先日書いた「3の構造」について考えを進めよう。まず「3の構造」の特徴を以下に整理する。
(イ)多数のなかでの頂点を示す
多くのものの中における頂点。先回の例では、「オリンピック・メダルの金・銀・銅」や「いろは」、「ABC」などがこれに当たる。
(ロ)安定性
三脚椅子の例のように、不安定さの無い状態を表す。多すぎず少なすぎないという特徴も、この「安定性」の内に含めて良いだろう。先回列記した例では、「上中下」や「三権分立」、「神話の三種の神器」、「三位一体」、「朝昼晩」、「大中小」など、多くがこれに該当すると思われる。
(ハ)発展性
何かと何かが作用しあって新しい何かが生まれる、という発展構造を示す。先回列記した例では、「弁証法のテーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼ」や「武道の守・破・離」、「第三の波」などがこれに該当するだろう。
以上、特徴の整理自体が「3の構造」になってしまったが、なるほど、多すぎず少なすぎない。そういえばこれまでも、「アフォーダンスについて」、「免疫について」、「脳について」など、この「3の構造」で整理してきた。
さて、これまでこのブログでは、「生産と消費論」、「公と私論」、「競争か協調か」、「モチベーションの分布」など、いくつかの双極、あるいは対立軸と、そのバランスの重要性についてみてきた。また、「里山ビジネス」、「エッジ・エフェクト」、「庭園について」などで、境界の重要性についても注目してきた。
ある双極や対称性が、運動によって融合・崩壊し、新しい何かが生まれるというダイナミズムは、“何かと何かが作用しあって新しい何かが生まれる”という意味で、「3の構造」における(ハ)の発展性そのものである。
以前「相転移と同期現象」の中で、
(引用開始)
「1+1=2」というのが線形的な、比例法則の基本的考え方だとすれば、「1+1=1」、もしくは「1+1=多数」というのが非線形的な考え方である。
(引用終了)
と書いたけれど、「1+1」が「別の1(もしくは多数)」になるという考えは、この運動の構図であり、「生産と消費論」などの双極・対立軸は、「エッジ・エフェクト」の境界性を通して、初めからこの「3の構造」を内包しているのであった。これからも「3の構造」とその周辺に注目していこう。
ところで、「3の構造」で引用させていただいた“3つに分けて人生がうまくいくイギリス人の習慣”の著者井形慶子さんに、掲示板を通じて連絡したところ、嬉しい以下のご返事をいただいた。
(引用開始)
茂木さま、
こんにちは。
「3つに分けて人生がうまくいく
イギリスの習慣」を紹介してくださって
ありがとうございます。
ブログを拝見して、非常に感心することが多く、
とても興味深くよませていただきました。
茂木さんが紹介されていたいくつかの著書にも
惹かれるものがあります。
今後の活躍を応援しています。
(引用終了)
<「井形慶子’s Room」掲示板(8/23/09)より>
私が井形さんの本を最初に読んだのは、“イギリスの家を1000万円で建てた!”(新潮OH文庫)である。その行動力に脱帽し、それ以来彼女の本の愛読者になった。井形さんの最新著書“英語のおかげ”(中経の文庫)は、どのようにしたら英語を実用的に使えるようになるかということについて、ご自分の経験を通して自伝的に書いておられる。これから英語を勉強しようという人にはとても参考になると思う。
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