夜間飛行

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男性性と女性性

2011年03月22日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 先回「発音体感」の項で紹介した黒川伊保子さんの著書の一つに、“恋愛脳”(新潮文庫)がある。この本は、男性の脳と女性の脳の違いと、それに基づく男女の機微を探ったものだ。まず、脳の性差について本書から引用しよう。

(引用開始)

 男性脳と女性脳。この二つの脳の決定的な違いは、一ヶ所である。脳梁(のうりょう)と呼ばれる、右脳と左脳を結ぶ場所が、男性脳よりも女性脳の方が「太い」のだ。(中略)
 脳梁の細い男性脳は、女性脳に比べて、右脳と左脳の連携が悪い脳ということになる。二つの映像の違いが、くっきりと際立(きわだ)つ脳だ。つまり、生まれつき、ものの奥行きに強い脳なのである。(中略)
 奥行きに鈍い女性脳は、目の前の世界を、写真のような二次元空間でをなめるように見ている。したがって、近くにあるものをつぶさに観察できる脳なのである。(中略)
 女性脳の情緒は、積分関数なのである。時間軸に、ゆったりと蓄積されていく。男性脳のキーワードが「空間」なのに対し、女性脳のキーワードは「時間」なのである。

(引用終了)
<同書73−104ページ>

このような話は新たな科学的発見によって修整されるかもしれないから、あくまで仮説として考えておいた方がいいだろうが、体験的にも納得できる分析である。

 さて、以前「アフォーダンスについて」の項で、脳は常に「現在進行形」(t = 0)であると論じた。とすると、ここでいう男性脳のキーワードが空間であり、女性脳のキーワードが時間であることと、現在進行形の脳とはどのような相関があるのだろうか。

 男性脳が空間を重視するということを逆から考えれば、独自の時間軸に拘らないということである。ならば、独自の時間軸に拘らない複数の人たちが集まって何かを決める際に必要なのは、基準となる共通の一定な時間軸ではないだろうか。いつまでに何をやるかを決める際に、みなバラバラな時間では何事も前へ進まない。私は、それが今の“1時間は60分、1分は60秒”といった時間軸の発明であり、グリニッジ標準時間であると思う。以前「集団の時間」の項で、都市の時間は金利(t = interest)であるとしたが、その金利(流通価値の基準)は、共通な一定時間軸の存在を大前提としている。

 一方、女性脳が時間を重視するということは、独自の時間軸に拘るということである。以前「アフォーダンスと多様性」の項で、人は常に現在進行形の脳と、一定の寿命を持つ身体(t = life)とを抱えてこの社会に関っている、と書いたけれど、独自の時間軸に拘るということは、この身体の時間(t = life)に拘ることということだろう。女性脳が拘る「時間」は体験の時間であって、けっしてグリニッジ標準時間ではないと思う。同じく「集団の時間」の項で、自然の時間は無限大(t = ∞)であるとしたが、自然は個々の身体時間の集積だから限りが無いのである。

 脳の性差の話はここで終わらない。黒川伊保子さんのこの本には、脳梁の太さという性差の他に、男性脳と女性脳について、次のような分析がある。

(引用開始)

 脳梁(のうりょう)の太さに起因して、男と女は、原初的ないくつかの相違点を持っている(三次元点型認識と二次元面型認識ですね)。この根本的な違いは、男と女の間に、さまざまな悲喜劇をもたらしている、というのはここまで書いた通り。
 ただし、私たちは、異性の脳の機能を後天的に学習しているのである。女性だからといって機械図面が書けないわけじゃないし、男性だからといって全員おしゃべりが不得意なわけじゃない。私たちは、根本的なところで男なら男性脳、女なら女性脳でありながら、その外側にそれぞれ女性脳、男性脳の機能を持っているのである。
 そうして、環境によって、自分の脳の中の男性脳:女性脳の使用比率を変えて社会生活を送っているのである。男よりも男性脳的な女性や、女より女性脳的な男性も、たくさんいる。男女比が偏るような職場では、異性脳が発達している人が、目立って活躍している場合が多いのである。
 それでは、異性脳が発達する人は、どうしてそうなるのだろうか。実は、家族や、学校、職場など、その脳が存在する系での男性脳:女性脳比率に大きく影響されるのである。では、男兄弟が多い女の子は男性脳型になるかというと、それは違う。逆になるのである。
 脳は、常に系でのバランスを取ろうとしている。親友や夫婦のような、たった二人の系であっても、どちらかの男性脳が強ければ、どちらかの女性脳が、これとバランスを取るために強く働くようになる。つまり、男性脳:女性脳比率が七:三の男と付き合う女性は、三:七でなければ男女関係として収まりが悪いということだ。これは、寄り添う二人の相関関係で生まれるバランスなので、同じ男性が、どの女性相手にでも七:三というわけでもない。(中略)
 職場やサークルでも、脳が集まれば、その場での脳の男女比を半々にしようと、皆の脳がいっせいに探りあい、互いに感応するのである。もちろん、無意識のうちに、だけれど。

(引用終了)
<同書95−98ページ>

人は性差に拘らず、ある比率で、男性脳=「空間」重視、女性脳=「時間」重視という、両方の機能を持っているというわけだ。これはとても重要な指摘だと思う。そもそも男性と女性とは同じ人種なのだから、両方の認識機能を持てて当然なのだろう。

 とはいえ、人がある比率で「空間重視」、「時間重視」といった認識の形式を持つことは事実だ。この形式の差は、脳の性差以外にも、自律神経、ホルモンや神経伝達物質、エネルギー生成系、あるいはジェンダー(社会・文化的な性差)など、様々な要素によって作り出されるに違いない。だからここで、この形式の差を、「男性脳と女性脳」ではなく「男性性と女性性」と呼ぶこととしたい。

 「男性性」の特徴は、三次元的な空間認識に優れ、「女性性」の特徴は、二次元的面認識や時間認識に優れている。大切なことは、女性も「男性性」を持つし、男性も「女性性」を持つということだ。人は皆ある比率で「男性性」と「女性性」とを持ち、その比率は、その人が置かれた場所や環境、年齢などによって変化するのである。

 この変化は、黒川さんが“脳は、常に系でのバランスを取ろうとしている”と分析しているように、社会においては、相互補完的な方向に働くようだ。そのことを社会の側から見ると、豊かな社会にとっては、両者のバランスが大切であるということなのである。

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posted by 茂木賛 at 17:24 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

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