の詳細については、カテゴリなどから過去の記事を辿ってみて欲しい。
さて、このブログで繰り返し述べてきたことは、これらの対比を認識した上で、尚且つしっかりと両者のバランスを取ることであった。二つの対比を踏まえて、さらにその先へ進もうということであった。
二項の対比や双極性を単に相反するものとしてではなく、違いがさらにその系を次の階層へ発展させる形式として捉えること。「3の構造」でいえば、弁証法のテーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼ、武道の守・破・離といった、発展性を内包したシステムとして考えること。プラグマチズムの創始者・チャールズ・パース流に言えば、連続する推論の実践としてみること。そして自分をその系から外さないこと。その態度をここで「複眼主義」と呼びたい。
複眼主義とは、単にある系の対比とそのバランスを考えるということばかりではなく、複数の系の間の相関も踏まえながら、物事を多面的に考えるということでもある。これからも、新たな対比や、系の相関、そしてそのバランスなどについて考えていきたい。
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