“スローな未来へ” 島村奈津著(小学館)を読む。島村奈津さんはこれまで、“スローフードな人生!”(新潮文庫)、“スローフードな日本!”(新潮社)など、地域社会と「食」の関わりについて書いてこられた。この作品は、サブタイトルに“「小さな町づくり」が暮らしを変える”とあるように、日本各地(とイタリア)の元気な街そのものを取材したものだ。本の帯の紹介文を引用しよう。
(引用開始)
日本の10地域とイタリア現地取材 渾身レポート
“ないものねだり”から“あるものさがし”へ。
自分たちの町は自分たちで創る。
自分たちの暮らしは自分たちで守る。
――ここには、日本の地方都市の未来に関わるヒントが込められている。今こそ、人間サイズの町づくり「スローシティ」に学べ!!
まだまだ日本も捨てたもんじゃない!
(引用終了)
この本を読みながら思うのは、元気な街にはかならず元気なリーダーが居るということである。そのリーダーが周りの人達を活性化に巻き込んでいく。リーダーはいわば街活性化の原動力だ。この本にはそれらの魅力的なリーダーたちが描かれている。本の帯裏からその人たち等のことばを引用しよう。
(引用開始)
「町並み保存の秘訣は、足し算の開発ではなく引き算の町づくり」(愛媛県内子町・岡田文淑さん)
「おいしい町は美しい」(イタリア・カステルノーヴォのマルコーニ町長)
「美しい村や町を失うことは、日本の文化や歴史の源泉を失うこと」北海道美瑛町・浜田哲町長)
「町の自慢?コンビニがないことで〜す」(宮城県加美町の小学生)
「本当においしいものは足元にあるじゃないか」(山形県鶴岡市『アル・ケッチャーノ』シェフ・奥田政行さん)
「今1,500人の村民がたとえ1,000人になっても村民が幸せなら、愛する地元で暮らせるなら、それが一番」(山形県早川町・辻一幸町長)
「地産地消も、地域の料理力を上げるのも普通の主婦からが一番」(大分県由布院『南の風』田井修二さん)
「できやん理由は探さへん」(三重県多気町「仕掛け人塾」キャッチフレーズ)
「これからは山村もしたたかに都会から人を連れてくる時代です」(岩手県葛巻町・鈴木重男町長)
「たった人口1800人の小さな村に、都会にはない“人生の師”がごろごろいるんです」(東北大学・新妻弘明さん)
(引用終了)
これだけだと分かりづらいかもしれない。詳しくはぜひ本文を読んでリーダーたちの活躍に触れていただきたい。リーダーの役割については以前、「リーダーの役割」の項で述べたので、併せてお読みいただければうれしい。尚、この本で紹介された日本の10地域は次の通り。
1. 宮城県加美町
2. 北海道美瑛町
3. 埼玉県小川町
4. 山形県鶴岡市
5. 愛媛県内子町
6. 大分県由布市由布院
7. 岩手県葛巻町
8. 滋賀県高島町
9. 三重県多気町
10. 島根県海士町
どこも訪ねてみたい魅力的な街である。
ちなみに私も先日、元気な街のリーダーとお会いした。以前「競争か強調か II」でご紹介した、友人の主催する「斑尾国際音楽村Projectライブ」が今年も開催されたので応援に行ったのだが、そのときにお会いした長野県飯山本町商店街理事長の滝澤博信さんがその人だ。今回のライブ・コンサートは、斑尾だけではなく前日に飯山市でも開催されたので、滝澤さんとお会いする機会に恵まれた。今回招かれた音楽家は、北欧・北極圏の音楽“ヨイク”を歌うインガ・ユーソさんとパーカッショニストのハラール・スクレルーさんのデュオだった。飯山市でのライブの模様などはその友人のブログに詳しい。
飯山市は、斑尾山の麓に位置し、和紙や仏壇などの伝統工芸が盛んな街である。飯山市には今年春、素朴でたくましいお年寄りの人形で有名な高橋まゆみさんの作品を集めた“高橋まゆみ人形館”がオープンする予定だと聞く。いずれまた訪れて、友人や滝澤さんと一献傾けながら、街づくりとスモールビジネスの役割などについて語り合いたい。
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