「3」という数に興味がある。「3」は、弁証法のテーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼ、時間の過去・現在・未来、音楽のソナタ形式、武道の守・破・離、神話の三種の神器、数学の三角関数、その他、いろは、上中下、松竹梅、序破急、心技体、朝昼晩、ABC、大中小などなど、さまざまな場面に顔を出す。また「3」は、「コッホ曲線」と呼ばれるフラクタル図形の基本数でもある。「アフォーダンスについて」で述べた、ミーディアム・サブスタンス・サーフェスという世界構造も「3」である。フラクタルやアフォーダンスという非線形科学の根本に、「3」という数があるわけだ。これらをまとめて「3の構造」と命名したい。
「3の構造」に関連して、“3つに分けて人生がうまくいくイギリス人の習慣”井形慶子著(新潮文庫)から引用しよう。
(引用開始)
「数」は万物の根元であり、数字のひとつひとつに隠された真実がある」と説いたのはギリシャの数学者ピタゴラスです。彼の理論をもとに体系立てた数秘学には、3の持つ意味がこう記されていました。
「3には2つの対立するバラバラな働きから、新しい展開やパワーを生み出し、物事をさらに発展させる創造的な力がある」(中略)
2つの点からはただの直線しか生まれませんが、3つにすると三角形が出来上がり、面積が誕生します。「線が細い人」とたとえても「面が薄い人」とはいいません。しかも線を面に変えるだけで、イメージはたちまち安定します。たとえば椅子は二本脚では成り立ちませんが、三本にすると腰掛けても倒れない家具になるのです。
(引用終了)
<同書24−25ページ>
「3」は、「発展性」と同時に「安定性」を表す特別な構造である。次に、東京新聞「筆洗」(4/10/08)から引用しよう。
(引用開始)
例えば「話したいことが三つあります」と言われると、聞いてみようかという気になる。一つや二つでは何となく物足りない。四つや五つでは多すぎるし、全部覚えることが難しそうである。
オリンピックのメダルも金・銀・銅と三つあるので、一層盛り上がるのかもしれない。スポーツに限らず上位の「三」という数字は、多数の中で頂点を人々に感じさせる効果があるという(飯田朝子著『アイドルのウエストはなぜ58センチなのか』)。
(引用終了)
「3」は、多すぎず少なすぎず、さらに「多数の中で頂点を感じさせる」構造でもある。以前「ホームズとワトソン II」の中で、企業における資産と市場とのマッチングに関して、戦略の独創性が必要であると指摘し、
(引用開始)
独創性は、組織・商品・店舗・流通など合わせて少なくとも三つ以上欲しいところだ。
(引用終了)
と書いたのは、この「3の構造」を意識したものだった。
「3の構造」は、冒頭に挙げた以外にも、物質の固体・液体・気体状態、一流・二流・三流、三位一体、三権分立、第三の男、第三の推論、第三の波、第三の道、3点測法、左中右、外中内、じゃんけんのグー・チョキ・パー、第3のビールなど、まだまだ色々ある。これからも「3の構造」について様々な角度から考えていきたい。
この記事へのコメント
コメントを書く