夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


母音言語と自他認識

2010年11月16日 [ 言葉について ]@sanmotegiをフォローする

 先日「日本の生産技術の質が高い理由」の項で、

(引用開始)

日本語が母音語であることと、それに伴って起こる、日本語的発想における「自他認識」の薄弱性

(引用終了)

と書いたけれど、このことについては、「脳における自他認識と言語処理」や「社会の力」の項で、以下の循環運動(IVから再びIへ)として説明した。

(引用開始)

I  日本語には身体性が強く残っていて母音の比重が多い(文化的特徴)

(1)言語野は左脳にある
(2)社会と母国語の学習によって脳神経回路が組織化される

II  日本人は母音を左脳で聴く(身体運動意味論などより)

(3)脳の自他認識機能は右脳にある
(4)人は発話時に母音を内的に聴く
(5)日本人は発話時に自他分離の右脳をあまり刺激しない

III 日本語は空間の論理が多く、主体の論理が少ない(脳科学の知見より)

IV 日本語に身体性が残り続ける(社会的特性)

(引用終了)

 詳しくは「脳における自他認識と言語処理」や「社会の力」などの項を見て欲しいが、ここではすこし順番を変え、言葉をさらに補足しながら、この循環運動を説明してみよう。また仮説の域を出ないことも多いだろうが、興味深い理論だと思う。

1. 人の言語野は左脳にある
2. 子供ははじめ右脳経由で言葉を覚える
3. 習熟すると人は左脳(言語野)で言葉を処理するようになる
4. 人の脳の自他認識機能は右脳にある

5. 日本語には身体性が強く残っていて母音の比重が大きい
6. 英語は子音の比重が大きい

7. 人は発話時に母音を内的に聴く
8. 社会と母国語の学習によって脳神経回路が組織化される
9. 母親と社会から日本語(母音語)を聴かされて育つと、母音に習熟し、発話時に母音を左脳で聴くようになる
10. 母親や社会から英語(子音語)を聴かされれて育つと、母音に習熟せず、発話時に母音を右脳で聴き続ける

11. 日本人は発話時に自他分離の右脳をあまり刺激しない
12. 欧米人は発話時に自他分離の右脳を刺激する

13. 日本語は容器(空間)の比喩が多く、擬人の比喩が少ない
14. 英語は擬人の比喩が多く、容器(空間)の比喩が少ない

15. 日本語は空間(環境や場)の論理が多く、主体の論理が少ない
16. 英語は主体の論理が多く、空間(環境や場)の論理が少ない

17. 日本語的発想は環境中心で、環境と一体化しやすい
18. 英語的発想は主格中心で、環境と一体化しにくい

19. 日本語に身体性が残り続け、母音の比重が大きくあり続ける
20. 英語は子音の比重が大きくあり続ける

 いかがだろう。複雑で分りにくいかもしれないが、この循環運動が理解できれば、日本語のいろいろな問題がよくわかるようになるのではないか。さらに詳しくは「言葉について」の各項、「脳における自他認識と言語処理」でも引用した“日本人の脳に主語はいらない”月本洋著(講談社選書メチエ)などを参照して欲しい。

 ところで「脳における自他認識と言語処理」の項では、月本洋氏の同書について、

(引用開始)

 尚氏は、日本語が世界の言語の中で、母音を最もよく発音する言語であること、日本語は主語や人称代名詞をあまり使用しない、という二点から、「母音の比重が大きい言語は主語や人称代名詞を省略しやすい」(第5章)と仮定されているが、これは(氏も書かれているように)まだ検証が足りず、私の今までの考察(「日本語について」「視覚と聴覚」などで見た日本語に擬音語や擬態語が多いこと)からして、むしろ原因と結果を逆転させて「主語や人称代名詞を省略する日本文化は母音の比重が大きい」とした方が自然だと思われる。

(引用終了)

と書いたけれど、よく考えてみれば「母音の比重が大きい言語は主語や人称代名詞を省略しやすい」ということと、「主語や人称代名詞を省略する日本文化は母音の比重が大きい」こととは、同じ現象を言い換えたに過ぎないだけかもしれない。いずれにしても、

I  日本語には身体性が強く残っていて母音の比重が大きい(文化的特徴)
II  日本人は母音を左脳で聴く(身体運動意味論などより)
III 日本語は空間の論理が多く、主体の論理が少ない(脳科学の知見より)
IV 日本語に身体性が残り続ける(社会的特性)

という循環運動(IVから再びIへ)が大切であると思う。

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社団法人全国学校図書館協議会」から、私が編集協力させていただいた「21世紀を生きる学習者のための活動基準(シリーズ 学習者のエンパワーメント 第1巻)」と「学校図書館メディアプログラムのためのガイドライン(シリーズ 学習者のエンパワーメント 第2巻)」の二冊が発行されました。

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posted by 茂木賛 at 13:26 | Permalink | Comment(0) | 言葉について

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