夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


山の本屋

2009年07月07日 [ 書店の力 ]@sanmotegiをフォローする

 以前「社会の力」のなかで、

(引用開始)

 特に「社会」の及ぼす力は重要だ。「心と脳と社会の関係」でみたように、社会とは自分と他人とを心的相互作用で結ぶ集合である。それは言葉だけでなく、振る舞いや姿勢、顔の表情などの身体運動、拍手や発声、身体を育む食、身体を守る衣服や家、自然の風景、場としての学校や職場、街並みなど、「身体」に係る全てのものが含まれる。勿論身体を規制するところの慣習、制度としての政治や法律なども含まれる。これら社会の有り様全てが、日々われわれ日本人の脳神経回路の組織化に寄与しているのである。

(引用終了)

と書いたけれど、最近、最良な形でこの「社会の力」を発揮している山の小さな本屋さんのことを読んだ。「すごい本屋!」井原万見子著(朝日新聞出版社)である。朝日新聞の書評欄から全文引用してみよう。

(引用開始)

「小さな村のコミュニティーセンター」

 この本を読むと、とても元気が出る。一言でいって、和歌山県の山の中で、小さな本屋さんが生き生きと頑張っている話なのである。村全体でも人口が2200人、近隣の集落はわずか100人ほどにすぎない。そんな小さな村で書店の経営が成り立つのかと不思議に思える。閉めかかった店を継いだ著者も、最初はとても不安に思っていた。
 そこから素人店長の奮戦が始まる。それを支えたのは、何よりも、店を必要とする地域の人びとのニーズである。ニーズは本だけに限らない。周囲の小売店がどこも廃業してしまうと、この本屋さんではみそや日常雑貨までも扱う。近所のおばあさんの生命線であり、コミュニティーセンターでもある。
 書店が成り立つ基盤は、本が好きな地元の人たちであり、子どもも大事な読書人である。そこで著者がイベントを次々と企画するのがすごい。学校での選書会、児童書の読み聞かせの会、絵本の下絵・原画の展覧会、絵本の編集者の講演会、ついには作者のサイン会まで。
 そんな企画は都会にしかないと思うのは大間違いで、編集者や製作者たちも、著者の熱意にほだされてしまうらしい。著者がドキドキしながら手紙を出したり電話をしたりして、次第に人脈を広げていく様子も心温まる。小杉泰(京都大学教授)

(引用終了)

いかがだろう。以前「ハブ(Hub)の役割」で、

(引用開始)

 多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といった、安定成長時代の産業システムは、スモールワールド性がつくり出す「多様性」と「意外性」が発展の糧になる。だからハブの役割は、広く門戸を開き、公平性(次数相関「±0」)を心がけることで、数多くのリアルな「場」を作り出し、社会のスモールワールド性をより加速させることなのだ。

(引用終了)

と書いたけれど、インターネットを活用し、地域コミュニティーと都会との間を縦横に行き来しながら、自らの書店にリアルな「場」を次々と作り出しているこの「イハラ・ハートショップ」は、まさに「社会のハブ」としての役割を果たしている。

 書店というものは、社会に欠かすことの出来ない存在だ。ここでいう「書店」とは、「イハラ・ハートショップ」のような小さな本屋さんばかりではなく、都会の大きな書店、さらには出版業を含むところの、“書物という、人の思考道具である「言葉」を扱う生産活動”全般を指している。人は言葉で思考するから、そういう意味で、書店は社会の力の源泉である。書店は、「アートビジネス」とも隣接しながら、人の生産と消費活動を精神的に支える。書店はまた、社会における多様性と意外性を保証する「言論の自由」の守り手でもある。

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posted by 茂木賛 at 10:11 | Permalink | Comment(0) | 書店の力

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