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新書読書法(2010)

2011年02月14日 [ 読書法シリーズ ]@sanmotegiをフォローする



 年初に「文庫読書法(2010)」と題して文庫本を紹介したので、今回は「新書読書法(2010)」題して、私が去年読んだ印象深い新書を幾冊か紹介してみよう。ただし重複を避けるために、すでにこのブログで紹介したものは除く。

 「新書」には、フィクションものは少なく、エッセイや評論、専門知識を分かりやすく解説したものなどが多い。私のようにいろいろな分野に興味がある者にとっては、入門書として最適だ。一冊の新書から、興味の横展開具合によってさらに専門書に進むことができる。文庫同様、値段が手ごろで、持ち運びに便利なことも利点である。

1.Art
“三島由紀夫 幻の遺作を読む”井上隆史著(光文社新書)

 去年は平岡公威(ペンネーム三島由紀夫)の没後四十年ということで、様々な本が出版された。この本もそのうちの一つ。“豊饒の海”四部作は発表された時に読んだけれど、40年経って初めて、作品のラストを巡る納得のいく解釈に出会ったような気がする。「皮膚感覚」の項にも書いたけれど、平岡氏は「精神と肉体」という二元論を身をもって追及した人で、最後は「戦後の欺瞞性」を座標軸に据えてそれに体をぶつけて死んでしまった。井上氏の想像するようなラストがあり得たならばその死も無かっただろうけれど、そのためには「精神と肉体」という袋小路的な二元論から脱する、別の契機が必要だったように思う。

2.History
“モーツァルトとベートーヴェン”中川右介著(青春出版社)

 「文庫読書法(2010)」で紹介した“ショパン 天才の秘話”の著者による最新作。ショパンの時代よりも少しさかのぼった18世紀半ばから19世紀初頭のヨーロッパを舞台に、モーツァルトとベートーヴェンの人生とその激動の時代を描く。時代は神聖ローマ帝国、オーストリアとプロイセンの七年戦争、フランス革命、皇帝ナポレオンなど。音楽家が、いわゆる職人から「芸術家」へと変身していく過程もわかりやすい。

3.Natural Science
“胎児の世界”三木成夫著(中公新書)

 1983年初版の名著だが、手元にあるものが1987年版と古かったので、去年改めて2009年版を松丸本舗で買い求め、それを機に再読した。体壁系と内臓系、個体発生と宗族発生、分節性と双極性など、人間と社会についての示唆に富む項目が並ぶ。本が出版されたのは1983年だから、1970年に亡くなった平岡公威氏が読むことはなかったが、もし読んでいたら、「精神と肉体」という袋小路から脱却する契機になったのではないだろうか。著者の三木成夫氏を師と仰ぐ人々には、「視覚と聴覚」などで紹介した養老孟司氏や、「重力進化学」などで紹介した西原克成氏などがある。

4.Social Science
“シンプル族の反乱”三浦展著(KKベストセラーズ)

 このブログでは、これからの安定成長時代を牽引する産業システムとして、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術の四つを挙げているが、そうだとすると人々の嗜好にもそれを支持する傾向が見られる筈で、この本の云うシンプル族の嗜好(1.ものをあまり消費しない。ためない。2.手仕事を重んじる。3.基本的な生活を愛する。)は、その傾向の一端を示していると思う。著者の三浦氏には、以前「街の魅力」の項で紹介した“吉祥寺スタイル 楽しい街の50の秘密”という街の研究本(渡辺和由研究室と共著)もあり、最近は“高円寺 東京新女子街(トウキョウシンジョシマチ)”(洋泉社)という本(SMLと共著)も出しておられる。

5.Geography
“世界の野菜を旅する”玉村豊男著(講談社現代新書)

 「里山ビジネス」の項で紹介した玉村豊男氏の近作。タマネギやキャベツ、ジャガイモやトウガラシ、ナスやサトイモなど、馴染み深い野菜について、その起源と来歴を追った楽しいエッセイ。玉村氏が旅先でその野菜と出会った光景や、料理のつくり方、栽培方法などもある。この本で仕入れた知識をもとに、世界各地の料理を味わうのも良いと思う。

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posted by 茂木賛 at 10:35 | Permalink | Comment(0) | 読書法シリーズ

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