「興味の横展開」において、ある意図や行為に関するモチベーションの分布を知ることで、自分の中に眠っている様々な可能性を追求して欲しい、と書いたけれど、同様の手法は、スポーツなどの趣味だけでなく、仕事にも活かすことが出来る。
「生産と消費論」で書いてきたように、仕事というのは、他人のため社会のために役立つ行い(生産活動)であるが、出来るならば、興味に関する「正規分布」のうち自分が度合いの強い2割に属している自分の得意分野でそれを行うのが一番良い。得意分野は一つとは限らない。複数の得意分野を活かしていくには、「個人事業主」として自立し、工夫を重ねて、得意分野を横につなげていくことが必要になってくる。
「シグモイド・カーブ」で指摘したように、どのような仕事であれ、ある程度長く続けないと本当に自分が好きなのかどうか分からない。だから仕事を始めてすぐに自立を考える必要は無いが、ある程度時間がたって自分の興味分野に確信が持てるようなってきたら、その人には「仕事の横展開」を図る資格があるといえるだろう。
「個人事業主」として独立を図るタイミングとしては、一つの仕事を始めてから10年くらい経ったときが一つのポイントだろう。勿論モチベーションの度合いやスキルの錬度にもよるが、一つの仕事を10年やればだいたいのことは分かる。次のポイントはそれからまた10年後くらいだろうか。
私の場合は、「理念(Mission)と目的(Objective)の重要性」で書いたように、エレクトロニクス関連の会社に30年近く勤めたあと独立した。初めの10年は経理や原価計算の仕事、その次の10年は経営企画やマーケティング、最後の10年は他社との提携やネットビジネスを経験した。そのあいだ13年間はアメリカに赴任していた。それぞれ10年ごとのタイミングで独立することを考えたけれど、最終的に独立しようと思ったのは、自分の興味分野が「読書や物を書くこと」だと確信が持てるようになったことと、インターネットの発展によって電子出版などの新しいビジネスが見えてきたことである。
会社におけるリーダーの役割の一つは如何に社員の「やる気」を引き出すかにあるのだが、社員の立場からすると、他人の決めた組織の枠内でずっと「やる気」を持ち続けるのは容易なことではない。特に「興味の横展開」によって自分の可能性を追求し始めた人にとってはそうだろう。
自分の興味分野に確信が持てるようになり、それを仕事に活かしたいと思う人は、「個人事業主」として独立し、自らの得意分野に沿った「スモールビジネス」を立ち上げて、社会への貢献を図っていただきたい。
以前「理性と感性」のなかで、趣味を仕事にするということは、必然的に趣味の中身の変化を伴うと書いたけれど、豊かな人生とは、趣味と仕事を上手く交差させながら、それぞれにおいて、最大限に「興味の横展開」を図っていくことなのかもしれない。
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