前回「重力進化学」の項で、「交感神経と副交感神経のバランスによって我々の健康が保たれていることは免疫学のよく教えるところ」と書いたけれど、今回は、その交感神経と副交感神経について整理しておきたい。
松丸本舗で買った“オキシトシン”シャスティン・モベリ著(晶文社)から引用しよう。
(引用開始)
交感神経系と副交感神経系は、ある意味で正反対の働きをしており、お互いとの均衡を保っている。交感神経系は<闘争か逃走か>反応に関わっていて、心拍数と血圧を上昇させる。一方、副交感神経系は消化や栄養の蓄積に関与する。消化や栄養の蓄積は、<闘争か逃走か>状態ではペースが落ちるが、<安らぎと結びつき>状態では活発化する。健康で幸福であるには、この二つのシステムのバランスがとれていることが重要だ。
(引用終了)
<同書61−64ページ>
ここでいう<闘争か逃走か>、<安らぎと結びつき>とは、環境に対する人の相反する生理学的反応を指す。この二つについてさらに同書から引用しよう。
(引用開始)
正反対の反応
<闘争か逃走か>反応では、次のような特徴が見られる。
・心拍数の増加と、心拍出量(一回の拍動で押し出される血液量)の増加
・血圧上昇
・筋肉での血液循環の増大
・肝臓からのグルコース放出による余分の燃料補給
・ストレスホルモンの血中濃度の上昇
<安らぎと結びつき>反応では、次のような特徴が見られる。
・血圧の低下と心拍数の減少
・皮膚と粘膜での血液循環の増大(たとえば、顔や体のほかの部分がばら色になる)
・ストレスホルモンの血中濃度の低下
・消化、栄養の吸収と貯蔵が効率的になる(長期にわたれば体重が増える)
(引用終了)
<同書45ページ>
ついでに自律神経系そのものの説明についても同書から引用しておこう。
(引用開始)
自律神経系
1 心臓、血管、消化管、肺などの活動を制御する。
2 交感神経系と副交感神経系から成る。
3 求心性の感覚神経を含む。
交感神経は
・運動時に活性化している。
・<闘争か逃走か>反応の身体的反応を司る。
・脊髄から出ている。
・ノルアドレナリンを主要な神経伝達物質として用いる。
副交感神経は
・消化が行われているとき、活性化している
・<安らぎと結びつき>作用による身体的適応に関連している
・脳幹から出ているものと脊髄下部から出ているものがある。
・アセチルコリンを主要な神経伝達物質として用いる。
(引用終了)
<同書60ページ>
いかがだろう。身体における交感神経と副交感神経のバランスは、環境に対する人の相反する反応、すなわち<闘争か逃走か>と<安らぎと結びつき>とのバランスそのものなのである。
交感神経と副交感神経については、以前「免疫について」の項でも触れたことがある。
(引用開始)
私の興味は今のところ少なくとも三つの視点から成り立っている。一つは自分の健康管理だ。体の健康を保つためには免疫の知識が欠かせない。参考になるのは「これだけで病気にならない」西原克成著(祥伝社新書)や「自分ですぐできる免疫革命」安保徹著(だいわ文庫)などなど。
もうひとつは、上の安保徹教授(新潟大学大学院)がその重要性を説かれている、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスと、私が『「理性」と「感性」』の中で書いたこととの関連だ。
安保教授は、交感神経優位が興奮する体調を生み、副交感神経優位がリラックスする体調を生むと述べておられる。一方、私が指摘したのは、「生産」は「理性的」活動を中心とし、「消費」は「感性的」活動を中心としているということだ。
多くの場合、理性的活動が仕事の緊張を生み、感性的活動が余暇のリラックスした心理状態を支えているから、交感神経優位の体調が「生産活動」には必要で、その逆に、副交感神経優位の体調が「消費活動」を支えている、という対比が可能となる。「生産−理性的活動−交感神経優位」、「消費−感性的活動−副交感神経優位」というわけだ。(後略)
(引用終了)
この「自律神経系」と「生産と消費論」のアナロジーについては、また項を改めて考えてみよう。
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