“中小企業は進化する”中沢孝夫著(岩波書店)という、中小製造業についての本を読んだ。
(引用開始)
「植物のようにしっかりと根を張り、環境に適応して地域経済を支える中小企業の強さと柔軟性」
中小企業は植物である、一ヶ所に根を張り、周囲の環境が激変してもそれに適応すべくがんばる。中小企業は技術を鍛え、研究開発を怠らず、常に進化することでのみ生き残ることができる。福祉的な政策から発展の政策へと転換した中小企業政策を捉え直し、多様な存在の中小企業をポジティブな見通しに位置づける中小企業進化論。
(引用終了)
<本の帯とカバー裏の紹介文より>
著者は、福井や長野県の中小企業を訪ね、その実例を紹介しながら、中小企業と地域社会・地域経済との関わりを説明し、さらに海外展開、東アジアとの交流、中小企業の質と政策論の転換などについてもわかりやすく論じている。私も自動車関連の中小製造業さんと関わっているので参考になる。新聞の書評からも引用しよう。
(引用開始)
「“同じ”の時代から“違う”の時代へ」日本企業は進まねばならないと、私は十数年前から言ってきた。先端技術である液晶、プラズマの大画面テレビで、ソニーなど日本の超大企業が世界市場で苦戦して、巨額の赤字を続けている。それは、テレビはどこの国のどの企業がつくってもほぼ同じであり、大量生産の得意な韓国、台湾との価格競争がきわめて厳しいからだ。一方、工作機械は多種多様であり、非常に多くの企業があってそれぞれ得意な製品を持つ日本は、世界でも断然強く、二五年間も市場しシェアトップを続けている。
“同じ”ものを大量につくっている大企業とは異なり、中小企業はそれぞれに“違う”ものをつくっている。日本の製造業がこれから進むべき道に向いているのだ。
著者は、現場を訪ねて綿密な調査をする中小企業研究者であり、数多くの元気いっぱいの企業を紹介している。それを基に、中小企業の現在、将来をどう見るかの議論を展開しているが、その基調は、題のとおり“進化”であり、これからも強くあるべき日本の“ものつくり”を託すことができると分かる。(後略)
(引用終了)
<毎日新聞6/28/09森谷正規評>
このブログの初回「スモールビジネスの時代」のなかに、
(引用開始)
最近、品質や安全の問題が頻発し、高度成長時代を支えた大量生産・輸送・消費システムが軋みをみせている。大量生産を可能にしたのは、遠くから運ばれる安い原材料と大きな組織だが、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といった、安定成長時代の産業システムを牽引するのは、フレキシブルで、判断が早く、地域に密着したスモールビジネスなのではないだろうか。
(引用終了)
と書いたけれど、「フレキシブルで、判断が早く、地域に密着したスモールビジネス」の製造業版が、この本で語られる中小製造業の姿であろう。
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