夜間飛行

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バイリンガルについて

2010年11月30日 [ 言葉について ]@sanmotegiをフォローする

 先日“日本語は敬語があって主語がない”金谷武洋著(光文社新書)という本を読んでいたら、歌手の宇多田ヒカルが、「作詞する際に、英語と日本語では気持ち的にどう違うか」という質問に(英語で)答えた文章が載っていた。周知のように宇多田さんはバイリンガルである。

(引用開始)

There were differences that came out naturally through the process of writing in a different language, obviously. (…) The nature of Japanese and English is just so different. Both have pros and cons, but I found that with English I could be more upfront, powerful, in a good way, which included things like humour and sexyness and playfulness and some poetic language that, in Japanese, might sound all too much like, a weirdness or too much goofiness. So there was a new freedom with English that really let me make new things that I don’t think I would come up otherwise.
(どちらの言葉を使うかによって、出てくるものが明らかに違いますね。自然にそうなるんです。日本語と英語って全然違うものだから。どっちにも長所と短所がありますけど、英語だったら、遠慮なくはっきり言えるし、パワフルな言葉遣いができるんですよ。もちろんいい意味でね。それはユーモアとかセクシィさとか遊び心、あるいは詩的な表現ができるってことにもなる。日本語で同じことを言ったら、ぜんぜん変で格好がつかなくて、とても使えないんですけどね。だから英語には自由がある。日本語だったら言えないことも大丈夫ですから)[訳:金谷]

(引用終了)
<同書179ページ>

尚、この本の著者金谷氏については、以前「日本語の力」の項でその著書“日本語は亡びない”(ちくま新書)を紹介したことがある。

 前回「騙されるな!」の項で、日本語的発想における「自他認識」の薄弱性について、

(引用開始)

 「自他認識」の薄弱性は、話し手と聞き手が一体化しやすく「環境や場を守る力」は強いのだが、話し手が環境や場に縛られすぎると、事の本質が見えなくなることがある。

(引用終了)

と書いたけれど、このことと、宇多田さんの云う「英語だったら、遠慮なくはっきり言えるし、パワフルな言葉遣いができるんですよ。(中略)日本語で同じことを言ったら、ぜんぜん変で格好がつかなくて、とても使えないんですけどね。だから英語には自由がある。」という発言とは、日本語(と英語)の特徴について、同じ見方をしていると思う。話し手が環境や場に縛られすぎると、遠慮なくはっきりものを言い難(にく)くなり、それが重なると、聞き手との間で次第に事の本質が見えなくなってしまう。

 バイリンガルであれば、このブログで見てきた、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
B Process Technology−日本語的発想−環境中心

という対比がよく実感できるのではないだろうか。「エッジ・エフェクト」の項で書いた通り、かく云う私も、小学生のときにニューヨークで暮らしたことがあり、その後も長くアメリカで暮らしてきたから、日本語と英語のバイリンガルである。

 バイリンガルはまた、「エッジ・エフェクト」や「パラダイム・シフト II」の項で紹介したところの“マージナル・マン”たる資格がある。マージナル・マンとは、

(引用開始)

 異質な諸社会集団のマージン(境域・限界)に立ち、既成のいかなる社会集団にも十分帰属していない人間。境界人、限界人、周辺人などと訳される。マージナル・マンの性格構造や精神構造、その置かれている状況や位置や文化を総称して、マージナリティーと呼ぶ。マージナル・マンの概念は、1920年代の終わり頃に、アメリカの社会学者バークが、ジンメルの<異邦人>の概念(潜在的な放浪者、自分の土地を持たぬ者)の示唆を受けて構築した。(中略)

 マージナル・マンは、自己の内にある文化的・社会的境界性を生かして、生まれ育った社会の自明の理とされている世界観に対して、ある種の距離を置くことが可能である。それゆえにマージナル・マンは、人生や現実に対して創造的に働きかける契機をもっている。

(引用終わり)
<「部落問題・人権辞典ウェブ版」より>

といった人たちのことだ。

 全国のバイリンガルの諸君諸姉、ビジネスや学問、その他「公(public)」に関ることについて、環境や場の雰囲気に怯むことなく、「人生や現実に対して創造的に働きかけ」ていこうではないか。

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posted by 茂木賛 at 13:02 | Permalink | Comment(0) | 言葉について

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