先回「牡蠣の見上げる森」の項で、森と海の食物連鎖について書いたけれど、森と海について学ぶことは、流域思想の研究に欠かせない。今回は、私が最近読んだ森に関する本を、比較的入手しやすい新書の中から5冊ほど選んで、本の帯やカバーの紹介文と共に紹介しよう。
1.“いのちを守るドングリの森”宮脇昭著(集英社新書)
(引用開始)
環境保全のために欠かせない樹木や植物。誰もがその大切さを知っているが、ただ植林すれば良いというものではない。その土地本来の樹木(潜在自然植生)を見分け、それを主木として森を作ってこそ、地震や風水害に耐え、人命を守る防災・水源林の機能が備わるのだ。日本においてはいわゆるドングリと呼ばれる実をつけるカシ、ナラ、シイ、またタブノキなどの樹種がそれにあたる。なぜ土地本来の樹木からなる森が重要なのか、そしてそれはどう作ったらよいのか。日本、国際的にも植物生態学の第一人者である著者が地震の研究成果、経験をふまえて語る。
(引用終了)
<同書カバーより>
宮脇氏は長年世界各地で植林活動をされている。宮脇氏には、他に“いのちの森を生む”(NHK出版)や“木を植えよ!”(新潮選書)などの著書がある。
2.“森林と人間−ある都市近郊林の物語”石城謙吉著(岩波新書)
(引用開始)
北海道苫小牧市の郊外に広がる、かつては荒れ果てていた森林。そこで一九七〇年代以降、自然の再生力を尊重する森づくりが進んだ。草花、小鳥、昆虫、そして小川のせせらぎ……。市民の憩いの場として、また森林研究の場としても知られる豊かな自然空間は、どのようにして生まれたのか。「都市林」のあり方を示唆する貴重な体験記。
(引用終了)
<同書カバー裏より>
北海道大学苫小牧地方演習林(現苫小牧研究林)長として、長年研究・実践に携わってこられた石城氏の体験記である。このような素晴らしい森林が近くにある苫小牧市民は幸せだ。
3.“森の力−育む、癒す、地域をつくる”浜田久美子著(岩波新書)
(引用開始)
森と人は、関わることで共に健やかになってゆく。手入れ不足による人工林の荒廃や後継者離れの林業など、日本の森が抱える問題を超えて活路を見出そうとする人びとは、森に何を見ているか。森の幼稚園、森林セラピー、地域材利用活動、森林バイオマス、木造建築技術の伝承……森との新しい関わり方を実践する現場からのレポート。
(引用終了)
<同書カバー裏より>
森と関わる様々なビジネスやNPO活動を紹介した本。これらがさらに、「流域思想」に基づいて河川や海の活動と連携すると面白いと思う。
4.“森を歩く 森林セラピーへのいざない”田中敦夫著(角川SSC新書)
(引用開始)
近年、耳にするようになった「森林療法」や「森林セラピー」という言葉。これまでは感覚的にしか捉えられていなかった森の持つ力を、科学的に解明しようという研究も始まった。そのひとつが林野庁を中心とした「森林セラピー事業」。2009年3月現在、全国に31ヶ所の森林セラピー基地、4ヶ所のセラピーロードが認定されている。本書では森林療法の成り立ちや施術の方法だけでなく、ドイツのクナイブ療法についても紹介、森林が人を癒す仕組みについて考察した。さらにおすすめの森林セラピー基地10ヶ所もルポ。
(引用終了)
<同書カバーより>
森に関するビジネスやNPO活動のうち、森林セラピーについて詳しく語った本。「元気なリーダー」の項で触れた、長野県飯山市の活動も紹介されている。
5.“照葉樹林文化とは何か 東アジアの森が生み出した文明”佐々木高明著(中公新書)
(引用開始)
ヒマラヤから西日本に広がる照葉樹林帯。そこでは森によって育まれた共通の文化が生まれた。モチやナットウを食べ、カイコや漆を利用する。高床吊り壁の家に住み、山の中にあの世があると考える……。本書では、日本文化のルーツでもある照葉樹林文化の特徴を紹介すると共に、照葉樹林文化論の誕生とその展開を概説。さらに長江文化や稲作の起源との関連について最先端の研究者との座談会を付した、照葉樹林文化論の決定版。
(引用終了)
<同書帯より>
大陸までを含めた、広い視野で森の文明を展望する。列島の文化論については、「関連読書法」で紹介した、“東西/南北考−いくつもの日本へ−”赤坂憲雄著(岩波新書)とのつながりも興味深いところだ。
以上5冊を紹介したが、森に関する本は他にも沢山ある。これからも、歴史や街づくり、流域思想などと結びつけながら、「森」について勉強していきたい。
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