集英社の“週間鉄道絶景の旅”シリーズ(全40巻)が先日完結した。創刊号発売が昨年の6月だから、およそ10ヶ月間、ほぼ週一冊のペースで刊行されてきたことになる。私は巻頭の「絶景俯瞰パノラマ地図」に惹かれて全巻購入してきた。一冊の値段は580円だけれど、地図のために40冊も買ってしまうのだから、私はそうとうのマップラバーなのだろうか。
そもそも地形とは立体的なものである。本来立体的なものを紙という平面上に書こうとするものだから、平面地図はどうしても無理が生じて多くの情報が欠落してしまう。それを補うために、地図には様々な記号や色彩のグラデーションが用いられるわけだ。それはそれで面白いけれど、やはり物足りない。写真技術やデジタル技術が発達した今、地形をありのままに眺めることができる立体地図の出番が来たと思う。
“週間鉄道絶景の旅”シリーズのパノラマ立体地図は、紙面に印刷されているわけだからまだ一定視点からの俯瞰的なものに留まっているけれど、iPadなどの電子書籍アプリによって、視点を360度自由に操作したり、拡大や縮小ができるようになればもっと面白いだろう。
このシリーズの売りは、勿論「絶景俯瞰パノラマ地図」ばかりではない。創刊号にある宣伝文から引用しよう。
(引用開始)
ページを開けばリアルに伝わってくる大自然と鉄道の魅力。名所やグルメなど沿線各地の情報も満載。旅に役立つ一冊にもなる。旅に出る人に、そして旅を想う人に――。まだ見ぬ日本に思いをはせる『週間鉄道絶景の旅』、創刊。
(引用終了)
ローカル線の魅力、温泉地の情報など、地図以外にも面白い記事が沢山ある。写真も良い。もともと私の興味は巻頭のパノラマ地図にあった筈だけれど、最近、巻末の列車図鑑にも興味が横展開しつつある。シリーズが完結したところで、一巻ずつゆっくりと読んでみたい。シリーズは、
1.北海道(5巻)
2.東北(9巻)
3.関東・甲信越(5巻)
4.東海・近畿・北陸(10巻)
5.中国・四国(7巻)
6.九州(4巻)
と6つの地域に区分けされているから、地域ごとにまとめて読むのも面白いかもしれない。
さてこのシリーズ、前回「時系列読書法」で紹介した関裕二氏の別の著書、“古代史謎めぐりの旅”(ブックマン社)二冊(I奈良・瀬戸内・東国・京阪編、II出雲・九州・東北・奈良編)と一緒に、該当エリアのパノラマ地図を眺めると、古代史と地形とのかかわりがより深く理解できて楽しい。たとえば九州と第7巻「九大本線/日田彦山線」、出雲と第5巻「山陰本線」、東北と第29巻「奥羽本線」などなど。
日本列島には山が多い。山を御神体として祀ってきた人々の気持ちもこの地図を見ているとよく分かる。また、「牡蠣の見上げる森」で紹介した宮城県唐桑町流域のように、山河のある地方には、まだまだ流域思想が残っていると思う。近い将来、電子書籍に立体地図と古代史の本、流域の資料などを入れて、各地を旅行してみたいものである。
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