以前載せた、読者(千夏さん)との対話編「ジェットストリーム」が好評だったので、アーティストの山本峰規子さんとの対話編をお届けする。山本さんとは、この冬、共通の友人のパーティーで知り合った。最初のところはそのパーティーの話題から始まる。ほのぼのとした山本さんのトークを楽しんで戴ければと思う。
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茂木:昨日のセインさんのパーティーは楽しかったですね。そのときお話した私のブログ・アドレスをお送りしておきます。画面の右バナーにある「茂木賛の世界」をクリックしていただくと、60年代のアメリカを舞台にした小説(タイトルは「太陽の飛沫」連載中)もあります。お時間のあるときにでもお読みくだされば嬉しく思います。
山本:こんにちは! 山本峰規子です。
さっそくメールをいただき、どうもありがとうございます。ふだんは夕方から出掛けることやパーティーなるものを大変苦手としている私、昨日はほんとうに例外的にセインさんのイベントに参加して、「行ってよかった♪」と初めて思いました。ホストのお人柄でしょう、茂木さんをはじめあたたかく,開かれた感じのいい人たちが集まってこられていましたね。冷え切った夜空の下をほんわかした気分で歩いて帰れました。
茂木さんのブログは教養文庫を少しずつ読んでいるような気分になりますね。小説はひょいと長距離飛行に誘われるような。わたしももうちょっとまじめに文章磨かねばと思いました。
茂木:ブログや小説へのコメント有り難うございます!山本さんのHPも拝見しました。
まだ少ししか見ていませんが、フェルメールの絵の牛乳が水浸しになるパロディなど面白いですね。その関連ですが、静止画の中に動きをはめ込むスタイルのアーティストに、ジュリアン・オピーという人がいます。去年の11月ごろ日暮里のSCAIというところで個展をやっていました。
僕は何故かこの「静止画の中に動きをはめ込む」というアートコンセプトに惹かれています。山本さんのフェルメールなども、その延長線上にあるな、などと思いました。
キャラクター関連も、Pokojを始めとしてかわいいですね。
日本的でありながら、なにか北欧的な風合いがあります。
環境に寄り添いながら、一方で個としての芯を通す山本さんのお人柄を反映しているのでしょう。取り急ぎ御礼まで。
山本:こんにちは。私は「名画」とされる物を観ていると,”その先”の物語をくっつけて遊びたくなります。ジュリアンさん、ラインの感じとか親近感を覚えますね。拙作に北欧の雰囲気を感じ取るといわれたのは、茂木さんがはじめてです。じつは私はまったくアカデミックな絵の勉強をしたことがなく、大学では西洋史専攻、北欧史のつまらない論文出して世間に出てきました。まったく美術に関係ない専攻だったのですが・・・茂木さんの鋭い洞察におどろきです!ちなみにイラストや版画を始めた頃、ベルギーのエルジェ(TIN TINシリーズ)の色使いをナビにしていました。うむ、どこかジュリアン・オピー氏の絵と通ずるものがありますね〜。ではでは
山本さま:北欧の件は、Pokojという名前からの連想もありました。「慧眼」の慧は、ブログに書いた三慧からでしょうか。有り難うございます!ところでセインさんのミドルネーム、あのあと選考で「鮎太郎」になりましたよ。たしか山本さんのご推薦でしたね。いいネーミングだと思います。こんどセインさん宛のメールのあて先に使ってみてください。
山本:こんにちは!茂木さんは北欧語もご存じなのですね。確かに「i」「y」の発音の代わりに「j」を使う癖があります。Pokojはじつはチェコ語で「ポコイ」とよみます。たまたまキャラクターに名前を付けてといわれたとき、チェコ旅行前で手元にチェコ語単語集があり、ぱらぱらめくってこの単語が目にとまり・・・チェコ語は他の東欧語同様、日本人には耳に突っかかるような難しい発音が多く、この単語はちょっと例外的にかわいい響きがあるようにおもいまして。意味は「部屋」です。「きのこ」という意味の単語もかわいい感じだったのですが、うさぎにきのこではうさぎシチューみたいだな〜と、やめておきました。
「鮎太郎」の名付け人にもなれて光栄です!
愛嬌ある響きがセインさんのキャラにぴったりだと自分では思います。
パーティーの最中に決まったのですか? もうちょっといればよかったなあ。
ではでは♪
茂木:お元気ですか。1月の22日から24日にかけて信州斑尾・飯綱へ行って来ました。斑尾に住む友人が北欧スウェーデンの歌手のコンサートを企画し、また別の友人から飯綱に持つ開店休業のペンションをどうしたらよいか相談されていたので、併せて回って来ました。北欧スウェーデンの歌手は、インガ・ユーソという名の、北欧伝統音楽(ヨイク)を継承する高名な人で、山本さんが北欧史を勉強されていたことを思い出しました。彼女の東京でのコンサートの様子をその友人がブログに書いていますので、添付しておきますね。
北信地方は、私(茂木)の本籍地でもあります。祖父の代に東京へ出てきてしまいましたから実際に住んだことは無いのですが、友人たちとの繋がりなどもあり、なんとなく縁を感ずる土地です。出かけたときはあまり降りませんでしたが、数日前からの深く積もった雪が新鮮でした。
山本:こんにちは。私は立春の翌日1つ年を取りましたが、達者に過ごしております。茂木さんもとても寒そうなところにお出掛けでも、お元気そうでなによりです。他のヨーロッパ語とは異なる独特の抑揚があり、よく音楽的といわれるスウェーデン語。すこーしだけ習いましたが、もう「ありがとう」しか覚えていません。スウェーデンの人たちの素朴で誠実なふんいき、北信の地にぴったりだったことでしょう。スウェーデンの田舎の風景は、日本の東北や北海道の田舎とよく似ていました。スウェーデンの人も同じようなことをいってました。
今日は春のようですが、また気温は高低するらしいです。
どうぞご自愛ください。
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山本さんとの対話は以上だが、“セインさん”というのは、作家のデビッド・セイン氏のことで、氏は都内で英語学校も開いておられる。
「鮎太郎」という名前についてのエピソードにも触れておこう。セイン氏は、David A. Thayneというお名前なのだが、ミドルネームのAは、とくに名前が決まっているわけではないという。そこで氏は今回のパーティーで、参加者全員に対して、これはという名前を(今年限定で)つけて欲しいと募った。皆による審査の結果、日本の古いものに興味を持つセインさんに相応しいということで、山本さんの「鮎太郎」が選ばれたというわけである。
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