夜間飛行

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対位法のことなど

2010年06月22日 [ アート&レジャー ]@sanmotegiをフォローする

 以前「エッジ・エフェクト」や「サラサーテのことなど」で紹介したNHK-BSの「名曲探偵アマデウス」というシリーズ番組は、その後も好調で、この間の放送はバッハの「組曲第3番」だった。組曲の中でも、とくに弦楽器(とチェンバロ)だけで演奏される第2曲目のアリアは素敵だった。この曲のバイオリンはG線(一番太い弦)だけで演奏されるので、曲が「G線上のアリア」と呼ばれることは良く知られている。

 この曲の中ほどに、“対位法”によって作られた部分がある。対位法とは、独立した異なる旋律を組み合わせる作曲技法で、バッハが得意とした技法である。通常は、伴奏が振り子のように低音パートを刻み、その上で主旋律が自由にメロディーを奏でるのだが、対位法では、複数の楽器が、対等に、独立した旋律を奏でる。複数の楽器が、まるで言葉を語り合うように調和しながら、それぞれ大事なメロディーを奏でる。そのことで、曲に深みが醸し出されるわけだ。

 この“対位法”は、前回「ハーモニーとは」の項で引用した石井宏氏のいう、「音がお互いに自己を主張しながら、立派に溶け合ったハーモニー」のあり方を、高度に示す西洋音楽の真髄だと思う。

 書道家の石川九楊氏は、“「書く」ということ”(文春新書)という著書の中で、

(引用開始)

 東アジアは書字中心の言語であり、その文化の中心に書があり、対する西欧は声中心の言語であり、その文化の中心に音楽がある(後略)。

(引用終了)
<同書122ページ>

と書いておられる。音楽を文化の中心に持つが故に、西欧社会は、互いに自己を主張しながら、全体として調和(ハーモニー)を醸す術に長けているのかもしれない。ハーモニーを醸す術が効かないと、自己主張が暴走して、不協和音と破壊を引き起こすけれど。

 今私の手元にある「G線上のアリア」は、チェロ奏者ヨーヨー・マ氏の”SIMPLY Baroque”(Sony Records)というCDの中に収められたものだ。マ氏については、「エッジ・エフェクト」の項で“マージナル・マン”の代表選手として紹介したけれど、中国人を両親として生まれ、パリで育ち、ニューヨークへ移り住んだ氏が、西洋音楽の真髄をどのように演奏するか、もう一度じっくり聴いてみよう。

 「組曲第3番」はバロックの名曲ということで、「名曲探偵アマデウス」の演奏では、ティンパニーやトランペットなど全てバロック時代の「古楽器」が使用された。ティンパニーの古楽器は、今のものよりも小ぶりでスティックの先端も木製なので、今の柔らかい音に比べてより硬い音がする。トランペットは、指で押さえるピストンが無い。音は全て息でコントロールしなければならないので、音がソフトに響く。第1曲目の序曲は、ニ長調の祝祭的音楽、第2曲目は弦楽器(とチェンバロ)だけで演奏される(いわゆるG線上の)アリア、第3曲目ガボットは、17−18世紀にフランスで流行した二拍子の軽快な舞曲。古楽器による演奏は、なかなか味わい深かった。

 古楽器といえば、先日、NHK-BSのショパン生誕200年を記念する番組で、ピアニスト仲道郁代さんが、ショパンの時代(19世紀)に使われたピアノ「プレイエル」を使って、当時の音を聴かせてくれた。演奏は今年の2月21日、サントリーホールで行われたもので、放送された曲目は、“ワルツ嬰ハ短調”と“練習曲ホ長調「別れの曲」”の二曲。「プレイエル」の濁らない響きにより、曲の持つ繊細さが過不足なく表現されていて、これもとても良かった。

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posted by 茂木賛 at 05:27 | Permalink | Comment(0) | アート&レジャー

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