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文庫読書法(2010)

2011年01月04日 [ 読書法シリーズ ]@sanmotegiをフォローする

 これまで「平行読書法」「繰り返し読書法」「立体的読書法」「関連読書法」「時系列読書法」と続けてきた読書法シリーズ、今回は「文庫読書法(2010)」と題して、私が去年読んだ、印象深い文庫本を幾冊か紹介してみたい。

 「文庫」の良さは、値段が手ごろで、小さく持ち運びに便利なことだろう。軽いから寝転んでいても読める。単行本にはなかった解説が付いていたり、著者による「文庫のための後書き」があったりするのも楽しめる。最近は新しく書き下ろされたものも多く、それはそれで楽しめる。

1.Art
“ベーリンジアの記憶”星川淳著(幻冬舎文庫)

 この本の著者星川氏は、私の中学・高校時代の同級生で、先日久しぶりに会った時にこの本の話が出て、そのあとわざわざ彼が送ってくれた。もとの単行本が出版されたのが1995年、文庫になったのが1997年。文庫といえども最近は絶版になるのが早いから、今はなかなか書店では手に入らないかもしれない。ユーラシアとアメリカを繋ぐ陸の橋・ベーリンジアを舞台にした長編小説で、雄大な構想が印象的だ。カバー表紙には、著者と親交のあった写真家・星野道夫氏の遺作が使われている。

2.History
“ショパン 天才の秘話”中川右介著(静山社文庫)

 去年はショパン生誕200年ということで、様々な本が出版された。この本もそのうちの一つ。ショパンが20歳となる1830年前後のヨーロッパを舞台に、同じ時代を生きたロマン派の作曲家たち、ベルリーオーズ、メンデルスゾーン、リスト、シューマンなどの人生を交差させながら、ショパンの青春とその激動の時代を描いている。文庫のための書き下ろし。この本を読んで、さっそくショパン初期のピアノ協奏曲のCDを買った。

3.Natural Science
“性と進化の秘密”団まりな著(角川ソフィア文庫)

 先日「階層性の生物学」の項で紹介した本。単行本は“性のお話をしましょう――死の危機に瀕して、それは始まった”というタイトルで、2005年に哲学書房から出版された。単行本が出たときは読み逃していたけれど、文庫の広告を見て、読むことができた。文庫化に際して、養老孟司氏の解説と、著者による「少し長いあとがき」が加えられた。人間と社会について示唆に富む良書である。

4.Social Science
“セーラが町にやてきた”清野由美著(日経ビジネス人文庫)

 単行本は2002年に出版され、2009年に文庫になった。単行本でも読んでいるけれど、文庫になったので改めて目を通した。セーラ・マリ・カミングスさんは、「内と外」の項で書いた「小布施」の街の活性化に尽くしておられる。日本語と英語のバイリンガルで、優れたマージナル・マン(woman)に違いない。著者による「文庫版のためのあとがき」を読むと最近のセーラの活躍がわかる。セーラさんにお会いしたことはないけれど、小布施に注目している一人として、彼女の活動を応援したい。

5.Geography
“東京ひがし案内”森まゆみ著(ちくま文庫)

 著者の森まゆみ氏は、地域雑誌「谷中・根津・千駄木」を創刊し、建築の保存や不忍池保全などにも関ってこられた。代表作に“鷗外の坂”(新潮文庫)がある。この本は、著者が東京の東側を中心に案内したもので、雑誌に掲載されたものが去年文庫化された。地図やイラストもあって楽しい。持ち運びに便利だから、この本を手に新春の東京を散策するのも良いと思う。

 ところで、「文庫」は、もともと単行本として出され、その後評価を得たものが文庫化される場合が多かった。だから、当たりはずれの少ないことが文庫の良さのひとつだった。最近は、その後の評価に関らず文庫化されるケースが多く、また冒頭で述べたように文庫として新しく書き下ろされるものも多いから、結果的に文庫でも早く絶版にする慣習が一般化してしまったようだ。出版社は読者の声に耳を傾け、いったん絶版にしたものでも、これはという本は是非復刊して欲しいと思う。

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posted by 茂木賛 at 10:38 | Permalink | Comment(0) | 読書法シリーズ

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