「興味の横展開」を仕事に活かすということで「個人事業主」の項を書いたけれど、「興味の横展開」という考え方は、勿論、勉強・学習にも活かすこともできる。ただし、ここで云う勉強・学習とは、自らの興味に基づく能動的な知的活動のことであり、お仕着せの受験勉強のことではない。
最近私の興味を惹いた、熱力学に関する新聞記事を紹介しよう。この記事から、皆さんの興味がどのように展開するか楽しみだ。全文引用する。
(引用開始)
「跳ねて速度アップ 常識覆すボール」熱力学の根本に迫る
ぶつけた速度よりも速く跳ね返る“常識破り”のボールを作れる可能性があることを、中央大学の国仲寛人助教らが計算機シミュレーションで示した。ボールの持つ熱がボールの運動エネルギーに変わって速度を増す。熱力学の根本に迫る現象という。米物理学会誌に発表し、注目論文として取り上げられるなど話題になっている。
ゴルフボールも野球にボールも、ぶつけた速度よりも跳ね返ってくるときの速度の方が小さくなる。床で弾むスーパーボールも、跳ね上がる高さがだんだん小さくなる。
理想的な反発力を持つ物体ならぶつけた速度と跳ね返る速度が等しくなるが、それでも超えることはない、というのが高校の教科書にも書かれた常識だ。
跳ね返ると速度が落ちるのは、衝突の際に運動エネルギーの一部が熱に変わって逃げてしまうからだ。
国仲さんは、原子が七百個集まった直径約百万分の三ミリの小さなボールを想定。このボール同士が正面衝突する様子をコンピューターで繰り返し調べた。実際の分子に働くような引力も考慮した。
その結果、ボールを秒速十メートル前後でゆっくりぶつけたとき、反発の速度が増す現象が二十回に一回程度起きることが分った。速度は最大で一割程度増えた。
この不思議な現象が起きる主な理由として国仲さんは「ボールの中の個々の原子は熱によって振動している。二つのボールがゆっくり接するとき、原子がちょうど相手をはじき飛ばす方向に振動していれば反発のスピードが増す」と考える。
つまり、ボールの原子が持っている熱が、ボール全体の運動エネルギーに変わったということになる。熱力学第二法則では、外から手を加えずに熱が運動エネルギーなどの仕事に変わることを禁じている。熱から仕事が取り出せれば永久機関も実現できるからだ。
計算結果はこの法則を破るように見えるが「反発のスピードが増すのは衝突の5%。全体を平均すれば反発のスピードの方が低くなり熱力学第二法則に反しない」という。
共同研究者の早川尚男・京都大教授は「ナノサイズのボールをレーザー光で捕まえて衝突させれば、計算だけではなく実際に確かめられる可能性もある」としている。
(引用終了)
<東京新聞4/28/09>
熱力学第二法則を習ったことのある人ならば、誰でも興味を覚える記事だと思うが、いかがだろうか。
この現象は「ゆらぎ」の一種なのだろうか。シミュレーションということであれば、パラメターの「初期状態」をどのように設定したのか、という点が特に私の興味を惹く。また、「計算だけではなく実際に確かめられる」というけれど、その根拠と方法についても知りたいと思う。
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