以前「ハブ(Hub)の役割」で紹介した「渋滞学」の著者西成活裕氏の最新本のなかに、
(引用開始)
これ(アリの行動)に関連して、企業や組織において「2対6対2の法則」といわれているものがある。これは、全体のうち2割の人はよく働き、6割はふつうに働き、そして残りの2割はあまり働かない、ということを表したものだ。そしてこのトップ2割の人が企業の利益の8割を稼ぎ、残りの8割の人は利益の2割しか貢献していない、という意味で、「8対2の法則」ともいわれる。しかしこの働かない集団が将来の生存のために大きな役割を果たす可能性があるのがアリの社会なのだ。働かない人を抱え込むのは短期的には無駄と考えられるが、長期間で見れば何か別の角度から大きな貢献をしてくれるかもしれない。
(引用終了)
<「無駄学」西成活裕著(新潮選書)39ページより。カッコ内は引用者による補足。>
という話がある。
これは私が組織で働いていたときの経験から云える事なのだが、いろいろな集団の「よく働く2割の人」だけを集めてきて、別の目的を与えて働いてもらうと、なぜか再び「全体のうち2割の人はよく働き、6割はふつうに働き、そして残りの2割はあまり働かない」という現象が起こる。
西成氏の論点は、一見無駄と思われる中にも将来役に立つものもあるから、無駄かどうか判断するにはまず目的を定めることが重要だということなのだが、私の経験則から云えるのは、目的を変えると再び無駄が生まれるということなのである。
この「よく働く、ふつうに働く、あまり働かない」人たちの分布を「モチベーションの分布」と呼ぼう。「2対6対2の法則」は、「全体のうち2割の人はよく働き、6割はふつうに働き、そして残りの2割はあまり働かない」ということだから、この分布は概ね釣鐘型の「正規分布」に従うと思われる。
釣鐘型の「正規分布」は、人の身長やみかんの大きさなど、自然界に広く見られる現象だ。モチベーションとは「やる気」である。人が興味を持つ対象はそもそも千差万別で、ある目的に対する「やる気」は、その人の興味の度合いに比例するだろうから、無作為にある目的を定めると、どうしても「全体のうち2割の人はよく働き、6割はふつうに働き、そして残りの2割はあまり働かない」という分布が出現してしまうのだろう。
ある目的集団では皆の足を引っ張っている人が、別の目的集団ではリーダーシップを発揮したり、会社でバリバリ働くやり手の男性が、家ではなにもしないグータラ亭主だったりするのは、概ねこの法則に従っているわけだ。
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